徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:阿部紘久著、『文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント』(日本実業出版社)

2017年12月04日 | 書評ー言語

この『文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント』(2017年6月発行)は分かりやすい実用書です。レイアウトがそれ自体で内容の構造を明確に視覚化する助けとなっており、報告書やプレゼンなどのレイアウトの模範と言えます。

まずは目次から。

はじめに

序章 書く力は、考える力そのものです

第1章 受け手発想で書く

第2章 文の基本形を確かめる

第3章 言葉を削れば、より多く伝わる

第4章 読むそばからスラスラ分かるように書く

第5章 文を分ければ、スムーズに伝わる

第6章 的確に書く

第7章 「てにをは」を使いこなす

第8章 読点は意味の切れ目に打つ

第9章 共感が得られるように書く

第10章 長文をすっきり構成する

第11章 視覚的効果と表記に気を配る

第12章 話し言葉の影響を避ける

おわりに

どの章も最初に学習ポイントが提示され、その後に悪い例とその改善案が続くように構成されています。その悪文の例を見て、私は自分の文章力に少し自信を持つことができました。「そこまでひどい文は書いてない」という安心感のようなささやかな自信ですけど。

文章を構成する原則は、「いかに自分の思考を読み手に分かりやすく表現するか」というどの言語にも基本的に共通することなので、私がこれまで意識してきたドイツ語の文章構成原則と概ね一致しています。すなわち、読み手が誰かを意識する、簡潔に書く、修飾をつけすぎない、重複表現を避ける、視覚的効果を活かすなどのポイントです。この本でこれらの点を日本語の例でおさらいできました。

日本語独特のポイントとしては、読点の打ち方や話し言葉の影響が挙げられます。

最近受けた翻訳実務検定試験の和訳の課題で、私の翻訳文をチェックしてくれた方と読点の打ち方で少々見解の違いがあり、「実際のところどうなんだろう?」と疑問に思っていたところだったので、本書の第8章はまさに「そう、それが知りたかったの!」と拍手したくなる内容でした。読点が必要なところが12項目きちんと明文化されて分かりやすく解説されています。また、中黒「・」の使い方も説明されていて、もやもやとしていた霧が晴れるような思いがしました。

話し言葉の影響に関しては、海外在住でタイムリーな日本語にあまり影響を受けない私にはさほど問題になることはないのですが、気を付けなければいけないとすれば、「逃げ腰表現」ですね。「みたい」「かな」「感じ」「とか」「たり」「結構」「的には」といった表現のことですが、はい、私的には結構こういう表現使ってたりしてるかな、とかいう感じですね(笑)

もっともこのような逃げ腰表現を書いているのは、もっぱら自分のブログやSNSでのやり取り上のことなので、人間関係を円滑にするための一手段だと思いますし、また、ブログやSNSは言葉を「書く」ところではありますが、厳密には「書き言葉空間」とは言えないので、話し言葉で書くのがむしろ適切だろうかと思います。

「」を活用するという指摘も、目から鱗が落ちるような示唆に富んだものでした。

ここ何日か語彙力関連の本を連続して読みましたが、この文章力の本が一番ためになりました。

語彙はつまるところひとつひとつ覚えるしかないという壁がありますが、文章力は原則をおさえればいいというある種のシンプルさがあるので、両者を単純に比べることはそもそもできません。けれど、それを承知の上であえて言えば、本書が先に読んだ語彙力関連の本4冊よりも読み手視点が反映されているので、教育学的観点から見て特に優れていると思います。

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書評:語彙力向上研究会著、『できる人の語彙力が身につく本』&『ビジネスですぐ使える語彙力が身につく本』

書評:話題の達人倶楽部編『大人の語彙力が面白いほど身につく本 レベル1&2』(青春出版社)

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書評:話題の達人倶楽部編『大人の語彙力が面白いほど身につく本 レベル1&2』(青春出版社)

2017年12月04日 | 書評ー言語

『大人の語彙力が面白いほど身につく本』の1と2も今年出版されたばかりの新しい本です。

大人の語彙力が面白いほど身につく本』レベル1(2017年2月発行)の目次は以下の通りです。

Step 1 言葉を正確につかむのが、語彙力の基本です

Step 2 その「書き間違い」、語彙力を疑われます

Step 3 語彙力アップの鍵は「言い間違い」をしないことです

Step 4 あらたまった言葉を使えれば、大人として一人前です

Step 5 カタカナ語を「武器」にすると語彙力は面白いほど上がります

Step 6 言葉の使い方が魅力的な人は上手に「たとえ」を使っています

 

情報量が多く勉強にはなりますが、索引がないので辞書的な使い方はできず、また語彙の分類も言葉の意味や使用状況によって分類されているわけではないので、いざという時に特定の言葉を確認するのには不向きです。

また「面白いほど身につく」というタイトルに相応しい教育学的な工夫が凝らされているわけではなくただの羅列なので、「身につく」ほうに期待していると失望せざるを得ません。身につけるには、この本を何度も読むか自分なりのノートなりカードなりを作成して学習する必要があります。もちろん一度見ただけで何でも記憶できる方は別ですが。

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大人の語彙力が面白いほど身につく本』レベル2(2017年9月発行)の目次は以下の通りです。

Step 1 たった一つの読み間違いであなたの日本語が台無しです

Step 2 大人になると、言い間違えても誰も指摘してくれません

Step 3 これを言うだけで、「言葉を知らない人」と思われます

Step 4 意味をおさえないと痛い目にあう日本語です

Step 5 人の品性は書き間違いひとつにあらわれます

Step 6 書き間違いひとつで、あなたの教養がはかられています

Step 7 カタカナ語を使うならこのポイントは外せません

Step 8 大人社会では、言葉を武器にするしかありません

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レベル2も1と同じことが言えます。索引がないので辞書的な使い方はできません。

私にとって参考になったのは、最近変更された外来語や外国名・地名表記法やひらがなで書いた方がいい言葉、そしてレベル1・Step 6の比喩のつくり方やレベル2・Step 8の中の【ご】のつく上級敬語などです。

掲載内容の中でそれは一般的な「大人の語彙力」には属さないのではないかと疑問に思ったのが、アナウンサー泣かせの言葉やプロのライターなら間違えてはいけない書き方でしょうか。知っていれば「通」なのかもしれませんけど、他の重要な語彙や表現と並べて記載することではないように思います。本の構成が基本的に語彙の「羅列」なので余計に「情報のごった煮」のような印象を受けます。

国語に関する世論調査でどの言葉がどれほどの割合の人に本来の意味ではない解釈がされているかを取り上げた章(レベル1、38-42)は、非常に興味深く読みました。言葉というものは時の流れと共にその意味や形状が変わったり他の言葉に取って代わられたりするものですが、まさにその変化の最中の言葉が捉えられるというのは貴重な情報だと思います。変化が完了していない言葉に関しては、本来の意味と現在優勢になりつつある意味の両方を知っていると、コミュニケーションの際に誤解を少なくする一助となると思います。
因みに私はそこに挙げられていた言葉の中で、新しい解釈をする人の割合が50%以上あった言葉のほとんどを、新解釈の方で理解・使用していました。これはつまり、意味の変遷が、ここ20年くらいのことではなく、もっと以前から始まっていたということなのでしょうね。



書評:語彙力向上研究会著、『できる人の語彙力が身につく本』&『ビジネスですぐ使える語彙力が身につく本』

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