3週間ちょっとぶりに恩田ワールドに戻ってきました。『私の家では何も起こらない』(角川文庫)は2016年11月発行。丘の上に立つ幽霊屋敷と噂される一軒家にまつわるエピソードをまとめた本です。
割と残忍で凄惨な事件が起こっているにもかかわらず、当事者の視線で語られることで、なぜか凄惨な印象が薄れてしまうという不思議さ。
エピソードによっては一体どんな視点から事件が語られているのかが最後になってようやく判明し、軽い驚愕を覚えるのと同時に、本来ならあり得ない「語り手」に納得できない不可思議さを感じます。
幽霊を当たり前のように受け入れ、生きた人間の方が怖いという考え方は理解可能ではありますが、「何も起こらない」というのは皮肉でしかないでしょう。
不思議なスリルを感じられる一冊です。