徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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スペイン・アンダルシア旅行記 II(4):アルメリア

2018年06月11日 | 旅行

グラナダの後にシエラネヴァダ山脈をドライブし、今回のアンダルシア旅行3番目の宿泊地アルメリア(Almería)に行きました。

アルメリア市について

アルメリアはコルドバを首都とする後ウマイヤ朝の重要な港で、貿易及び織物工業の中心地として栄えた街です。1489年にキリスト教徒に征服されて以降はおよそ300年間廃れる一方でしたが、19~20世紀に鉱山業の勃興及び港の新築を機に復興します。しかしスペイン内戦によってその繁栄も急速に収束してしまいます。現在は良質な海岸のあるリゾート地としてそれなりに栄えているようです。

アリメリア市内の見どころは1000年の歴史を誇るスペイン最大のイスラム建築の要塞であるアルカサーバ(Alcazaba de Almería、面積25000平方メートル以上、城壁の長さ430メートル)で、現在も考古学的発掘調査が行われています。発掘区域は立ち入り禁止ですが、それ以外は入場料なしで入ることができます。ただし月曜日は閉まっています。

もう一つの見所はアルメリア大聖堂です。北アフリカから来るベルベル人の海賊の襲撃に備えて要塞化した教会で、その外観の無骨さは要塞そのものですが、1522年の地震の後に造られたルネサンス様式のファサード(上の写真)や繊細な彫刻が施された聖歌隊席、ゴシック様式の身廊やアプスに設置された大理石の祭壇の他、優美な噴水のある中庭を囲む柱廊など、結構なお宝が見られます。また、ゴシック様式では通常身廊の天井が側廊の天井より高くなっていますが、大砲による襲撃に備えて構造的安定を実現するためにこの教会ではどちらの天井もほぼ同じ高さになっているのが興味深い点です。

港と平行に走る車道に沿って作られた公園はなかなか素敵です。

ホテル

私たちが泊まったホテルは Hotel Catedral で、その名の通り大聖堂(Catedral)に隣接しています。予約したのはスタンダードルームだったのですが、手違いで空きがなく、追加料金なしでスペリオールルームにアップグレードしてくれました。5階のベランダ付きの部屋で、ベランダから屋上のミニプールに行けるようになっていました。

  

ベランダから見下ろせる Plaza de la catedral ↓

朝食ビュッフェは四つ星ホテルに相応しい豪華さで、特にフルーツの豊富さがうれしかったです。

   

スクランブルエッグや目玉焼き、ベーコンやソーセージなどはビュッフェに作り置きされておらず、注文すると作ってもらえるようになっていました。温かい食べ物はその方がおいしいですよね。

このホテルの難点は、駐車場が若干遠いことと、バスルームにシャワーしかなく、全体的に設備が古くて使いづらいことです。でも、アメニティは豊富に用意されていました。

お値段は二人2泊朝食付きで178.20€。

 

観光

アルメリアに到着したのが結構遅い時間だったので、特に何かを見に行くことはしませんでしたが、目の前の教会広場で堅信礼と思われる儀式が行われていたのでそれをしばらく眺めてました。素人撮影ですが、ビデオはこちら

 

この儀式を見終わった後に夕食に出かけました。レストランが並ぶ界隈は非常に範囲が狭く、選択肢が大してなかったので、取り敢えず開いていてそこそこ賑わっているレストランに入ってみました。「Taberna Nuestra Tierra」というレストランで、飲み物一つ頼むと、小さなタパスをただで選べるようになっていて、それ以外の食べ物にはきちんと値段がついています。システムを理解するまでに少々時間がかかりましたが、アルメリアでは飲み物&ミニタパスで一つの値段というのが割とあるようです。

ポテトチップスとパンが載ったお皿がミニタパス。お肉のお皿は普通の有料タパス。↓

 

ズッキーニのフライ(ミニタパス)↓

   

焼きタコ

デザート(フランとチーズケーキ)

 

脂っこい料理とデザートでかなりお腹いっぱいになりました。支払はチップも含めて33€。

Catedral

6月4日は月曜日でアルカサーバは閉まっていたので、まずは目の前の教会を見学しました。見学者用入口は教会広場から建物に沿って左に曲がり、その壁面の終わりに近い所です。入場料はオーディオガイド込みで5€でした。

ホテルの部屋のベランダから撮影した大聖堂。要塞にしか見えない ↓

 

中に入って、階段を上ると修道院と柱廊に囲まれた中庭に出ます。中の噴水はイスラム建築の名残りですね。

 

アピスに設置された背の高い祭壇とその両側にある説教台 ↓

 

パイプオルガンは聖歌隊席を挟んで両側にあります ↓

聖歌隊席の裏側にもう一つ3色の大理石が使われている祭壇があります。

別室の礼拝堂の祭壇 ↓

絵画もたくさん飾られています。

身廊と交差廊が交わる交差部

側廊にはたくさんチャペルが設置されています。そのうちの一つ ↓

Sala Capitular

中の博物館に展示されていた楽譜(?) ↓

 

 教会見学の後はアルメリア県内のカボ・デ・ガータ自然公園へ。

 

アルカサーバ

アルカサーバは6月5日(火)に見学しました。 緑の部分が多いイスラム様式の庭の方から徐々に緩い勾配を登っていくと元王家の居住地区(まだ大部分が発掘中)があり、そこからさらに上ると砲台塔などがあるキリスト教徒によって建築された部分に至ります。

     

王家居住区域にある長方形の池にはなぜか金魚がいっぱい ↓

 

下の庭園と王家居住区域を分ける城壁にある塔の中 ↓

キリスト教徒による建築部分。イスラム的要素がほとんどない ↓

  

ここから引き返す途中の段差でよろけて、バランスを取り戻そうとして余計にふらついて結局こけてしまいました。転んだ時にごつごつした表面の石畳に右手をついたので擦りむいたところが地味に痛みましたが、後から痛みがひどくなったのはくじいた右足でした(´;ω;`)

午後1時ごろにアルメリア市を出て、次の目的地アルムニエーカルへ向かいました。


スペイン・アンダルシア旅行記(1)

スペイン・アンダルシア旅行記(2):セビリア

スペイン・アンダルシア旅行記(3):モンテフリオ(グラナダ県)

スペイン・アンダルシア旅行記(4):グラナダ

スペイン・アンダルシア旅行記(5):グアディックス(グラナダ県)

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スペイン・アンダルシア旅行記 II(2):グラナダ~アルハンブラ宮殿

スペイン・アンダルシア旅行記 II(3):シエラネヴァダ山脈

スペイン・アンダルシア旅行記 II(5):カボ・デ・ガータ(アルメリア県)


スペイン・アンダルシア旅行記 II(5):カボ・デ・ガータ(アルメリア県)

2018年06月11日 | 旅行

カボ・デ・ガータはアルメリア県東南部にある自然公園です。地図で見ると、イベリア半島の右下の角に当たります。この辺りはスペインでも最も乾燥している地域なんだそうです。

私たちが最初に目指したのは Mirador Las Salinas という本来は塩田なのですが、水鳥の憩いの場になっているところが見渡せる場所でした。

バードウオッチング用の小屋 ↓

フラミンゴの群れ ↓

    

ラス・サリナスに生息する動物たちの解説 ↓ 全部スペイン語なので、分かるのは絵だけですが(笑)

そこから海岸沿いのAL-3115をドライブして、灯台のところまで行きました。火山岩が波に削られて見事なリアス式海岸を形成しているなかなか風光明媚な眺めです。

途中で下りて灯台を撮影 ↓

灯台に到着してから撮影 ↓

 

この岩がモアイのように見えるのは私だけ?

灯台を見た後はラス・サリナスに戻って最初に見つけた開いているレストラン(El Naranjero)で遅い昼食を取りました。シーズンオフで開いているレストランが少ないと色々不便ですね。日替わりメニューを頼んで、チップ込み26€で済んだのはいいのですが、お味の方はなんというか、いまいちでした。私の頼んだサラダやダンナの頼んだ煮込みスープはOKでしたが、メインの魚のフライ盛り合わせの中には明らかに「まずい」と感じて食べられないものがあり、お肉の方もいまいち(ダンナの感想)でした。トリップアドバイザーの口コミが散々なのが理解できます(笑)

   

このいまいちなごはんにめげずにシエラ・デ・カボ・デ・ガータ山脈を越えてサンホセという海水浴場までドライブしました。

「Mirador」の標識を見るとつい行きたくなってしまう癖がついてしまい、狭いくねくねした道を運転する羽目になったダンナが文句を言っておりました(笑)プラットフォームは真新しい感じで、作ったばかりのようでした。

 

 

空いているの海水浴場 Playa de San Jose

 

ここで肌寒くなるまで(18時半くらい)ゴロゴロしてました。 ダンナはちょっとだけ海水に入ってましたが。浅瀬の範囲が広く、30mくらい進んでも腰くらいの水深にしかならないところです。風が強くなると細かい砂がバチバチと体に当たって結構痛かったです(´;ω;`)

サンホセの海水浴場はさほど長くなく、街中も山の斜面に張り付いているような狭くるしい区域が多いので、結構リゾート地化されてますが、そんなに魅力的とは言い難いと思いました。地図で見る限りでは、サンホセの南方8㎞くらいのところにある Playa de los Genoveses の砂浜の方が長いので、そちらの方がよかったかもしれません。

この後アルメリア市に戻って食べた晩ごはんはちょっと失敗でした。宿泊中のホテルから近いシーフードレストラン「Entremares Cervecerías」で、ここもやはり飲み物を頼めばただでミニタパスを1皿選べるようになっていましたが、店員がやたらと量が多く高いものを勧めるので、まだ片言しか話せないダンナが根負けして、貝のミニタパスがフルサイズに化けてしまいました。

  

でもこのナスのフライ、ハチミツソースかけは美味しかったです。やはり量は多すぎた感がありましたが… ↓

教訓:店員のお勧めに根負けしてはいけない(笑)


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書評:有川浩著、『明日の子供たち』(幻冬舎文庫)

2018年06月11日 | 書評ー小説:作者ア行

『明日の子供たち』は児童養護施設をテーマにしたお話です。実際に児童養護施設に入ってた当時高校生の女の子が著者に、施設のことをより多くの人に正しく知ってもらいたいので、施設をテーマにした小説を書いて欲しいと手紙を書いたことがきっかけで、著者が取材して作品化したとのことです。文庫のあとがきはこのリクエストをした当事者の方が書いています。

元ソフトウエア関係の営業職だった三田村慎平が児童養護施設に転職するところから話が始まります。彼の施設の子どもたちに対する勝手な思い込みが指導担当の先輩や施設の子供たち、特にしっかりした高校生の谷村奏子に初っ端から打ち砕かれ、少しずつ施設の在り方と子どもたちに対する理解を深めて行きます。本編は5章ですが、章と章の間に子どもたち目線及び他の慎平の同僚たちの目線で書かれた番外編が挿入されています。

基本的に慎平目線で書かれていますが、目線は必ずしも固定されておらず、施設に入所している当事者と施設関係者たちのそれぞれの思いや人生を踏まえた上で、互いにぶつかり、悩み、迷い、歩み寄り、関係を築き上げていく群像劇のような印象を受けます。繊細な気持ちの機微がやさしい視線で描写されており、読者をぐいぐいとカナちゃんや慎平ちゃんや和泉ちゃんや猪俣さんなどの世界へ引っ張り込んでいきます。解説込みで522ページは文庫にしては分厚いですが、読み出したら止まらず、一気読みしました。

私も児童福祉問題に関してはくわしくはないので、この小説を通していろいろと勉強させていただきました。児童福祉は社会の投資であり、「負担」ではないというのは私からすれば当たり前の考え方ですが、「施設の子どもたちはいずれ大人になる【未来の票田】」という見方は目から鱗が落ちるほど斬新に感じました。考えてみればそれも道理なのですが、その道理が児童福祉をもっと重視するように政治家に訴える際にとっさに出て来るかといえば、決してそうではない視点だと思います。


書評:有川浩著、『レインツリーの国 World of Delight』(角川文庫)

書評:有川浩著、『ストーリー・セラー』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、自衛隊3部作『塩の街』、『空の中』、『海の底』(角川文庫)

書評:有川浩著、『クジラの彼』(角川文庫)

書評:有川浩著、『植物図鑑』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『ラブコメ今昔』(角川文庫)

書評:有川浩著、『県庁おもてなし課』(角川文庫)

書評:有川浩著、『空飛ぶ広報室』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『阪急電車』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『三匹のおっさん』(文春文庫)&『三匹のおっさん ふたたび』(講談社文庫)

書評:有川浩著、『ヒア・カムズ・ザ・サン』(新潮文庫)

書評:有川浩著、『シアター!』&『シアター!2』(メディアワークス文庫)

書評:有川浩著、『キケン』(新潮文庫)

書評:有川浩著、『フリーター、家を買う』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『旅猫リポート』(講談社文庫)

書評:有川浩著、『キャロリング』(幻冬舎文庫)