徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。3』(ビーズログ文庫)

2020年10月29日 | 書評ー小説:作者ア行


『十三歳の誕生日、皇后になりました。』の第3弾が出ていたので、『茉莉花官吏伝 8 三司の奴は詩をうたう 』と一緒に購入し、あっという間に一気読みしてしまいました。
ストーリーの時系列としては、『茉莉花官吏伝』の4巻で茉莉花が赤奏国に派遣される少し前から内乱を無欠で終了したのちに皇后莉杏が皇帝代理としてお礼を言いに白楼国へ行って帰国するまでに当たり、莉杏視点で出来事が描かれています。
13歳という低年齢ながら皇后としての自覚を持ち、自分に何ができるのかを常に考え続ける姿勢が大人びていて感心する一方で、皇帝・暁月に対する純な恋心が少女らしくて微笑ましい感じです。
茉莉花官吏伝との関わりがある部分はこの巻で終了したので、次からは赤奏国内の独自展開ということになるのでしょうか。茉莉花官吏伝のスピンオフにとどまらない、莉杏の物語に発展していくのか否か、まあ楽しみにしておきましょう。


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書評:デイヴィッド・J・リンデン著、夏目大訳『脳はいいかげんにできている』(河出文庫)

2020年10月29日 | 書評ーその他



神経科学者、ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授の著作『脳はいいかげんにできている』は、メンタリストDaiGoの動画のどれかで参考文献として挙げられていました。もうどの動画だったのかはたくさん見すぎて分からなくなってしまったのですが(;^_^A

目次
プロローグ 「その場しのぎ」の脳が人間らしさを生んだ
第1章 脳の設計は欠陥だらけ?
第2章 非効率な旧式の部品で作られた脳
第3章 脳を創る
第4章 感覚と感情
第5章 記憶と学習
第6章 愛とセックス
第7章 睡眠と夢
第8章 脳と宗教
第9章 脳に知的な設計者はいない
エピローグ 「中間部分」の欠落

内容的に非常に興味深いのですが、やはりなんとか受容体とか、脳の部位の名称とかが難しく感じますね。
本書の重要な知見は、人間の脳は精巧な機械とは違い、カエルなどのような口頭でない動物と同じ原理で働く部分(脳幹や小脳など)の上に場当たり的に建て増しを重ねた結果の産物であるということですね。
脳科学の発達により、様々な刺激によって脳内に何が起こるのか分子レベルで説明できるようになってきているものの、「まばたき」の条件付けのような簡単な現象を除けば、分子レベルで起きていることと感情の発生や記憶などの結果の間の処理がどうされているのかという「中間部分」はまだまだ謎のままです。つまり、何かの行動や情動などに関して、脳のどの部分が関与しているか場所の特定や分子レベルの動きは突き止められても、なぜその分子レベルの動きが行動・情動・記憶などの結果をもたらすことになるのかまでは解明できないということですね。
リンデン氏は、キリスト教原理主義のインテリジェントデザイン論者に対してかなり思うところがあるようで、インテリジェントデザイン論がいかに間違っているかという反論にかなりページ数を割いています。もしかしたら、この反論をするためだけにこの本を書いたのではないかと思えるくらい、「知性を持つ設計者であれば、このような場当たり的な脳を創造しない」ということを示す事例を多く取り上げています。
きっちりと設計されていないということは、同時に脳に可塑性があるということを意味し、それ故に環境適合や進化のポテンシャルもあるということです。
紹介されている多くの具体例がとても興味深いです。
特に、左脳の物語作成機能が面白いですね。左脳が刺激や記憶のつじつまを合わせるために話を勝手にでっち上げるんだそうです。でも、本人(前向性健忘患者や分離脳患者など)はそれが事実だと思っているのだとか。
本書には書いてありませんでしたが、人が直感的に出した結論に、すでに結論が出てるという自覚がなくいろいろ調べて、その結論を補強・正当化する証拠ばかりを集めてしまい、それに反するような情報は無意識に切り捨ててしまうという心理バイアスもこの左脳の物語作成機能が関わっているのではないかと思いました。自分の直感に合うようにストーリーをでっちあげてることに他ならないですから。そのためなら自分の記憶も往々にして改竄してしまいますね。ネガティブなことばかり思い出して並べ立て、ポジティブなことは忘れたまま見ないようにして「私って不幸」という自己憐憫ストーリーを作り上げるとか。
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