徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:池井戸潤著、『半沢直樹 アルルカンと道化師』(講談社)

2022年11月24日 | 書評ー小説:作者ア行

『半沢直樹 アルルカンと道化師』は『俺たちバブル入行組』を始めとする半沢直樹シリーズの最新刊ですが、時系列は第一作と同じころの2001年。
半沢直樹は東京中央銀行の大阪西支店融資課長をしています。
第一作では、事件解決後、半沢に本店営業第二部次長の辞令がでていますので、このアルルカンのエピソードはそれよりも前のことになるはずなのですが、銀行内の確執は第一作の事件での対立を前提にしているので、内容的に今一つ整合性が取れません。

ストーリーは、大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収するという話を大阪営業本部が半沢のいる大阪西支店に持ち込むことから始まります。最初はジャッカルの名前も伏せられており、仙波工藝社の三代目社長も売る気は全然ないので秘密保持契約書を交わすまでもなく営業担当者を追い返します。
ところが、仙波工藝社が企画していたプロジェクトが予定外に中止せざるを得なくなってしまい、当て込んでいた収入がなくなったので運転資金を借りる必要が出て来ます。その融資の稟議は大阪営業本部の横やりが入って何かと難癖をつけられ、買収を受け入れるか融資をあきらめて倒産するかの二択を迫られます。
顧客に真剣に向き合っている半沢はこの強引な買収の進め方に腹を立て、仙波工藝社に担保となるようなものはないか調査を始めます。その過程で、強引な買収工作の裏にある秘密に辿り着きます。
「アルルカンと道化師」というのは有名な絵のタイトルで、仙波工藝社の社長室にもそのリトグラフが飾られており、その作者と作品を巡る謎が仙波工藝社買収工作と複雑に絡んでいます。

半沢は行内の敵によって、あわや更迭の危機に見舞われますが、敵の根回しの甘さもあって、顧客のためにも銀行のためにもなる解決策で大きく逆転することになります。
ストーリーのパターンから言うと、『俺たちバブル入行組』とほぼ同じです。痛快な「倍返し」も登場します。その意味では「半沢直樹の原点、再び!」という印象です。

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