宮田登著、『民俗学』(2019)は、民俗学とは何か、日本における民俗学の成り立ちから現在に至るまでの研究の発展や変遷、民俗学的に重要な「常民(性)」「ハレ」「ケ」「ケガレ」などの概念の説明など、非常に示唆に富んだ入門書です。
装丁や構成が現代的な意味で分かりやすくなっているわけではないので、その辺りは「学術文庫」であるところを考慮して大目に見る必要があるかと思います。
つまり、手っ取り早く読める本ではありません。
目次
まえがき
1 民俗学の成立と発達
2 日本民俗学の先達たち
3 常民と常民性
4 ハレとケとゲガレ
5 ムラとイエ
6 稲作と畑作
7 山民と海民
8 女性と子供
9 老人の文化
10 交際と贈答
11 盆と正月
12 カミとヒト
13 妖怪と幽霊
14 仏教と民俗
15 都市の民俗
先日一気読みした『準教授・高槻彰良の推察』シリーズの高槻淳教授の専門分野は、上の民俗学の分野の13と15にあたるのだな、と一人納得しながら読みました。
日本の民俗学がもはや農村、特に稲作文化ばかりを追わず、広く人々の営みと大小の「伝承」「伝統」に目を向けるようになったのはいいことだと思います。
やはり古いもの(失われつつあるもの)ばかりに囚われるのではなく、いかなる人の集団にも<民俗>が生まれることに着目するのは、現実に即しています。
私は古いものも好きですが、なぜかどこからともなく生まれて語り継がれる都市伝説の類も好きです。
そういったものが類型化できるのであれば実に興味深いと思います。