今日はクリスマスイヴです。ドイツ語ではHeiligabend(ハイリッヒ・アーベント、聖夜)と言います。
私が初めてドイツに来た年、クリスマスには衝撃を受けたものでした。なぜなら、クリスマスイヴの14時からお店が全て閉まり、バスや電車まで午後の早い時間に終わってしまったからです。長距離電車はその限りではありませんが、とにかく、その寸前までのクリスマス買い物客の賑わいというものがあっという間に静寂に変わってしまったのでした。私はその当時ボン郊外の学生寮に住んでいて、街中からバスで20分弱乗らなければいけなかったのですが、買い物した後にちょっとぼーっとしていたら、帰宅する手段がタクシーしかなくなっていたという悲惨な目に合ったわけです。
ドイツは12月25,26日が祭日です。それぞれ、Der erste Weihnachtstag(デァ・エァステ・ヴァイナハツターク、第一クリスマス休日)、Der zweite Weihnachtstag(デァ・ツヴァイテ・ヴァイナハツターク、第二クリスマス休日)といいます。開いているお店は通常ありません。つまり、24日の14時までにクリスマス休日分の食糧を買い込んでおかないといけないわけです。今年はクリスマス休日明けの27日が日曜なので、1日分余計に食糧備蓄が必要です。慣れればどうということはありませんが、日本の年中無休24時間営業のコンビニがあることに慣れている人には非常に不便な生活と言えるでしょう。それでも閉店法緩和のおかげで土曜日でもスーパーが22時まで開いている所が増え、昔よりは融通が利くようになりました。
さてドイツのクリスマスですが、ドイツ人はクリスマスを家族とともにどちらかと言うと静かに過ごします。Besinnlich(ベジンリッヒ、瞑想的な)というのがクリスマスの過ごし方のキーワードです。敬虔なクリスチャンであれば、24日のKindermetteというミサに参加し、その後先祖の墓参りをします。お墓に小さなクリスマスツリーを飾り、ろうそくを供えます。ろうそくだけ供える場合も多いです。
家庭によって過ごし方は様々ですが、夕方クリスマスソング(Weihnachtslieder、ヴァイナハツリーダー)を歌ったり、クリスマスの物語などを語ったあとに、子どもにとって一番楽しみなクリスマスプレゼントが渡されます。プレゼントは前以てクリスマスツリーの下に宛名付きで置かれており、歌を歌って人心地着いたら「プレゼントがありますよ」と宣言され、各自クリスマスツリーのところに行って自分宛てのプレゼントがあるかどうか確認します。プレゼントはその場で開けるのが原則です。プレゼントの後歓談し、ディナーとなります。
クリスマスディナーに七面鳥、というのはドイツでは一般的ではありません。どちらかと言うとガチョウがポピュラーです。
私の夫の実家ではクリスマスイヴはエスカルゴとフォンデューと決まっていました。義父がフランス生まれだった為、かなりフランス風な家庭でした。
しかし本来は12月24日はまだ断食日になっていたため、肉食は厳禁で、魚料理(クリスマスの鯉料理などが知られています)が中心でした。25日のクリスマスミサの後で漸く肉が解禁となり、ソーセージやポテトサラダなどが食卓に上ったそうですが、今日ではクリスマスとキリスト教の乖離が激しく、そのような食事の規定はよほど敬虔なクリスチャン家庭でない限り残っていません。大抵の「今時普通の」クリスチャンはミサにも行かず、クリスマスっぽい音楽を聴き、プレゼント交換をし、普段より豪華な食事をします。
25・26日は親戚同士やご近所・友人同士が訪問し合い、クッキーやシュトレンなどクリスマスに典型的なスイーツを分け合ったり、またはディナーを共にします。日本でいうところの正月三が日のようなものです。年に一度とはいえ、この親戚一同とのおつきあいを煩わしく思う人が少なくないのはドイツも同じです。
シュトレン(チェリー入り)
クリスマスの起源は、ご存知の方も多いでしょうが、キリスト教とは本来一切関係ありません。イエス・キリストの誕生日でもありません。もともとはローマ帝国において冬至を迎え、春の到来を祝うお祭りだったと言います。イエス・キリストは秋に生まれたらしいのですが、その復活の神秘に重ねて、冬至祭りの日である12月25日がその誕生日に相応しいと考えられたようです。文献で12月25日に祝うクリスマスの初出は紀元後325年です。古い信仰が新しい宗教に内包されつつ生き延びていく良い例と言えます。人々の信仰はそう簡単に180度転換できるものではないということなのでしょう。
皆様、素敵なクリスマスをお過ごしくださいませ。