買いだめしてあったエラリイ・クイーンの作品は1年半前にすべて完読したと思っていたのですが、この『悪の起源』1冊だけ見落としていたようです。
ハリウッドを舞台としたこの作品は、宝石商のヒルの玄関先に犬の死体が送りつけられ、同封の脅迫状によってもともと心臓の弱かったリアンダー・ヒルは死亡することから物語が始まります。そして共同経営者のロージャー・プライアムにも意味不明の脅迫が続き、養父の死の真相を突きとめようとして娘のローレル・ヒルがちょうどハリウッドに来ていた犯罪研究家エラリイ・クイーンに相談を持ち掛けます。
最初は雲をつかむような話で、証拠となる脅迫状が残っていないこともあってエラリイは調査を断るのですが、ロージャー・プライアムの妻デリアからも依頼があり、後にデリアの息子クロウ・マクワガンも調査依頼をしに来たため、結局調査に乗り出します。キーツ警部補とともにリアンダー・ヒルとロージャー・プライアムの過去や「警告」の物品の出所調査をします。
ロージャー・プライアムは「自分の問題は自分で形をつける」と言ってエラリイたちを歓迎せず、彼らの質問にも一切答えようとしないので捜査は難航します。
プライアムの妻デリアはエラリイを誘惑しているとも取れる行動をし、エラリイを困らせる一方、エラリイがなかなか動かないことにしびれを切らしたローレルとクロウも独自の調査を始めるなど、どちらかというと無駄なエピソードが混じっているような印象を受けます。
「警告」を解くカギは本書のタイトルの元となっているダーウィンの『種の起源』にあるのですが、かなり持って回ったトリックですね。
最後の謎解き・真犯人特定段階でもう一回転し、少々凝りすぎのきらいがあります。
ストーリー全体としてはわりと面白いのですが、訳文が魅力的とは言い難いので、部分的に読みにくくて退屈に感じるのが玉に瑕と言えます。
原文もおそらく持って回った表現なのでしょうけど、もうちょっとましな日本語に訳せなかったのかと思わずにはいられませんでした。
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