ポプラ文庫
2019年11月 第1刷発行
313頁
対談 又吉直樹x西加奈子「絶対、世界にアイはある」
シリア生まれでアメリカ人と日本人夫婦の養子、ワイルド曽田アイ
世界中で起こり続ける事件、事故、天災、戦争で多くの人が命を落とすことに心を痛めるアイ
どうして自分ではなかったのか
たまたま選ばれて裕福な両親の養子になっただけの自分がこの世に存在しても良いのか
自分にとっては血縁という意味での家族はいないと悩み続けてきたアイ
アメリカで過ごした少女時代、愛情深い両親との暮らし、日本に来てから出会った親友・ナミとの親交、最愛の男性・ユウとの出会いなどを通して彼女の内面の変化を丁寧に描いていきます
9・11や3・11などについてアイは思います
渦中の人しか苦しみを語っていけないなんてことはないと思う
もちろん、興味本位や冷やかしで彼らの気持ちを踏みにじるべきではない
絶対に
でも、渦中にいなくても、その人たちのことを思って苦しんでいいと思う
その苦しみが広がって、知らなかった誰かが想像する余地になるんだと思う
渦中の苦しみを
それがどういうことなのか、想像でしかないけれど、それに実際の力はないかもしれないけれど、想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う
小説という形で伝えられる言葉は理解しやすいです
自分は部外者であっても想像することはできる、という部分には救われた思いがしました
巻末に収録されている対談で種明かし
アイ=I
ミナ=ALL
ユウ=YOU
全然気づきませんでした
これを知ったうえで再読するとさらに深く読み込めるかと思いますが、ちょっとしんどかったので後日にします
作中で少し触れられていて知ったのですが、アップル社共同設立者の一人、スティーブ・ジョブズ氏も実父はシリア人男性で生後すぐにアメリカ人夫妻の養子になったそうです
http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/9568085.html
感性の違いということで軽く流してくださいませ。
<m(__)m>