講談社文庫
2011年 4月 第1刷発行
2016年 3月 第16刷発行
解説・安藤礼二
188頁
「ポトスライムの舟」
「ポストスライム」って何だろうと思って読み始め
途中から「ポトスライム」
観葉植物のポトスの葉色が明るめの品種と認識<m(__)m>
表紙カバーを見ればわかることですネ
芥川賞受賞作です
29歳、色々あって新卒で就職した会社を退職後実家に戻り
現在は工場でライン仕事についているナガセ
母親と二人暮らし
夜は友人のカフェの手伝い
土日は老人相手のパソコン教室講師
「時間を金で売る」虚しさをやり過ごす日々ながら
退職で負った心の傷は徐々に癒されつつあります
ある日、工場の休憩室に貼ってあるクルージングのポスターを見て世界一周旅行の費用と自分の年収が同じ163万円で、一年分の勤務時間を世界一周という行為に換金できることに気付き、工場で得る収入を全て貯金しようと決心します
そんなナガセと大学時代の友人ら、工場の先輩との日常をユーモラスにシリアスに淡々と描きます
一年が過ぎ、気付けば通帳残高が1,631,0424
さて、ナガセは世界一周旅行に出かけるのでしょうか
「十二月の窓辺」
「ポトスライム~」の前日譚ともいえます
主人公はツガワ
女性ばかりの職場で恐ろしいほどのパワハラに悩まされる毎日
周囲に味方はおらず話し相手は偶然昼休みに出会った他の会社勤務の女性だけ
これは読んでいて辛かったです
どうやら中年男性を狙うらしい通り魔が出てきます
通り魔とツガワの日常がどう結び付いてくるのか
う~む、重く痛い話でした
著者の実体験も含まれているかと思うとまた辛い…
しかし、最後には
痛みや重みを自由へと変えることが出来ると気づくツガワ、そしてナガセなのでした
津村さんは「とにかくうちに帰ります」に続き2作目
今後も読んでいきたい作家さんがまた増えました^^
前日譚といえる「12月の・・・」と合わせて、完成版と言うか、すごく座りが良くなっていた記憶があります。
この著者の作品は多分それ以後ご無沙汰なので。私もまた読んでみようかしらん。
流石ですね。
確かに、2編揃っての作品です。
ナガセ(ツガワ)が会社であれほどヒドイ体験をしたのかと思うと、よくぞここまで立ち直ってくれたと涙ものでした。友人たちもそれぞれ大変なのですけど。
働くって大変。ナガセやツガワと似た環境に置かれている若い人が多いのかなぁ。頑張ってとエールを送ることくらいしかできないのが少し辛いです。
津村さん、次は何を読もうか、楽しみです。