みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0341「待ち伏せ」

2018-10-07 18:46:20 | ブログ短編

 私には片思(かたおも)いの先輩(せんぱい)がいる。学校で何度か告白(こくはく)を試(こころ)みたが、二人だけになるチャンスもなく今にいたっている。でも、今日こそは誰(だれ)にも邪魔(じゃま)されず、告白してやるぞーぉ。
 私、気づいたの。夕方(ゆうがた)、部屋の窓(まど)から外(そと)を見たとき、先輩が家の前を歩いていた。まさか、先輩が塾(じゅく)に行くのに、私の家の前を通るなんて。何で今まで気づかなかったのよ。
 先輩が塾に行く曜日(ようび)と時間はちゃんとリサーチ済(ず)みよ。今日、先輩は間違(まちが)いなく家の前を通るはず。そこを待(ま)ち伏(ぶ)せて、私の思いを伝(つた)えるの。私はドキドキしながら、部屋の窓から外を眺(なが)めていた。外は夕暮(ゆうぐ)れで、もう薄暗(うすぐら)くなっている。そこへ、人影(ひとかげ)が…。あれは間違いなく先輩よ。私は慌(あわ)てて階段(かいだん)を駈(か)け降(お)りて、玄関(げんかん)の扉(とびら)を開けた。
 先輩の顔なんて、まともに見られない。私はうつむいたまま、先輩の前に飛び出すと叫(さけ)んでしまった。「先輩! 大好きです。私と付き合ってください!」
 しばらくの沈黙(ちんもく)。とっても長く感じたわ。先輩…、何でもいいから言ってください。
「何やってんだ? こんなとこで、恥(は)ずかしいことすんなよ」
 それは、聞き覚(おぼ)えのある声。私は顔を上げる。そこにいたのは、
「お兄(にい)ちゃん! 何でいんのよ。もう、バカっ!」
 その時だ。私の横(よこ)を、先輩が通り過(す)ぎて行った。私は先輩の後ろ姿(すがた)を見送(みおく)って――。これで、私の片思(かたおも)いも終わりだわ。変なヤツって、思われちゃったじゃない!
<つぶやき>恋は思うようにはならないものです。何度失敗(しっぱい)してもいいじゃないですか。
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