みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0342「寝言」

2018-10-08 18:39:06 | ブログ短編

 妻(つま)は朝からご機嫌(きげん)ななめ。どうやら、夫(おっと)が寝言(ねごと)で女性の名前(なまえ)を呟(つぶや)いたようで…。
「だから、知らないって。そんな名前」夫は困惑(こんわく)顔で言った。
「知らないわけないでしょ。あなたの口から出た名前よ。ちゃんと説明(せつめい)して」
「そんなこと言われても…。たかが寝言じゃないか」
「たかが? たかがって何よ。やっぱり、やましいことがあるのね」
 妻は疑(うたが)いの目を向ける。「あなた、嘘(うそ)をつくとき鼻(はな)がふくらむのよね」
 夫はとっさに鼻を押(お)さえる。妻はしてやったりと、「ほら、やっぱり嘘(うそ)ついてる」
「言っとくけどな、僕(ぼく)は浮気(うわき)なんかしてないから」
 妻は依然(いぜん)として納得(なつとく)してない様子(ようす)。夫はため息をついて、
「分かったよ。佐依子(さえこ)って言うのは、昔(むかし)、付き合ってた彼女だよ。でもな、それは君(きみ)と知り合う前の話で…。彼女とは、別れてから一度も会ってない」
「じゃ、何で知らないって言ったの? 会ってもないのに、何で彼女の夢(ゆめ)なんか見るのよ」
「そんなこと――。だって、また怒(おこ)るだろ。昔の彼女だって言ったら…」
「なに言ってるのよ。私がそんなことで嫉妬(しつと)するとでも思ってるの? じゃ、どんな夢を見たのか、言いなさいよ。何か、とっても楽しい夢を見たんでしょ?」
<つぶやき>夢のことを言われても、困(こま)りますよね。でも、ホッとする夢だったのかも。
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