みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0353「愛のカタチ」

2018-10-19 18:51:10 | ブログ短編

「ねえ、愛(あい)してるって言って」女は男を見つめて言った。
 男は面倒(めんど)くさそうに答える。
「このまえ言っただろ。そんなこと、いちいち――」
「この前は、この前よ。今のあなたの気持ちを訊(き)きたいの」
 女は男の愛を確(たし)かめたかった。でも男は、そんな女を疎(うと)ましく思っていた。別に嫌(きら)いになったわけじゃない。ただ、愛の言葉(ことば)を口にするのが苦手(にがて)なのだ。女は食い下がる。
「どうして言ってくれないの? あたしのこと愛してないの?!」
「そんなこと訊かなくても分かるだろ。お前に、どれだけ金(かね)使ったと思ってんだ」
「ヤマザキ先輩(せんぱい)は言ってくれたわ。あたしが訊かなくても、会うたびに…」
 男は一瞬(いっしゅん)、耳を疑(うたが)った。こいつ、俺(おれ)がいるのに他の男と…。女はスマホを操作(そうさ)して画面(がめん)を男に向ける。そこに映(うつ)っていたのはゲームのキャラだった。女は、
「ほら。ヤマザキ先輩は、いつもあたしのこと思ってくれてるの」
「何だよ。俺は、こんなのと比(くら)べられてるのか? 信じられねえ。じゃあさ、こいつが、お前に何か買ってくれるのか? こいつが――」
「女はね、気持ちが欲(ほ)しいの。ほんとにあたしのこと、真剣(しんけん)に思ってくれてるって」
「そんなに言うんなら、言ってやるよ。その代わり、プレゼントはいらないんだな」
 女の顔が一瞬引(ひ)きつる。「それはダメよ。あたし、そんなこと言ってないでしょ」
<つぶやき>愛されていれば幸せな気持ちになる。でも欲しい物も…。女は欲張(よくば)りかもね。
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