そのミュージアムは場所(ばしょ)を移動(いどう)しながら、不定期(ふていき)で公開(こうかい)されていた。しかも、招待状(しょうたいじょう)を受け取った人しか入ることが許(ゆる)されない。
ミュージアムにはどんな素晴(すば)らしいお宝(たから)があるのか。噂(うわさ)では、歴史(れきし)を塗(ぬ)り替(か)えるような秘宝(ひほう)だとか、偉人(いじん)たちが残した遺品(いひん)の数々。はたまた、宇宙人(うちゅうじん)が残した遺物(いぶつ)だとも囁(ささや)かれていた。だが、その実体(じったい)を語る人は誰(だれ)もいなかった。
一人のジャーナリストがこの謎(なぞ)に挑(いど)んで取材(しゅざい)を始めた。彼は精力的(せいりょくてき)に動きまわり、何とか招待状を手にすることに成功(せいこう)した。彼は友人の何人かに、そのことを話している。
――彼はその後、消息(しょうそく)を絶(た)った。誰も彼の行方(ゆくえ)を知らず、忽然(こつぜん)と消えてしまったのだ。
一年後、それは偶然(ぐうぜん)だった。友人の一人がアフリカへ取材旅行(りょこう)に出かけたとき、密林(みつりん)の奥地(おくち)の村(むら)に日本人がいるという噂を聴(き)いた。その友人が村へ行ってみると、その日本人はジャーナリストの彼だった。彼は、自(みずか)らの意志(いし)でここへ来たと話した。ここでは、ボランティアとして村の人たちと共(とも)に働(はたら)いていると。だが、肝心(かんじん)のミュージアムのことについては、まったく記憶(きおく)がないようだ。ミュージアムに関(かん)する記憶だけが抜(ぬ)け落ちていた。
この秘密のミュージアムの謎は深まるばかりだ。その実体をつかむことはできるのか。今でも、世界のどこかでミュージアムの扉(とびら)は開かれているのだ。
<つぶやき>招待状を受取ったら注意(ちゅうい)です。あなたの身に何が起こるか誰にも分からない。
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