僕(ぼく)は街中(まちなか)で声をかけられた。後ろを振(ふ)り返ると、そこにはキュートな女の子が…。しかし、彼女の出(い)で立ちは奇妙(きみょう)なものだった。背中(せなか)には弓矢(ゆみや)を背負(せお)い、長い槍(やり)を手にしている。僕は目を疑(うたが)った。こんな格好(かっこう)で逆(ぎゃく)ナンするなんて、どういうつもりだ?
彼女は僕を見つめて言った。「ねえ、一緒(いっしょ)に狩(か)りしない?」
「かり? かりって…」僕は彼女が何を言っているのか理解(りかい)できなかった。
「だから、一緒にドラゴンを捕(つか)まえるのよ。ねえ、いいでしょ?」
「ああ、ゲームね。何とかハンターとかそういう――」
「ゲームじゃないわよ」彼女は平然(へいぜん)と言うと、「アンタなら、ドラゴンをおびき寄(よ)せる良い餌(えさ)になると思うの。だから、あたしの狩りを手伝(てつだ)って」
「えっ? いや、それは…。何で僕が、餌にならなきゃいけないんだよ」
「心配(しんぱい)しないで。アンタが喰(く)われる前に、あたしがドラゴンを捕まえるから」
その時だ。急に日差(ひざ)しが一瞬(いっしゅん)さえぎられたかと思うと、風が巻(ま)き上がった。僕は思わず空(そら)を見上げて、あんぐりと口を開けた。ドラゴンが悠然(ゆうぜん)と旋回(せんかい)していたのだ。
「あらぁ、向こうから来てくれたわ。やっぱ、アンタって良い餌なんだ」
彼女はそう言うと、僕の手をギュッとつかみ走り出した。
<つぶやき>街中での狩りは危険(きけん)です。人のいないことを確認(かくにん)して、注意(ちゅうい)してやりましょ。
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