「築地でええじゃないか!」の音頭が東京・新宿の街に響きました。築地市場(東京都中央区)の豊洲新市場(同江東区)への移転計画に反対する市民らが18日、新宿区内で「元祖 築地でええじゃないか! 新宿港町行進」を行いました。
「♪らっしゃい、らっしゃい、築地にいらっしゃい」「♪世界に誇る日本の文化」
軽快な小太鼓のリズムに合わせてコールが連呼され、うちわが振られました。約100人で始まった行進は参加者が増え続け、200人近くに膨らみました。沿道の歩行者が次々立ち止まり、笑みを浮かべ、スマートフォンでパレードを撮影していました。
行進に先立ち、呼びかけ人の浦邉力さんは、小池百合子都知事が築地市場業者に、豊洲新市場の土壌汚染を無害化できなかったことを謝罪したことにふれて「ならば豊洲に行かない方がいい。築地のよさをアピールしていきましょう」とあいさつしました。
全労連・東京中央市場労組の中澤誠委員長は、小池知事が豊洲移転の方針を固めたなどと報道されていることについて、「石原慎太郎元都知事が何度『決定』しても移転できなかったように、知事の決定だけで移転はできません」と強調。引き続き移転中止を求めていこうと呼びかけました。
日本共産党の大山とも子都議が参加し「築地で再整備するしかないことが、ますます明らかになっています」と激励しました。
行進中、参加者は次々マイクを握り、自作のコールも交えながら消費者・仲卸業者などの立場から築地の大切さを訴えました。
“伝統地で 営業し鯛”
「元祖 築地でええじゃないか! 新宿港町行進」では、参加者も見学していた市民たちにも切実な思いがありました。
「築地にらっしゃい!」―。築地市場で「ターレ」と呼ばれる運搬車で魚を運ぶ男性(68)は、行進の最後尾で、しわが刻まれた太い指を固く握りしめて声をあげました。「豊洲は毒が出ている。安全だと胸を張って魚を出せない」。消費者に安全な魚を届けることに使命と誇りをもって仕事をしているといいます。「築地は80年安全を守ってきたんだ。俺は豊洲には行けない。労働者として声をあげる」
隊列が目の前を通過した後も、ずっと視線を投げかける男性がいました。この男性(66)=横浜市=は、30年以上前に築地で船から魚をおろす仕事をしていたといいます。「築地の人たちはいい人ばかりでね。あの雰囲気、伝統が失われると思うと切なくて。何とか再整備して残してほしいんだ」
「伝統築地で営業し鯛(たい)」と自作ののぼり旗をかかげて参加したのは、女性(66)。住まいのある東京都稲城市では築地市場から流通している魚も多いといいます。「豊洲新市場は赤字が60年で1兆円と推測されている。赤字解消のため魚の価格に乗せられたら、消費者も無関係じゃない」と不安を口にします。