財務省が財政制度等審議会(4月27日)で提案した“社会保障切り”計画の特徴は、社会保障費の自然増にキャップ(上限)をかぶせ、3千億~5千億円規模の削減を毎年行うことです。医療・介護・年金・障害福祉など各分野の制度改悪を新たな段階に進めようとしています。
財務省案は、今後2020年までの5年間にわたり、名目3%の経済成長で得られる税収増5千億円の範囲内に、社会保障費(国費)の自然増を抑え込むという考え方を打ち出しました。
高齢化や医療の高度化に伴って当然に増える社会保障費(自然増分)は年間「8千億円から1兆円というのが相場」(2月12日の会見で甘利明内閣府特命担当相)です。それを5千億円に抑えるには3千億~5千億円規模で社会保障費を毎年削らなければなりません。大掛かりな制度改悪抜きには不可能です。
「医療崩壊」「介護難民」を生んだ小泉政権の自然増分2200億円削減路線を、いっそう大規模に再開する無謀な計画です。
所得税を無視
名目3%の経済成長で増える税収が「5千億円」という計算には消費税収しか含まれていません。所得税や法人税の増収を無視しています。社会保障に回す税収は消費税分だけに限定するという前提を置いているのです。
消費税収以外の収入を除外する前提に基づき、財務省は社会保障のさらなる「効率化」が必要だと主張。医療や介護を遠ざけて高齢者の生活を壊し、年金の支給開始年齢を引き上げて若者の将来設計を台無しにするメニューなどを極めて具体的に掲げました。(表)
安倍政権が13年12月に強行成立させた「社会保障制度改革プログラム法」は、10%への消費税増税とセットで15年度までに行うべき社会保障関係の法改定の項目を列挙した法律でした。今回の財務省案は、20年までを見通して次なる社会保障制度改悪を準備する内容です。
年末に工程表
財務省は、夏に策定する財政健全化計画に今後の社会保障「改革」の考え方とメニューを盛り込み、年末に具体的な制度「改革」の工程表をつくると表明しています。
財界団体(経団連と経済同友会)は年初から、「痛みを伴う」社会保障「改革」の提言を連打してきました。財務省案は基本的にこれらの提言と歩調を合わせたもの。国民には消費税増税と社会保障切り捨てを押し付け、大企業には法人税減税をばらまく路線です。