陸上自衛隊の「日報」隠蔽(いんぺい)問題に学校法人「加計学園」問題と疑惑がとまらず、開き直りの会見・言い分に批判が殺到―。安倍内閣が“火だるま”状態です。
「日報」問題で稲田朋美防衛相を、加計学園問題で山本幸三地方創生担当相を直撃する疑惑が火を噴くなか、政府は「(稲田氏は)大臣としてしっかり仕事をしている」「加計ありきということではない」(菅義偉官房長官、21日)と居直り。「指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしていく。一つ一つ丁寧に説明する」という首相の約束は口先だけになっています。
南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派兵された陸上自衛隊の日報をめぐり、データが陸自内に保存されていたとの報告を受け、その事実を非公表とすることを稲田氏が了承していたとの報道が相次ぎました。陸自から「報告はされていない」という国会答弁を覆す重大問題です。
稲田氏は21日の会見で、「了承はあり得ない」と否定しました。しかし、この間の経緯から見れば、何の説得力もありません。記者からは「あなたがうそついているか、陸自がうそをついているかのどちらかだ」「報道を否定するなら、大臣名で抗議文を出せばいい」と厳しい質問が相次ぎました。
隠蔽に批判が高まるなか、稲田氏は防衛監察本部に特別防衛監察を指示。ところが、自らが監察の対象となり、21日午後、聴取を受けました。24、25両日の衆参予算委員会でも、「特別防衛監察中」を理由に逃げ切ろうとしています。
国家戦略特区による獣医学部新設をめぐっては、対象区域が決まる2カ月も前に、山本氏が加計学園や今治市の名前を挙げて四国での新設方針を説明していたことを記した日本獣医師会の文書が発覚しました。山本氏は「相手方(獣医師会)の思い込みだ」と言い張るものの、当初根拠としていた秘書官のメモについて、翌日になると「廃棄した」。
山本氏は国会で、今治市と決めたのは「年末年始の段階」と述べていました。獣医師会の文書が事実だとすれば、これも虚偽答弁だったことになります。「思い込み」で済むような話ではありません。
陸自の日報問題も、加計学園問題も、震源にいるのは安倍首相です。戦争する国づくりの推進と、身内優遇の政治を進めてきた首相の政治責任がいよいよ問われています。
稲田氏を監察が聴取
― 「日報」問題 隠ぺい・辞任は否定
南スーダンPKO(国連平和維持活動)の「日報」隠ぺいを了承した疑惑が浮上している稲田朋美防衛相は21日午後、防衛省内の防衛監察本部が実施している特別防衛監察の聴取を約1時間受けたことを明らかにしました。
特別防衛監察は制度上、稲田氏ら政務三役を調査の対象外としていますが、稲田氏が「日報」隠ぺいに関与していたと報道され、批判が高まっていることから、監察に応じることになった形です。
ただ、特別防衛監察は稲田氏自身が指示したもの。「元検事長を長として現役の検事も参加する、独立性の高いものだ」と主張しますが、透明性の確保には疑問が残ります。
稲田氏は同日午前の記者会見で、聴取には応じるものの、陸上自衛隊が廃棄したと説明しながら保管していた「日報」を非公表とすることを了承していたという疑惑については改めて否定し、「批判があることは承知しているがしっかりと自分自身のなすべきことをやっていきたい」と述べ、辞任する考えがないことも強調しました。菅義偉官房長官も21日の会見で、「大臣としてはしっかり仕事している」と擁護しました。
監察結果の公表時期について稲田氏は「できるだけ早く公表したい」とする一方、「報道されている点に関する事実関係についても徹底的な調査が必要である」と強調。防衛省は28日にも結果を公表したい考えですが、時期がずれ込む可能性もあります。
稲田氏は「日報を非公表とし隠ぺいすることを了承したこともなければ、日報のデータが陸自に保管されているとの報告を受けたこともなかった」と重ねて強調。陸自側がデータの保管を稲田氏に報告したとしていることとの食い違いを問われても、「防衛監察の中で事実関係が解明される」と繰り返しました。