学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題をめぐり、衆参両院の予算委員会参考人招致での柳瀬唯夫元首相秘書官の答弁(10日)の信ぴょう性が疑われる事態になっています。愛媛県との面会、県側が発言していたことを明言しない柳瀬氏に、中村時広県知事は、面会時に交換したという柳瀬氏の名刺など物的証拠を示して反論。“柳瀬答弁”の矛盾は広がるばかりです。
中村知事が批判したのは、官邸で加計学園幹部とは面会したが、愛媛県や今治市の職員の同席や発言は「記憶にない」という柳瀬氏の答弁。中村知事は「県職員は県の立場を説明するために行き、しっかり発言している」と反論し、職員が保管していたという柳瀬氏の名刺を公表しました。
柳瀬氏の、メインテーブルには吉川泰弘元東大教授(現・岡山理科大学獣医学部長)と学園幹部が座っていたという話に関しても、「職員はメインテーブルに座っていた」「(吉川氏は)いない」と主張。出席人数も「10人近く」とする柳瀬氏に対し、中村知事は「こちら側が6人で、そのうち3人が県」だといいます。
柳瀬氏が「本件は、首相案件」と述べ、獣医学部新設への道筋を懇切丁寧に助言したと記されている県の面会記録をめぐっても、中村知事は「ありのままに書いている」と強調。「伝えたかった趣旨と違う」「『首相』という言葉は使わない」とする柳瀬氏の主張を、「脚色はない」「(総理も首相も)われわれからすれば全く同義語」だと一蹴しました。
面会記録のうち、柳瀬氏が「覚えがない」とかたくなに認めなかった「下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっている」の部分についても「あの通りだ」と明言しました。下村氏の発言は、安倍晋三首相と学園の加計孝太郎理事長の会食の際に話題になったとされており、安倍首相が事の経緯を知っていたか、自ら学園に便宜を図ったかの疑惑の核心に関わる箇所です。
愛媛県側の反論があったにもかかわらず、安倍首相は、柳瀬氏を「誠実に答えていた」と評価。菅義偉官房長官は「地方自治体のことに対してコメントする立場でない」の一点張りで、与党は中村知事の国会招致を拒否しています。
日本共産党の塩川鉄也議員が「中村知事の反論により、説明責任は政府に返ってきている」と指摘(11日、衆院内閣委員会)するように、官邸での面会内容をめぐる柳瀬氏の答弁の信ぴょう性は早々に崩れ、さらなる真相解明が必要になっています。その一歩として柳瀬氏の証人喚問と中村知事の参考人招致が急務です。