米誌 「安倍構想は危険で余計」
「『安倍カラー』米で全開」(「読売」)「首相 自信の演説連発」(「毎日」)など、全国紙は、先月下旬の安倍晋三首相の米国訪問を大々的に報じました。首相も、集団的自衛権の行使容認など海外で米国と肩を並べて戦争できる国づくりへ強い意欲を示し、「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのであれば、そう呼んでもらいたい」(ハドソン研究所での講演)と高揚感にあふれていました。
ところが、米国の主要紙では、同研究所での講演は無視され、国連総会での演説も雑報扱い。オバマ米大統領との会談も実現しませんでした。
「(安倍首相の)強烈なメッセージにもかかわらず、ワシントンはなぜ冷淡なのか」―。こうした米国内の冷ややかな反応について、米国の経済誌『フォーブス』が分析記事をウェブサイトに掲載しています。
安倍首相の訪米は、国連総会出席などのため先月25日から27日まで行われました。ところが、通常ならセットされるはずのオバマ米大統領との会談はありませんでした。「安倍の“集団安全保障”への強い要求にもかかわらず、オバマとの会談は実現できなかった」と題する『フォーブス』誌の記事は、「オバマは安倍をわざわざ避けたと思われ、その結果、恥をかかせた」と述べます。
日米首脳会談はなぜ持たれなかったのか
その理由として、記事は、安倍首相が日本の防衛政策を根本的に転換することになる集団的自衛権行使のため日本国憲法を再解釈することを“使命”とし、中国の台頭と軍事力拡大をその口実に挙げていることを指摘しています。
記事は、「安倍首相の構想が日本自身の安全保障にとって危険で余計であるだけでなく、大部分の日本人の思いとあまりにもかけ離れている」と指摘。首相の構想が米国防総省の“中国脅威”派に歓迎されることは疑いないが、同省内ではそれとは明確に異なる新しい考えが注目され始めていると強調しています。
記事によると、2010年にオバマ政権が打ち出した「アジアへのリバランス(再均衡)」は、米国が同地域でいっそう軍事的優位に立つという戦略です。しかし、今年8月のヘーゲル米国防長官と中国の常万全国防相との会談では、中国側が「リバランス」について、現在でも米国優位にある力関係を本当の意味でバランス(均衡)のとれたものにするという意味として理解したいと求め、米側もこれを一定受け入れたと伝えられています。
記事は、「この新しい米中戦略対話は、安倍と日本の保守主義者を不安にさせている」と指摘。集団的自衛権行使容認の動きなど安倍首相の構想はそうした米中関係の転換に対抗するものであり、「間違ったものだ」と断じています。