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「消費税にたよらない別の道」 ――日本共産党の財源提案

2014-11-27 | 消費税増税必要なし、逆に経済を壊す

 消費税8%への増税によって日本経済が深刻な危機に陥りました。いまの景気悪化は、「増税不況」にほかなりません。ところが、安倍首相は、消費税10%への増税を1年半「先送り」したうえで、今度は「景気がどうなろうと増税する」というのです。こんなことをすれば、「増税不況」が繰り返されることになります。

 消費税創設以来26年間で、その税収は282兆円にものぼりますが、ほぼ同じ時期に法人3税は254兆円、所得税・住民税も248兆円も減ってしまいました。不況による税収の落ち込みに加え、大企業、富裕層への減税が繰り返されたからです。消費税は、その穴埋めに消えてしまったのです。「社会保障財源といえば消費税」「財政健全化といえば消費税」という消費税頼みのやり方では、この失敗を繰り返すだけです。

 日本共産党は、消費税10%増税は「先送り」実施ではなく、きっぱり中止を求めます。社会保障の拡充や財政危機打開に必要な財源は、「消費税にたよらない別の道」で確保します。具体的には、次の二つの改革を提案します。

富裕層や大企業への優遇をあらため、「能力に応じた負担」の原則をつらぬく税制改革をすすめます

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 本来、所得税は所得が高いほど負担率が高くなるはずなのに、実際には所得が1億円程度を超えると逆に負担率が下がってしまいます。法人税も、実質負担率が中小企業は25%、大企業は14%と、いちじるしい不平等になっています。富裕層や大企業には、さまざまな優遇税制が適用されているからです。こうした不公平税制をあらため、「能力に応じた負担」の原則に立った税制改革をすすめれば、公共事業や軍事費などの歳出の浪費をなくすこととあわせて、約20兆円の財源を確保できます。

法人税減税のばらまきを中止します

 安倍政権が財界の要求を受けて検討している法人税減税は、財界の要求通りに実施すれば5兆円、政府が「新・成長戦略」に掲げた分だけでも2・5兆円という、巨額のばらまきです。こんな減税をしても、大企業の内部留保を増やすだけで、賃上げにも景気回復にもつながりません。大企業へのばらまき減税は、ただちに中止します。

大企業への優遇税制をあらためます

 トヨタ自動車は、2008~12年度の5年間、法人税(国税)を1円も納めていませんでした。法人税の法定実効税率は約35%ですが、実際には10%、20%台の税金しか納めていない大企業が多数あります。さまざまな優遇税制の恩恵を受けているからです。

 たとえば、多額の研究費を使う企業の法人税を減税する「研究開発減税」(年間減税額4000億円)、親会社と子会社の損益を通算して税金を減らせる「連結納税制度」(6000億円)、他の企業から受け取った配当の一部または全部を非課税とする「受取配当益金不算入制度」(1兆4000億円)、海外にある子会社からの配当を非課税にする「海外子会社配当益金不算入制度」(6000億円)などです。これらの制度は、法律的には中小企業も利用できることになっていますが、多額の研究費を使ったり、子会社を持っているのは、実際にはほとんどが大企業です。こうした大企業への優遇税制を廃止または大幅縮小します。

将来的には国際協調で法人税率を引き上げます

 世界的な法人税引き下げ競争の有害性は、OECD(経済協力開発機構)でも指摘されています。タックスヘイブン(租税回避地)などの税率の低い国を利用した、多国籍企業の「税逃れ」への批判も高まっています。法人税の引き下げ競争を見直す国際的な働きかけをすすめ、下げすぎた法人税率の適切な引き上げをはかるようにしていきます。

所得税・住民税、相続税の最高税率を引き下げ前に戻します

 所得税・住民税の最高税率は、1999年に、それまでの65%から50%に引き下げられました。相続税の最高税率も、2003年に70%から50%に引き下げられました。国民の批判を受けて、民主党政権が引き上げを決めましたが、引き上げ幅は5%で、まったく不十分です。引き下げられた最高税率を元に戻します。最高税率の対象は、所得税では課税所得3000万円超、相続税では相続人1人当たり20億円超の部分です。

証券税制を欧米並みに強化します

 昨年末に証券優遇税制は期限切れとなりましたが、上場株式の配当や譲渡所得への税率は、所得税・住民税あわせて20%と、依然として、欧米諸国に比べても低い水準になっています。富裕層の多額の配当や譲渡所得については、次のように負担を引き上げます。

 株式配当―少額の配当などを除き、総合課税を義務づけます。これによって、富裕層の配当所得には所得税・住民税の最高税率が適用されます。

 株式譲渡益―高額部分には欧米なみに30%の税率を適用します。

新しい資産課税として「富裕税」を創設します

 高額な株式や不動産などの資産を保有する富裕層に対して、毎年課税する仕組みの新しい資産課税として、「富裕税」を創設します。相続税の評価基準で5億円を超える資産の部分に1~3%の累進課税を行えば、課税対象は0・1%程度の大資産家だけですが、8000億円前後の税収が見込めます。

被用者保険の保険料上限を見直します

 サラリーマンの社会保険料は、年金は月給62万円、医療や介護は月給121万円で頭打ちとなり、それ以上は、月給が何百万円あっても保険料は増えません。こうした高額所得者優遇の仕組みをあらため、高額所得者に適正な負担を求めます。

「為替投機課税」を新設します

 多額の為替取引に対して低率で課税する「為替取引税」を創設します。東京外為市場の取引額は年間推計94兆ドル(2013年度)で、この15年間に2・5倍以上になっています。投機マネーによる取引が増加しているからです。これに、0・01%程度のきわめて低い税率で課税すれば、1兆円前後の税収になります。税率が低いので、通常の貿易や金融取引には影響がありませんが、多数の取引を繰り返す投機マネーには負担となり、行きすぎた投機の抑制にもつながります。

環境税を強化します

 この間、「地球温暖化対策の課税」として、石油石炭税の上乗せ措置が実施されましたが、環境対策という点からは不十分なものにとどまっており、強化します。同時に、原油の国際価格高騰などの際には、課税が少なくともエネルギー消費抑制効果が十分にあることを考慮し、税率を変動できるような柔軟な仕組みを検討します。また、低所得者や寒冷地の負担軽減対策をあわせて行います。

将来は、「応能負担」の所得税改革をすすめます

 将来、社会保障の抜本的な拡充を行う段階では、富裕層や大企業の負担だけでは足らず、多くの国民が能力に応じて負担する必要があります。次に述べる経済改革を実行して、将来、国民の所得が増えた段階で、その増えた所得の一部を税として負担していただくような改革をすすめます。その場合も、低所得者に負担の重い消費税によるのではなく、所得税を中心に、「能力に応じた負担」の原則をつらぬいて、税制改革をすすめます。具体的には、所得税の税率について、累進的に1・5~15%を上乗せすれば、6兆円程度の財源が確保できます。

大企業の内部留保の一部を活用し、国民の所得を増やす経済改革で、税収を増やします

 日本の財政危機が深まった大きな原因である税収の落ち込みは、富裕層や大企業への減税とともに、景気の低迷で税収が減ったためです。消費税が創設された1989年から2013年までの25年間の平均名目成長率は0・9%と低く、消費税を5%に増税した97年以降では、マイナス0・5%となっています。経済が縮小していては、税収が増えるはずがありません。

 経済が成長しなかった最大の原因は、自民党政治のもとで大企業は利益を増やしても、賃金は下がり続け、国民の所得が増えなかったからです。ところが、安倍首相がすすめる「アベノミクス」は、円安効果で大企業に巨額の利益、株高で富裕層に恩恵をもたらしましたが、働く人の実質賃金は15カ月連続で減少するなど、景気悪化と格差拡大を引き起こしています。これでは、安定した経済成長は実現せず、税収増も見込めません。日本共産党は、大企業と株主優先の「アベノミクス」に反対し、国民の所得を増やす経済改革をすすめます。

人間らしく働ける雇用のルールをつくり、 賃金を引き上げます  

 285兆円にまで積み上がった大企業の内部留保のほんの一部を使うだけで、大幅な賃上げと安定した雇用を増やすことができます。そのために政治がやるべきことは、賃下げと低賃金労働、不安定雇用を増やしてきた労働法制の規制緩和を根本から見直し、人間らしく働ける雇用のルールをつくることです。

 “生涯ハケン”を押しつける労働者派遣法の大改悪や、“残業代ゼロ”の働かせ方を合法化するホワイトカラー・エグゼンプション、裁量労働制の拡大に反対します。派遣労働は、臨時的・一時的な業務に厳しく限定する、非正規と正社員との不当な格差を是正するなど、非正規から正社員への流れをつくります。残業時間の上限を法律で規制するとともに、「サービス残業」根絶法を制定します。中小企業への抜本的な支援と一体で、最低賃金を大幅に引き上げます。

社会保障の連続改悪をストップし、拡充をすすめます      

 消費税が増税されても、社会保障は「充実」どころか改悪の連続です。年金は安倍政権になって2年連続削減、70~74歳の医療費は1割から2割に引き上げ、介護サービスを取り上げる法改悪も行われました。さらに、来年以降も連続的な改悪が検討されています。

 日本共産党は、安倍政権による社会保障切り捨ての暴走をやめさせ、充実をすすめます。年金削減をストップし、低年金を底上げして“減らない年金、頼れる年金”を実現します。国の責任で、高すぎる医療費の窓口負担や国民健康保険料の軽減をすすめます。特養ホームの待機者、保育所の待機児をなくします。国民生活の基盤である社会保障の充実は、家計をあたため、地域に新たな仕事と雇用を生み出し、経済再生にも貢献します。

TPP交渉から撤退し、農林水産業、中小企業と地域経済を振興します

 アメリカ型の市場原理主義を「国際ルール」として押しつけ、農業や食品安全、医療、中小企業支援、環境保全など広範な分野で日本の経済主権を脅かすTPP交渉から、ただちに撤退することを求めます。農業を国の基幹産業として位置づけ、安心して農業を続けられるように、価格保障・所得補償を抜本的に強化します。中小企業を日本経済の根幹と位置づけ、中小企業全体を視野に入れた振興・支援策に転換します。

「原発ゼロ」の日本で、 自然エネルギー先進国をめざします

 日本のすべての原発が停止して1年2カ月がたちますが、電力不足はどこにも起きていません。この間、国民や企業の節電、省エネによる努力で減った電力消費は、「原発13基分」とされています。原発再稼働をストップし、「即時原発ゼロ」を決断し、原発にたよらず、省エネ・節電の徹底と、再生可能エネルギーの大幅導入をすすめます。そのための技術開発と普及によって、自然エネルギー先進国をめざす道こそが、日本経済や産業・地域経済に明るい未来を開きます。

2%台の名目成長で、10年間で20兆円の税収増を実現します

 日本の名目成長率がマイナスだった97年以降、欧米先進国の名目成長率の平均は、アメリカ4・5%、イギリス4・3%、フランス3・1%、ドイツ2・3%となっています。日本でも、国民の所得を増やし、経済の好循環を実現できれば、平均2%台の成長は可能です。そうすれば、税収も増え、10年後には、国税・地方税あわせて20兆円を超える自然増収を実現できます。

社会保障充実・暮らしの向上と、 財政危機打開の両立をはかります

 「能力に応じた負担」の原則をつらぬく税制改革で20兆円、国民の所得を増やす経済改革による税の自然増が20兆円、あわせて40兆円の財源を確保すれば、今後十数年で、社会保障の抜本的拡充をはじめ、教育や暮らし向上のための施策に取り組みながら、財政の健全化をすすめていくことが可能になります。

 もちろん、これだけの財源があっても、社会保障などに充てる予算を考えれば、毎年の財政赤字をゼロにすることはできませんから、絶対額でみれば国の借金は増えていくことになります。しかし、2030年ころまでには、基礎的財政収支を黒字化し、対GDP比でみた債務残高の増大を食い止め、逆に減少に転じさせることが可能になります。

 政府のように、一方で大企業への減税や公共事業のばらまき、軍拡をすすめながら、「2020年度の基礎的財政収支の黒字化」を無理にすすめれば、社会保障などの国民生活に関わる予算を乱暴に切り捨てることになります。これではかりに財政収支は「健全化」したとしても、国民の暮らしは崩壊してしまいます。「財政黒字化して民滅ぶ」では、本末転倒です。だからといって消費税大増税にたよれば、暮らしがさらに痛めつけられるうえに、増税不況を繰り返し、逆に財政危機を深刻化させます。この道に未来はありません。

 日本共産党は、消費税大増税路線にストップをかけ、「消費税にたよらない別の道」をすすむため、「二つの改革」の旗を高く掲げ、国民の暮らしを守り、日本経済の前途を開くために奮闘します。


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