安倍晋三首相(自民党総裁)が、集団的自衛権行使の容認の「閣議決定」を行ったことについて「これはあくまでも日本人の命を守るためだ。徴兵制が始まる、戦争を始める、こんなものはうそっぱちだ」(11月30日、神奈川県内の街頭演説)と述べ、批判をかわそうとしています。
「うそっぱち」の一言でもって徴兵制への不安を打ち消すことができないのが、自民党内の動きです。
自民党の改憲草案は、憲法9条2項を削除し、「国防軍」保持と国民の国防の義務を明記しました。これは徴兵制の根拠となるものです。改憲草案を準備するなかで2010年3月には「兵役義務」検討の必要を憲法「改正」の論点として出しています。
これを踏まえて自民党の稲田朋美政調会長は『正論』11年3月号で、「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらう制度はどうですか」と発言し、徴兵制導入を主張しました。
石破茂氏(現・地方創生担当相)は、国会で「徴兵制が憲法違反であるということには、どうしても賛成しかねる」(02年5月、衆院憲法調査会)と発言しています。13年4月21日(当時幹事長)のBS番組では、自民党改憲草案について「軍事裁判所的なものを創設するという規定がある」と前置きした上で、兵士が出動命令に「従わなければその国における最高刑に死刑がある国なら死刑、無期懲役なら無期懲役、懲役300年なら300年」とまで述べました。
「戦争を始める」のは“うそっぱち”と首相はいいますが、集団的自衛権行使は他国への武力攻撃に日本が反撃するもので、それ自体が紛れもない海外での戦争です。安倍首相は「閣議決定」で、これまでの憲法解釈を変えて行使容認に踏み出しました。
安倍首相は国会で日本共産党の追及に対し、他国軍隊への後方・兵たん支援で、これまで自衛隊が行けなかった「戦闘地域」で自衛隊が活動し、「(その場が)戦闘の現場になる可能性はある」(7月14日)、その場合「当然、身を守るため、また任務を遂行するための武器の使用はあり得る」(同15日)と明言しています。これは日本が海外で戦闘することです。
「閣議決定」の正体が明らかになるなか、安倍首相の進める集団的自衛権行使容認に対し世論の多数が反対しています。「うそっぱち」発言は、こうした世論に挑戦するもの。暴走政治の「暴言」そのものです。