日本維新の会の橋下徹共同代表が1日、大阪市長を辞職し、出直し市長選に踏み切る考えを明らかにしたのは、地元大阪で来年4月実現としていた「大阪都」構想の見通しが立たなくなった結果です。
橋下氏が固執する「都」構想とは、政令市である大阪市などをつぶし、その権限と財源を「都」に吸い上げ「一人の指揮官」がやりたい放題にできる仕組みをつくるものです。
大阪では1月31日に開かれた「都」構想関連の協議会で、四つ示されていた市分割後の特別区の区割り案を一つに絞り込む橋下氏の提案が、維新を除く全会派の反対で退けられました。
協力を要請していた公明党にまで反旗を翻された橋下氏は「議論の進め方が非常識。ビジネスの世界ではありえない」などと筋の通らない理屈で反発。松井一郎知事は「4案同時(の議論)でいけば時間切れ廃案になる。(来年11、12月までの)われわれの任期中に住民投票にかける案を示すことはできない」と挫折を認めました。
なぜ協議会で「都」構想が事実上の「廃案」に追い込まれたのか。その目的が市民利益に反しているからだけではなく、「都」構想の制度設計案があまりにもずさんだと明らかになり、期限ありきで強引に進める橋下氏らの手法に公明党も乗れなかったからです。
背景には、「維新政治」と「都」構想は暮らしと自治を破壊すると告発し、反対の意思を示してきた府民・市民の世論と運動があります。維新候補が掲げた「都」構想への参加に明確にノーを突きつけた昨年9月の堺市長選や大阪市をはじめとする府内各地でのたたかいはその象徴です。
この間の「都」構想への批判の高まりは、同構想を立党の目的とする大阪の「維新の会」と橋下氏の「存在意義」(同氏)そのものの行き詰まりと「維新政治」の未来のなさを示しています
維新の会大会 安倍政権迎合の方針
日本維新の会が1日、東京都内のホテルで党大会を開きました。大会直後、同党の橋下徹共同代表(大阪市長)は、自身が代表を務める大阪維新の会の会合で「大阪都」構想を実現するため市長辞任・出直し選挙に踏み切る考えを示し、了承されました。
大会は、同党綱領にある改憲関連部分を一部改定。現行憲法を「日本を孤立と軽蔑の対象に貶(おとし)め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法」とする定義を、「国家・民族、国民の自立を損なわせしめた占領憲法」と簡素化したうえで、大幅改憲の目標を再確認。武器輸出三原則や集団的自衛権の「見直し」などの「安全保障策の強化」、「法の支配や自由主義に基づく価値観を共有する諸国」との外交関係強化など、安倍政権に迎合する2014年活動方針を採択しました。同方針は「今こそ野党を再編し、政権交代の受け皿となる真の改革勢力を結集するときだ」としました。
橋下氏は、維新の状況について「僕のいろんな態度、振る舞いで一気に逆風にもなった」と発言。昨年5月以降の旧日本軍「慰安婦」問題に関連する自身の暴言で批判が強まり、党内も“狼狽(ろうばい)”したことを「非常に残念だった」と非難したうえ、「世界各国が似たり寄ったりのことをやっていた」と述べるなど無反省ぶりをあらわにしました。
原発について推進論者の石原慎太郎共同代表との“違い”があるとし、「原発に依存しない、新しいエネルギー供給体制」を主張しつつ、「即(原発)ゼロなんてできない」と発言。原発再稼働容認の姿勢を示しました。
橋下氏は「大阪都」構想実現の「権力闘争」を選挙で徹底的にやると強調。「僕がこうやってしゃべるのも最後になるかもわからない」と述べ、出直し選挙で敗北すれば共同代表を辞任する考えを示唆しました。
「第三極」を標榜(ひょうぼう)しながら自民党化で批判を浴びた維新は、昨年の参院選で約600万票もの得票減(前年衆院選比)となりました。その後も改憲や秘密保護法成立のための修正合意で自民党に擦り寄った結果、さらに支持率が低迷。足元の「大阪都」構想さえ府民・市民の批判を浴びて“四面楚歌(そか)”となっています。橋下氏の市長辞任や「野党再編」への動きは、国政政党となってわずか1年半で、同党が危機的状況に陥っていることを鮮明にしています。