安倍内閣が「海外で戦争する国」をめざして集団的自衛権行使を容認する解釈改憲を「閣議決定」(1日)したことを境に、世論が激変しています。「閣議決定」後の報道各社の世論調査で安倍内閣の支持率は相次いで急落して5割を切り、官邸前をはじめ全国各地で「閣議決定」撤回を求める行動が若い世代を中心に広がっています。
ネット見て宣伝参加
閣議決定から6日後となった東京・新宿駅西口での7日の“七夕宣伝”。日本共産党の女性後援会の行動で、最後の弁士の吉良よし子参院議員の演説が終わっても、路上の署名机の前に若者が並び立ちました。若い女性2人連れの隣に会社員風の男性2人連れ。後援会員の説明を聞き、「戦争する国になっちゃうんですか」と4人とも署名しました。その後も署名する人が途切れず、演説後も撤収できない状況でした。
6日の京都市左京区の出町柳駅前での行動。日本共産党と革新懇、地区労が呼びかけた宣伝・デモには、緊急の呼びかけにもかかわらず、ネットで行動を知った人らを含め90人が参加。党府議のフェイスブックを見て駆けつけた男性は、ハンドマイクで「集団的自衛権行使容認を撤回に追い込んで、日本は絶対戦争しない国にしましょう」と訴えました。
安倍内閣の支持率急落
「閣議決定」当日の1日に大阪憲法会議などが大阪市の天王寺駅前で行った宣伝・署名活動では、1時間で1000枚のビラが受け取られ、120人分の署名が寄せられて署名用紙が足りなくなるほどでした。各地の党の宣伝で「しんぶん赤旗」の購読申し込みも寄せられています。
フジテレビ番組「新報道2001」の調査(7月第1週)では安倍内閣支持率は48・6%と5割を切りました。「読売」4日付の世論調査(2、3日実施)でも内閣支持率は48%と第2次安倍内閣発足以来初めて5割を切り、「政府・与党はショックを受けている」と報じました。
週明け7日のJNNの世論調査(5、6日実施)でも内閣支持率は前月より10・9ポイント下がり52・4%と、第2次安倍内閣発足以来、最低を記録。不支持は逆に10ポイント以上上がり46・4%となりました。
自民党の若林健太参院議員(長野県)のブログ(4日)。「上高田北交差点で街頭演説・辻立ちを行う。…すれ違う車に乗る人の反応で、風当たりを感じる。今週は、集団的自衛権の問題もあって、厳しくなっているのを感じる」とつぶやいています。
世論激変 自公に危機感
国民の怒り 地方紙に反映
9条守れの取り組み報道、首長・識者の声大きく紹介
安倍内閣が「閣議決定」を強行した翌日の2日付地方紙は、赤旗紙が調べた43紙中40紙が「閣議決定」を痛烈に批判する社説を掲げました。その後も、世論の変化と活発な運動を反映し、「閣議決定」反対、憲法9条守れの声や取り組みを紙面で積極的に取り上げています。
首長にアンケート
福島民報6日付は1面で「県内市町村長アンケート 集団的自衛権行使容認手続き 半数『適切でない』」と報道しました。アンケートは「閣議決定」を受けて実施。「閣議決定による解釈変更は適切か」の問いに県内59市町村長のうち30人が「適切でない」と答え、「適切」としたのは4人だけでした。
集団的自衛権についても「行使容認後、適用範囲は広がるか」の問いに、22人が「広がる」と回答。「広がらない」6人を大きく上回りました。「いったん行使を容認すれば拡大していくことは必至。過去の戦争体験から学ぶべき」(伊藤勝西会津町長)などの声を紹介しています。
赤旗紙も大きく取り上げた千葉大9条の会主催の金子和夫・自民党千葉県連元幹事長と小森陽一・東京大学大学院教授の対談(5日)も、「東京」が3段見出しで報道。千葉日報も「安倍政権解釈改憲『東条内閣より危険』」の見出しでこの対談を大きく取り上げています。
講演・大会伝える
長崎新聞6日付は、日本平和委員会の小泉親司理事を迎えて5日に開かれた「ながさき平和委員会」の講演を小泉氏の写真入りで大きく紹介。小泉氏が「今後は行使に関する法案の成立を阻止する運動が大事」と強調したと伝えています。
琉球新報6日付は県高教組の定期大会(4日)で、「先生、僕たち戦争に行かないといけないの?」と生徒たちが不安げに質問するようになったとの報告が現場の教諭たちから相次いだことを報じました。「こんなことは初めてだ」との教諭の声を伝え、「これからどうすれば良いの? 閣議決定で決まったらもう変えられないの?」という生徒の問いに、この教諭は「20歳になったら君たちには投票権がある。どういう政治をしてほしいか考え、そして選挙に行くことだ」と語ったと報じています。
「公明Q&Aに失笑」
集団的自衛権行使容認に反対する厳しい世論に政府・与党は危機感を抱いています。
与党幹部は閣議決定直後にも「まだ国民から十分理解が得られていないというのはその通りだ。理解を得るべく説明責任を果たしていく」(高村正彦・自民党副総裁)、「われわれとしてはなお、理解を求める努力はこれからも重要だと考えております」(山口那津男・公明党代表)と、国民の理解が得られていないことを認めています。
このため、自民党はホームページにQ&Aを掲載。閣議決定について「Q:再び戦争をするためですか?」「A:違います! 国民の生命と安全を守るためです。」「Q:抑止力が、かえって危険なのでは?」「A:抑止力は平和な日本を守ります。」などの破綻ずみの議論を並べて、釈明に追われています。
内閣官房もホームページに「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答を掲載しています。
公明党は機関紙で「安全保障のここが聞きたい」と題したQ&Aを連載。「公明党はブレーキ役を果たしたと言えるのか」「公明党は『平和の党』の看板を下ろしたのか?」「集団的自衛権行使に『反対』ではなかったのか?」などの疑問に対し、「政府解釈を維持させ自衛権行使に厳格な歯止めをかけた」「『平和の党』として与党協議をリードした」などと答えごまかしています。
ネット上では「この公明党のQ&Aちょっと読んだだけで失笑するしかない」「詭弁(きべん)過ぎて踊り出しそう」「詭弁と言い訳に終始」などの声があふれています。
政府・自公がQ&A
集団的自衛権行使容認の解釈改憲の「閣議決定」に対し、全国で国民的な厳しい批判の声が上がっています。これに対し自民党や公明新聞が「Q&A」を出し、政府・内閣官房も5日、「一問一答」をウェブサイトに掲載し、政府・与党一体で「弁明」に躍起です。主な世論調査で解釈改憲への反対が過半数を占め、内閣支持率が急落していることへの危機感の表れです。その内容には重大なごまかしが――。
解釈改憲でない?
政府「一問一答」は、「解釈改憲は立憲主義の否定では」との設問に「いわゆる解釈改憲ではありません」と強調。自公両党の「Q&A」も「憲法解釈の基本的考え方は、今後も変わりません」(自民)、「解釈改憲ではありません」(公明)と説明しています。
今回の「閣議決定」は、他国防衛のための集団的自衛権行使や海外での武力行使は許されないという従来の政府の憲法解釈を根底から覆すものです。いずれの説明も成り立ちません。
「米国の戦争に巻き込まれるようになるのではないか?」の設問でも、政府の「一問一答」は「憲法上許されるのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民の命を守るための自衛の措置だけ」と説明。自公も「日本が再び戦争をする国になるのでは、断じてありません」(自民)、「外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認めていません」(公明)とごまかしに回っています。
「閣議決定」は、日本への攻撃がなくても、他国が攻撃を受けたことを理由に、自衛隊の武力行使を認めたもの。「閣議決定」でさえ、憲法上許容される「武力の行使」とは国際法上の集団的自衛権が「根拠となる」と明記しています。さらに閣議決定は、戦闘地域にでかけて他国部隊を支援することにも踏み込みました。
「歯止め」ないのに
「歯止めがあいまいで、政府の判断次第で武力の行使が無制限に行われるのでは」との問いに政府の「一問一答」は、「新3要件」が明確な「歯止め」だと説明。「国会によるチェックの仕組み」などもうたっています。自公両党も「湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘に自衛隊が参加することは、これからもありません」(自民)、「確かな歯止め」(公明)を設けたなどとしています。
しかし、武力行使「新3要件」には派遣先について地理的な制限もなく、「明白な危険」がある場合の武力行使の可否は「政府が全ての情報を総合して客観的、総合的に判断する」と説明。要するに時の内閣の判断次第で戦争に参加できるのです。「厳格な歯止め」(公明・山口那津男代表)など、全く存在しません。
デタラメな問答で国民を欺くやり方は矛盾を激しくするだけです。