「平和宣言」 各国政府に広島市長
首相は条約ふれず
広島市の平和記念式典は、平和記念公園で行われ、被爆者や遺族、市民、内外の政府・各党関係者ら5万人が参列しました。
松井一実市長が「平和宣言」(全文)をおこない、各国政府に対し「核兵器のない世界の一里塚となる核兵器禁止条約の発効を求める市民社会の思いに応えていただきたい」と訴え。日本政府に対して「唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いをしっかり受けとめていただきたい」と述べました。
国連のアントニオ・グテレス事務総長のメッセージを中満泉・軍縮担当上級代表が代読しました。事務総長は、「国際安全保障環境の悪化を目のあたりにして、被爆者の世界中に広めた重要なメッセージを思い出さなくてはいけない」と強調。「核兵器の使用を防ぐ唯一の確実な保証は核兵器の完全な廃絶である」と求めています。
安倍晋三首相があいさつし、「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、双方の努力を得ながら対話を粘り強く促し、国際社会の取り組みを主導していく決意です」と従来の立場を繰り返し、核兵器禁止条約にはいっさい言及しませんでした。
式典では、74年前の8時15分の原爆投下時刻に黙とう。市内の小学生2人が「平和への誓い」を読み上げると拍手が起きました。
この1年間で亡くなった被爆者5068人の名簿が奉納され、犠牲者は31万9186人となりました。
禁止条約署名 一刻も早く
― 長崎平和宣言 田上市長訴え
首相あいさつは広島とほぼ同じ
平和公園でおこなわれた平和式典には、被爆者や遺族、市民、内外の政府・各党関係者ら5200人が参列しました。
世界にむけて「長崎平和宣言」を行った田上富久市長は、核保有国に対し「核兵器をなくすことを約束し、その義務を負った核不拡散条約の意味をもう一度思い出すべきです」とのべました。日本政府には、「日本は今、核兵器禁止条約に背を向けています。唯一の戦争被爆国の責任として、一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准してください」と訴えました。
「被爆者代表」として、11歳で被爆した山脇佳朗さんが「平和への誓い」をのべ、「安倍総理にお願いしたい。世界で唯一の被爆国として、あらゆる核保有国に『核兵器をなくそう』と働きかけてください。この問題だけはアメリカに追従することなく、毅然(きぜん)とした態度を示してください」とのべました。
最後に、独学で学んだ英語で「この世界から核兵器を廃絶し、長崎を最後の被爆地とするために皆さんの力をお貸しください」と結ぶと会場から大きな拍手が起きました。
あいさつした安倍首相は「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め」るとしかいわず、広島市の平和記念式典とほとんど同じ内容で、核兵器禁止条約にまったく触れませんでした。
国連のアントニオ・グテレス事務総長(代読・中満泉軍縮担当上級代表)は、昨年長崎を訪れ、「被爆者のひたむきな姿が、私の心に触れた」とのべ、「核兵器が二度と使用されないことを唯一確実に保証できるのは、その完全な廃絶だけです」と強調しました。
式典は、被爆者の合唱団「ひまわり」による「もう二度と」の合唱で開会し、74年前に原爆が投下された午前11時2分に黙とうしました。