安倍晋三内閣は、自衛隊発足以来60年にわたり憲法上許されないとしてきた集団的自衛権行使に関する政府解釈をひっくり返し、行使は可能とする閣議決定を強行しました。国民的な議論も、国会でのまともな審議もなく、一片の「閣議決定」なるものでクーデター的に政府解釈を覆し、憲法9条を破壊する空前の歴史的暴挙であり、満身の怒りをもって抗議します。
世界も受け入れない
閣議決定が国民の意思に反するのは、直近の世論調査から明確です。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認に過半数が反対しています(「毎日」6月29日付=「反対」58%、「賛成」32%、「日経」30日付=「反対」54%、「賛成」29%)。民意を無視した安倍・自公政権の責任は極めて重大です。
安倍・自公政権は、これまで政府が集団的自衛権と憲法解釈の関係についてとってきた見解をいま一度銘記すべきです。
政府は従来、「憲法について見解が対立する問題があれば…正面から憲法改正を議論することにより解決を図ろうとするのが筋」としてきました。「解釈変更の手段が便宜的、意図的に用いられるならば…解釈に関する紛議がその後も尾を引くおそれがあり、政府の憲法解釈、ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれることが懸念される」という理由からです(2004年2月27日、参院本会議、小泉純一郎首相)。
今回の閣議決定は、過去の政府見解に真っ向から反し、集団的自衛権行使容認ありきの「便宜的、意図的」な憲法解釈の変更そのものです。「紛議がその後も尾を引く」ことは間違いなく、「政府の憲法解釈、ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれる」ことは避けられません。憲法で権力を縛る立憲主義を乱暴に踏みにじった安倍政権のあまりにずさんな「憲法解釈」が行き詰まりに直面するのは明らかです。
閣議決定は、日本が武力攻撃を受けていなくても、海外での武力紛争の発生により「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に集団的自衛権の行使ができるとしています。「脅威が世界のどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっている」というのが口実です。政府の一存で「明白な危険」があると認定すれば、自衛隊は「世界のどの地域」へも出兵し、武力の行使ができるようになります。
閣議決定は、こうした武力行使を「我が国の存立を全う」するための「やむを得ない自衛の措置」だとしています。かつて日本軍国主義が「自存自衛」のためとしてアジア太平洋全域への侵略戦争に突き進んでいったことをほうふつとさせます。軍国主義復活という安倍政権の野望は、世界でも、アジアでも、日本でも、受け入れられないことは明らかです。
矛盾深めるのは必至
閣議決定はやり方の点でも、内容の点でも、抜き差しならない重大な問題を抱えており、今後、自衛隊を動かすための具体化、立法化にあたり矛盾を深めるのは必至です。閣議決定を前後して数万人の怒りの抗議行動が首相官邸を取り囲んでいます。国民的な反撃へ、世論と運動をもっともっと大規模に広げることが急務です。