「日本のギャンブル依存症患者は536万人」―依存症の実態調査をした厚生労働省研究班が20日公表した最新の調査結果が衝撃を広げています。日本がすでに世界最悪のギャンブル依存症大国であることをあらためて裏付けた調査結果は、今秋の臨時国会でのカジノ賭博場合法化をねらう安倍晋三内閣にたいする強い警告ともなっています。
厚労省の補助を受けて飲酒やギャンブル、インターネットなどへの依存の度合いを実態調査した研究班(代表=樋口進・国立病院機構久里浜アルコール症センター院長)の報道発表は、各メディアが大きく報じました。国が、ギャンブル依存症についての十分な実態把握をしていないなか、貴重な調査内容だったからです。
調査の結果、ギャンブル依存症の疑いがある人は成人男性の8・8%、女性の1・8%で、全体では4・8%にのぼります。研究班は、今回初めて、この有病率から推計の患者数を発表しましたが、男性438万人、女性98万人で、計536万人がギャンブル依存症を疑われるという驚きの結果となりました。
5年前の2008年調査での男性9・6%、女性1・6%という数値から改善はみられず、ギャンブル依存症対策が引き続き手付かずのまま推移していることがわかります。
すでに世界最悪
研究班は、ほぼ同様の手法で行われた諸外国での調査結果の数値も合わせて公表しました(表参照)。ほとんどの国が1%前後なのにたいして、日本の数値は“異常”ともいえる高さです。
競馬、競輪など6種目の公営賭博に加え、「遊技」という欺瞞(ぎまん)的な扱いで、パチンコ・パチスロという実質的な賭博行為が日本中どこでも、いつでも行われているギャンブル状況が、こうした結果を招いていることは明白です。
しかも、日本ではギャンブル依存症にたいする社会的な認識が乏しく、行政の取り組みが立ち遅れているため「現状は適切な治療が受けられる状況にない」(厚労省障害保健福祉部長、4月28日の参院決算委員会)とされます。
すでに世界最悪の「ギャンブル依存症大国」である日本に、もっとも人をのめりこませる危険な賭博場・カジノを新たに上陸させることが許されるのか―。厚労省研究班の調査結果は、安倍内閣とカジノ推進勢力に、厳しい問いかけを発するものとなりました。
厚労省研究班 厚労省の科学研究費補助金を受け、日本の成人の飲酒行動や他の依存等に関する実態調査を行った研究チーム。調査は昨年7月、国民のなかから無作為に抽出した7052人のうち承諾を得られた4153人に面接し、アルコールや他の依存、うつ病、飲酒運転などを評価しました。
冷静な議論に戻るべきだ
桜田照雄阪南大学教授の話 研究班の調査結果は、日本国内のギャンブル依存症のきわめて深刻な広がりを示すもので、私たちは謙虚にこの問題に向き合う必要があります。
カジノが多数あるアメリカでの同様の調査では、大学で学ぶ学生の6%程度が、深刻なギャンブル依存症に陥っているという衝撃的な結果も発表されています。
依存症は個人の人柄や性格によるものではありません。賭博場の存在がそれを引き起こすのであり、カジノ賭博場が社会の健全性を大きく損なうことは論をまちません。
いま、カジノに積極的な安倍晋三首相におもねるように、カジノ推進派の動きが激しくなっています。うわべの「成功」事例だけに目を奪われた浮ついたカジノ推進論ではなく、さまざまな問題点を見据えた冷静な議論に立ち戻るべきです。