労組・職員監視の口実に
商業用原子炉や核燃料の開発を行っていた旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃、現・日本原子力研究開発機構)では1970年代、「テロ対策」を口実に幹部職員が警察と結託して職員を監視・調査し、労働組合の切り崩しや活動家の分断工作を行っていたことが28日、赤旗紙が入手した資料と証言でわかりました。秘密保護法案では、「テロ対策」を“秘密”の対象としていますが、こうした「テロ対策」が、労働者の思想・信条を調べあげ、労組など民主的な運動を弾圧する常とう手段であることが浮き彫りになりました。
赤旗紙が入手したのは、動燃の総務部次長だった故西村成生氏が自宅に残した資料の一部。西村氏は、主に労務や総務部畑で、労組や選挙対策、反対派住民の切り崩し工作を担当し、その記録が多数残されていました。
資料の中に、1981年ごろ、茨城県の東海事業所内で作成したとみられる職員150人ほどの一覧表がありました。職員ごとに「A」「B」「C」「観(要観察の略)」と「判定」され、共産党員か組合活動家かで色分けしています。
判定の横には「理由」の記入欄があり、「○○と親しい」「(同僚の)祝う会出席」「役選(労働組合の役員選挙のこと)の際、(態度)明確にせず」と、職場の人間関係などのコメントがありました。
一覧表にはこうしたコメントが、茨城県警、同勝田署や公安調査庁、労使協調を主張する「良識派」の職員からの「情報を基にする」と記述。動燃幹部が警察や公安調査庁と緊密に連携して職員を監視していたことがうかがえます。
出張先にも刑事
一覧に掲載されていた関田正光氏(73)は「東海事業所の職場では70年代に転落事故などが多発し、安全確保を求める声の高まりから、経営陣とのなれ合いを排してたたかう労働組合が活躍した時期だった。警察が、組合活動家に接触を図ってきた時期とも重なる」と振り返ります。
関田氏によると、当時の組合活動家の1人は出張で泊まった埼玉県内のホテルに茨城県警勝田署の刑事が訪ねてきました。
刑事は「原子力施設をテロから守らなければならない。テロリストのような人がいるか知らないか? あなたの組合の原子力や再処理についての考えを知りたい。組合のビラをもらえないか」と持ちかけてきたといいます。
干渉が“合法化”
関田氏は「出張をしていることや宿泊先を警察が知っていたのは、動燃が情報提供しなければ説明がつかない。この時期、警察が『テロリスト探し』を口実にして、組合に介入する事例が相次いだ。経営陣と対決する組合への経営陣と警察の明らかな干渉だった」と証言します。
秘密保護法案をめぐっては、警察の恣意(しい)的な捜査や市民活動の監視が懸念されています。憲法で保障された労働組合の活動まで、“合法的”に干渉できる危険性が浮かびあがります。