国民の目、耳、口をふさぐ「秘密保護法案」―。自民党は所属議員に対外説明用の「Q&A」を配布しています。“秘密の範囲は限定”“身辺調査もプライバシー侵害にならない程度”“一般国民は処罰の対象外”など、さも「安心安全」かのような説明のオンパレード。しかし、法案と政府答弁などからみえてくるのは、そのウソと危険です。
秘密の範囲広がらない?
4分野40万件に拡大も
自民党のQ&Aは「今よりも秘密の範囲が広がることはありません」などといっていますが、大変なゴマカシです。
そもそも懲役10年という厳罰を伴う包括的な秘密保護法はいま存在していません。懲役を伴うものには、自衛隊法で懲役5年が科される「防衛秘密」があります。
この「防衛秘密」は4万件ありますが、秘密保護法案では「外交」「特定有害活動」「テロ対策」を含めた4分野に広がります。政府は約40万件になると示唆しています。
しかも秘密の指定は、「国の安全保障に著しい支障を与えるおそれ」があると行政機関の長が判断すればいくらでも可能。「秘密指定」の基準も公表されず、何が秘密指定されたかも「秘密」です。秘密指定がどこまで広がるか計り知れません。
特に4分野のいずれにも、別表には「防衛に関し収集した電波情報…その他重要な情報」「…領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの」など、「その他」という言葉が11カ所も挿入されています。「その他」に何でも秘密として盛り込める、まったく無限定な仕組みです。
原発・TPP秘密じゃない?
「核物質防護」で統制強化
自民党Q&Aや首相側近の礒崎陽輔首相補佐官は「原発が秘密になることは絶対ない」「原発事故は対象外」などと説明していますが、典型的な情報操作のウソです。
政府は国会答弁で「原発の警備実施状況」が対象であることを認め(7日)、原子力規制庁も「核物質防護が(法案の)対象」(10月29日会見)と述べています。
「核物質防護」を建前に原発情報への統制を強めようとしているのが実態です。福島原発事故時に放射能拡散予測システム「スピーディ」さえ公表しなかった政府、そして電力会社の隠ぺい体質をさらに助長します。
TPP(環太平洋連携協定)についてもQ&Aは「法案別表のいずれにも該当しない」としています。しかし、別表には「その他の重要な情報」が入っており、無限の拡大解釈が可能。対象とならない保証はありません。
そもそもTPP交渉では参加早々、「守秘契約」に署名させられ、協定発効後も4年間は秘匿にする国際合意があるとされます。秘密保護法で指定されれば、半永久的に国民から隠されます。
家族・恋人・友人は対象外?
人間関係全て調査・監視
自民党Q&Aは、「秘密」を取り扱う者の「適性評価」について、「法定された調査事項以外の個人情報を収集することはありません」としています。
しかし、「法定された調査事項」自体、プライバシー侵害そのものです。(1)特定有害活動(スパイ活動)およびテロリズムとの関係(2)犯罪および懲戒の経歴(3)情報の取り扱いについての非違歴(非法・違法行為歴)(4)薬物の乱用および影響(5)精神疾患(6)飲酒(7)信用情報や経済状況―など、人権侵害にあたる内容で明白な違憲行為です。
「特定有害活動」や「テロリズム」との関係で家族や同居人の情報が調査・収集されます。「怪しい人物とのつきあいはないか」など、家族ぐるみで調査・監視されるのです。
すでに国の行政機関で実施されている「秘密取扱者適格性確認制度」では、知人との「交友交際の程度」(自衛隊の調査)など詳細に申告させることになっています。その際は「本人に問い合わせて確認してはならない」としており、調べられてもわかりません。