安倍晋三首相は、労働者派遣法の改悪案に関して、「派遣で働く人を増やすべきだとはまったく考えていない」(17日、衆院予算委員会)などと、実態をごまかすのに懸命になっています。
しかし、改悪案では原則1年の上限期間を3年に延ばした上、人を入れ替えれば、半永久的に派遣を続けることが可能になります。
実際、派遣業界からは「これからは派遣可能期間を超えても継続的に派遣できる」(派遣会社社長)と大歓迎する声が上がっています。2008年のリーマン・ショック前に200万人を超えていた派遣労働者が激増することは必至です。
安倍首相は「正社員化やキャリアアップ(能力向上)をはかるものだ」とも強調しています。
しかし、改悪案では派遣会社が派遣先に直接雇用を「依頼」するだけです。これまでも正社員化を打診された人はわずか1割台。むしろ上限期間が事実上撤廃されるため、「生涯派遣」となるか、正社員から派遣への置き換えが進むことになります。
キャリアアップといっても、もともと派遣は「使い捨て自由」のため、長期雇用のようにキャリアアップへ教育訓練などを行う動機が乏しい制度です。登録型派遣で「研修」を行っている派遣会社は1割もありません。
田村憲久厚労相も“低賃金雇用を増やすのか”との批判をかわそうと、「派遣より時給が低い人がいる」などと言い出しています。一般派遣が時給1474円に対し、契約社員は1198円、パートは1026円で、低いというのです(2012年、厚労省調べ)。
しかし、派遣労働者は雇用主と使用者が違うため簡単に解雇されやすく、交通費も支給されないなど時給だけで単純比較はできません。そもそも派遣も契約社員も正社員と同じように働きながら年収200万円台にしかならないことが問題であって、「均等待遇」こそ求められています。
「派遣を増やさない」というのなら、派遣法の改悪はやめて製造・登録型派遣の原則禁止や均等待遇を行い、派遣への置き換えを厳しく規制することこそ必要になっています。