衛星かくやがハイビジョンカメラでとらえた地球の映像が、大きく掲載された。
右半分が太陽光に照らされ、真っ暗な宇宙に浮かび上がった青い地球。
血生臭いテロや戦争がどこにあるのかと思わせるような美しい、「水の惑星だ」
ミャンマーの反政府デモを取材中に射殺された映像ジャーナリスト、長井健司さん、
の遺体が無言の帰国した。
付き添ったAPF通信社の山路徹社長によると、長井さんの右手は、ビデオカメラを
握ったままの状態で硬直していたと言う。
対面するのが怖いと話した老いた母親は、どんな思いで息子の亡きがらを見つめた
のだろう。
三年前長井さんが愛媛県に里帰りし際、「危ないところには」行かないでと話してい
た母親と息子の悲しい、再会となった。
その手にあったビデオカメラはなくなっていた 。
其処にはデモ隊と発砲する兵士と逃げまどう市民の姿が納められているはずだ。
地球上からデモや戦争をなくしたいと願った長井さんの最後の仕事。
それが世界中に公開されることを、誰よりも長井さん自身が望んでいたはずである。
太平洋戦争中には、おびただしい数の母親が、白木の箱に入った息子の遺骨と対
面した。
今も世界各地の紛争地で親子の悲しい対面が続く。
青く美しい地球に、残酷な光景は似合わない。