〈第三項〉論で読む近代小説  ◆田中実の文学講座◆

近代小説の読みに革命を起こす〈第三項〉論とは?
あなたの世界像が壊れます!

次回の講座のお知らせ

2021-05-26 18:05:24 | 日記
来たる5月29日、朴木の会のリモート文学講座があります。
『舞姫』の第2回目です。
前回、『舞姫』の構造に則し、物語内容を追っていったと思います。
今回は、改めて、その構造を原理的に考えてみたいと思います。

『舞姫』は言うまでもなく、ベトナムのサイゴンの港に停泊中の船中に1人とどまる「余」、
太田豊太郎が〈語り手〉です。
その中で、冒頭「石炭をば早や積み果てつ。」から「その概略を文に綴りて見む」までが、
この手記を綴ろうとしている現在の「余」の心中のつぶやき、
それ以降から末尾までが「余」の認めた文章、
これら全体を我々読者が読むということになろうかと思います。

但し、初出は明治23年1月、雑誌『国民之友』に鷗外森林太郎の署名で発表され、
明治25年7月『水沫集』にこれが収録されると、
「我がかへる故郷は外交のいとぐち乱れて一行の主たる天方伯も
國事に心を痛めたまたまふ事の一かたならぬが色に出でて見ゆる程なれば
随行員となりて帰るわが身にさへ‥‥」の肝心な箇所が省略されました。
作者鷗外は陸軍の軍人、主人公太田豊太郎は民間人で大臣天方伯爵の私設随行員、
外国女性との結婚に関しては、両者の立場ははっきりした違いがあります。

それはともかく、豊太郎は今、「腸九廻り」するほど病んでいます。
そうさせている根拠の概略を豊太郎はこの文に綴ります。
では何が原因でしょう。
もちろん、自分が日本に帰国すると聞いて発狂した恋人のことを思うからです。
彼女は妊娠しているし、見棄てるなと何度も豊太郎に訴えていました。

主人公は何故彼女を裏切ったのでしょうか。
何故こんな運命に陥ったのでしょうか。
豊太郎は「良友相澤謙吉」を「憎む」とその概略の文章に書き終わるのですが、
相澤は豊太郎の事実をエリスに伝えたに過ぎません。
そもそも豊太郎とは何者なのでしょうか。

この『舞姫』は漱石の『心』同様、膨大な研究がありますが、
そこには定説らしいものも見当たりません。

私が言えることの一つは、日本の国家建設根幹の精神を担おうとするエリートのこの若者が、
内側には病を発していることです。
読み手はクライアントの語るカウンセラーの立場で、その話を聴き取りましょう。
そもそも何が語られているのでしょうか。

ご質問のある方は、あらかじめコメント欄にお寄せ下さい。
どんなことでも結構です、大歓迎です。
なお、講座の詳細は以下の通りです。

5月29日(土)に、田中実文学講座を開きます。

テーマ    森鷗外『舞姫』を読む―近代小説の神髄―
講師      田中実先生(都留文科大学名誉教授)
日時      2021年5月29日(土)午後1時半から午後3時
参加方法    zoomによるリモート参加
申込締切    2021年5月29日(土)12時まで

参加をご希望の方は、お名前、所属をご記入のうえ、下記のアドレスに申し込んでください。
申し込まれた方には折り返しメールでご案内します。
dai3kou.bungaku.kyouiku@gmail.com  (担当 望月)

主催   朴木(ほおのき)の会

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