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フォードはマツダ・マフィアに支えられている

2014年05月19日 00時39分34秒 | 学習支援・研究
フォードCEOに昇格、マツダ元社長の手腕
日米で大規模なリストラを断行

土方 細秩子 :ジャーナリスト
2014年05月12日
東洋経済オンライン

マツダの元社長がついにフォードのトップに上り詰めた

写真:マーク・フィールズCOO(最高執行責任者、53)が7月1日付けでCEOに

米自動車大手フォード・モーターは5月1日、
マーク・フィールズCOO(最高執行責任者、53)が7月1日付けで、
CEO(最高経営責任者、68)に昇格すると発表した。
「フォードの未来は明るい。マークは、
私たちがやらなければならないビジョンを実現し続けることができる
正しいリーダーだ」と、アラン・ムラーリーCEOは
フィールズ氏をそう評価する。

今回の昇格は既定路線だった。
2006年、米航空機大手ボーイングからフォードのCEOに転じたムラーリー氏
同年決算で126億ドルの最終赤字を計上するなど
経営危機にあったフォードの構造改革を断行。
2013年には71億ドルの最終利益を確保するまでになった。
そのムラーリー氏の右腕として力を発揮してきたのが、
フィールズ氏だ
。判断の速さと実行力に定評がある。

赤字の北米事業を再建
フィールズ氏の大きな功績の一つが、「ウェイ・フォワード」と呼ばれる
大規模なリストラ
だ。2006年に赤字を垂れ流していた
米国事業のトップに就任すると、
「2011年までに黒字に戻す」と公約。4万人の人員削減、
10カ所以上の工場閉鎖に踏み切り、収益体質を改善。
2009年には黒字化を果たしている。

米ビッグスリーの中で、GMとクライスラーは
リーマンショック後に経営破綻し、一時、
政府管理会社となった。だが、フォードは自力で再建
ウェイ・フォワードはその礎ともなった。
いまやフォードの2013年の北米部門の経常利益は88億ドル。
欧州の23億ドルの赤字を補って、最大の稼ぎ頭となっている。

実は、フィールズ氏は日本とも縁が深い。
というのも、かつてマツダの社長を務めていたからだ。
一体どんな人物なのか。

フィールズ氏は1989年にハーバード大学で経営学修士(MBA)を取得し、
フォードに入社。出世の階段を急ピッチで駆け上がり、
1999年に38歳の若さで、当時フォードと提携関係にあった
マツダの社長に就任した。


マツダでは、円高で一気に業績不振に陥る中で、
短期間に2200人を超える間接人員の削減や
工場閉鎖など大リストラを断行。役員数の大幅削減や
若手の登用などの人事システムも刷新し、
経営危機を乗り切った。当時迷走していたブランドイメージを再構築するため、
現在も使われているキャッチフレーズ
「Zoom-Zoom(ズーム・ズーム)」に定めたのもフィールズ氏だ。

マツダでの手腕が認められて、2002年にフォードに復帰すると、
同社の高級車部門で
アストンマーチン、
ジャガー、
ランドローバー、
ボルボの4社を統括していた
欧州のプレミアム・オートモーティブ・グループ(PAG)の会長に就任。
赤字が膨らんでいた4社の再建に奔走し、
フォードから切り離す提言を行った。当時、
社内での反発は大きかったが、最終的には
提言に従う形で、2007年のアストンマーチンを皮切りに
これらのブランドをすべて売却している。

そうした手腕を高く評価し、北米事業のトップに抜擢したのが
ムラーリー氏だった。業績不振のフォードのCEOに、
同氏が就任して最初の役員会。各部門の経営収支を説明させると、
ほかの役員が黒字見通しを出す中、
フィールズ氏だけが赤字見通しを発表。
ムラーリー氏は「現実が見えている」と賞賛したという。
フィールズ氏がマツダで身につけた効率性の高い経営
質の良いものづくりの手腕に対する期待もあったようだ。

マツダ出向者が経営の中枢に

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米国でのフィールズ氏の評判は必ずしも良くはない。
異例のスピードで出世してきたこともあり、
性格がいかにもエリート臭い、傲慢、短気、
経営学の知識だけの頭でっかち
、などの批判が多い。

ただ、新CEO発表の場で、創業家のビル・フォード・ジュニア会長が
「マークは困難な仕事を与えられ、それを克服し、
人間的にも成長してきた。入社当初は彼の可能性を疑っていた人々も、
現在では彼を深く尊敬している」と語ったように、
それらの批判を覆すだけの実績を積み重ねて来たのは確かだ。

フィールズ氏だけでなく、フォードの幹部には
マツダ出身者が多い。たとえば、ロバート・エル・シャンクスCFO(最高財務責任者)は
フィールズ氏がマツダの社長時代にも、
マツダのCFOとして仕えていた。
マツダへの出向経験者は、フォードの中で
「マツダ・マフィア」と呼ばれるほどの勢力
になっている。

目下のフォードの課題は、欧州をはじめとした米国以外でも
利益を着実に稼ぎ出せるようにすること。
CEOとしてのフィールズ氏の手腕が試される。

http://toyokeizai.net/articles/-/37434より