2022年2月20日(日)☁/雪 強風 薊岳
※P1334尾根~薊岳~トウフ岩経由
今年・・・雪が降る機会が週末に見られた
だけど、中々本格的な雪山を味わう事が難しい状態だった
少し体調も落ち着いたと思って、薊岳に向かった時も、結局!
喘息発作を起こして、中止せざるを得なくなった
喘息の薬が変わり、ようやくコントロールできるようになった
今の体調で登れる所として 再度、薊岳に向かった・・・
これが吉と出るか凶とでるか・・・
行ってみなければわからない!
チチの運転する車に揺られて
うつらうつらしていた頃 景色が変わった!
大又林道は冬景色に変わり
その途中で、スタックしている車と
それに対応する数名の登山者たちに出会う
この林道をこの時期に入ると 必ずみられる助け合い!
チチも助っ人に回り そして、先の大又林道終点へと向かった
大又林道終点駐車場
雪は以前の時に比べると少ないように思われるが
今の体調を考えると充分だ!
冷たい空気を吸っても 発作は起きない
不安を抱えながらも、支度をして 薊岳に向かった
コースタイム
7:45 大又林道終点駐車場 ~ 7:51 P1334尾根取付き 8:05 ~ 8:54 C900m地点 ~ 11:19 1334m ~ 12:07 薊岳1406m 12:25 ~ 12:50 石ヶ平東尾根分岐 ~ 13:55 トウフ岩 ~ 14:14 方向転換地点 14:20 ~ 15:25 石ヶ平谷東尾根取付き ~ 15:42 大又林道終点駐車場
車止めゲートを過ぎると、更に世界が変わっていった
林道は、無数の登山者の形跡を残して
モノトーンの世界へと導く・・・
展望は望めないにしても 冬の花見は出来そうだ♪
冬山への期待が膨らんだ
ただ、この時…
久々に履く冬靴の癖を忘れていて
後々泣く事になるなど 気にもせず
今季初の冬靴の重さを感じながら歩いていた
林道を進んで行くと 小さな橋の右側に
雪を被った鉄階段が見えてくる
ここが P1332への尾根の取付きである
ここからはアイゼンを装着してから登っていく
P1334尾根の取付き
手すりに標布テープ!
雪を被った鉄の階段が冷たく誘う
ステップに積った雪は新雪のままだった
今日はまだ、誰も歩いていないようだ!
最初から人の少ないコースを選択しての事だが
キュッと身が締まる思いがした・・・
さて、行こうか!
初っ端から急登が待っている!
覚悟はしていたが背中の荷が、重い!
鉄の階段からは 急な登りが続く
久々の冬靴と12本アイゼン そして・・・
背に背負ったスノーシューの重さが応える
雪の表面は柔らかいが その下からは凍った固さが伝わる
雪質は悪くなさそうだが下はクラストしているようだ
注意しながら確実に歩いていく
急登を只管、登っていく
C800m辺りか?緩くなって…
最初の急登が終った・・・が!
わぁ~!
風の洗礼?悪戯?
最初の急登を登り切ったあたりのC800m
そこには 手薬煉を引いて待つ風がいた!
突風が 草木の雪を払いのけ
雪煙を捲き上げる勢いで吹きつけてくる
その力は強く 木々を揺さぶっていく
そんな、容赦なく襲う風に立ち向かうが
急登を上ってきた足に、異変を感じ始めた
右足に痛みを感じ始めたのだ
それは だんだん酷くなっていく・・・
そして 思い出した!
冬靴との相性が悪かったことを・・・
足の肉刺の予防対策をする事を・・・
しまった!
そう思ったが、すでに遅かった・・・
支尾根の植林帯
急斜面をトラバース
時に埋もれた倒木を越えて!
再び急登を一気に登ると
C900m 急登が終った?
登って来た所を振り返って見た
C900m辺りから緩やかになるが
先の見えない白い闇の狭間を歩く感じがした
そして この辺りから雪の量と雪質が変わり出した
緩く感じた道も そう長く続くものではなかった
段々勾配はきつくなり 優しさは微塵も感じない
だが この時 後ろから人気配が
二人の若者が登って来られた!
躊躇することなく 道を譲った
若さというものは素晴らしい~!
馬力が違う!
ドンドン登っていく
私にとって助っ人が現れた様な感じだった
若いっていいなぁ~
チチがボソっという・・・
年齢と共に 体力が失われていくのを感じ始め
そして更に追い打ちをかけるように起こったコロナ禍!
老いという避けられぬ試練に直面して実感する
正気な気持ちだ…
若い頃のチチも凄かったよ
そうだったかな
今もその頃と同じだったら
私、ついて行けないよ!
そうか・・・
ここからは、
入れ替わった若い先行者の恩恵を受けながら
マイペースに登っていった
登っていったが・・・足の痛みは増していった
ついに 肉刺が敗れた感触が伝わった・・・
微妙に靴の中で足をずらしながら調整するが
目先の対応で効き目は無いに近かった・・・
いたい~!
足が痛いよ~
斜面の角度も急!容赦ない
異次元の世界がひろがり
まるで未知との遭遇を彷彿させられた
止まると足の痛みはやわらぎ この幻想的な景色に
少しの間、忘れていたが・・・
歩きはじめると・・・痛~い
プチラッセルしながら登っていく
幻想的な世界に目を奪われると
また 足が止まり 痛みも忘れる!
だけど やっぱり 歩き出すと痛みは襲う!
レース編みの暖簾?
光は煙幕に包まれ柔らかく、白い魔物たちが佇む
まさに幻想的な世界と化していた
視界は閉ざされ、白い闇が広がる森の中を
何かを訴えるように吹き抜ける強い風!
この風は終始 付きまとい、
こんなタイミングで吹く~?と言いたいほど
突風に煽られ、バランスを崩しかける事が多々ある
容赦ない突風!
立ちはだかるエビの尻尾軍団!
戦いは続く…
山の様相が変わり出した
吹き溜まりとなった所や、風に掃かれて浅い所
様々に変化しつつも、確実に雪の量は増えており
樹の背丈も低くなり始めていた
足の痛みも増してきた!
チチに足の事を このタイミングで伝えた!
愚かな私!
急登が続いて、風も吹きつける中
足の処置をするところがないように思えた
我慢すればいいと考えた
しかし、それが間違いだった…
稜線はもうすぐだ!
稜線手前の緩い所で履き替えよう!
急斜面のトラバースでは もろい雪が足場を不安定にし
油断するとそのまま谷底まで滑り落とされそうだ
小さな雪玉が落ちていく姿を見ながら 緊張が増す!
稜線に出る所での尾根が緩やかになるはずだ
そこでスノーシューに履き替える事にしよう!
ここからは必死だった
記憶には、
白い世界で藻掻く自分の姿しか残っていない!
もうすぐ尾根に出る・・・
まだか?
もう少しか?
足が痛い・・・!
そして緩い尾根に出た時はホッとした
風は強いが、風を避けるところは見つからない
ここでしかない!
アイゼンを外して
靴下を脱いで足をみた・・・
お見事!
肉刺はつぶれて皮が捲れていた!
吹き付ける強い風との戦いの中
手袋を付けたままの操作は苦手な事もあり
足の処置や履き替えには時間がかかった
かなり時間をロスしたと思う・・・
もういつ履き替え始めたのか いつ終わったのか
時間の記録も この辺りから疎らになっていた
ただ 履き替えて動き出した頃にはもう
時刻は11時を回っていた・・・
身体も冷え切って 手足が冷たく
凍傷を考える程、指先が痛かった・・・
スノーシューに履き替えてからは早かった
足の肉刺の処置もうまくできたのか
痛みは気にならない
ここから挽回するように歩いた・・・
次第に体が温かくなりだし
冷たかった手先にも血が通い始めた感じがした
だが 薄暗い世界の中で 時間の感覚がずれ
薊岳に登れる自信が
いつの間にか消えつつあった・・・
チチ・・・薊岳に着くかな?
ここからは 薊岳はもうそこだ 着くよ!
うそ・・・
内心そう思った・・・
なぜそう思ったのか・・・
山家は 嘘をつく!
励ますために嘘をつく!
優しい嘘をつく!
頑張ろうとする気持ちが生まれる!
P1334mに着いた
チチが振り返ってもうすぐだという
風がせせら笑う
樹々が揺れて悲鳴を上げる
氷の花びらが乱舞して肌に刺さる
それでも
それでも
チチの言葉に押されて
薊岳へと向かった・・・
何もかも包み込んで
先の見えない白い闇の世界が広がる中
冬の花を咲かせた木々が寄り添って
励ましてくれる
つづく
長編になりますが、思いを綴っていきたいと思います
山行記にお付き合い下さると嬉しいです
宜しくお願い致します