MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯671 ミレニアル世代とゆとり世代

2016年12月05日 | 日記・エッセイ・コラム


 9月29日の日経新聞のコラム「大機小機」では、(これまでの世代とは全く違う)新しい感覚と発想を身に着けた若い世代を象徴する存在として、現在アメリカで注目されている「ミレニアル世代」を取り上げています。

 ミレニアル(millennial)は「千年紀」を意味する単語であり、その名を冠した「ミレニアル世代」は、米国で西暦2000年代に成人あるいは社会人になる世代を指す言葉です。

 米国ビュー・リサーチ・センターの定義によれば、この世代を代表するのは1981年から96年生まれで、強いアメリカを志向したロナルド・レーガン政権下の80年代からソビエト連保が崩壊し東西冷戦が終結する1991年を挟み、ビル・クリントンが政権を担った時代に生まれた現在20歳から36歳までの若者たちです。

 その人口は2014年時点で約7000万人に上り、米国の総人口の実に2割を占めているということです。

 記事によれば、ミレニアル世代は金融危機や失業増加、格差拡大、気候問題の深刻化などの厳しい環境で育ち、その結果として消費行動や職業観、社会的な価値観が過去の世代とは大きく異なっているということです。そして何よりも、米国初のデジタル・ネイティブ世代として、欲しい情報を簡単かつ瞬時に入手できることを生活の前提としているところに特徴があるとされています。

 実際、この世代の人々は、米国の社会や経済の仕組みに(既に)大きな変化をもたらしていると記事は指摘しています。

 配車サービスのウーバーテクノロジーズや民泊仲介のエアビーアンドビーに代表されるように、物よりも経験、所有よりも借用といった価値観との相乗効果によって、アメリカ社会に(これまでに無かった種類の)多様なビジネスを生み出している。しかも、交流サイト(SNS)などで知人と経験を共有することを厭わず、消費の判断についても企業広告よりSNSなどの第三者評価を重視している世代だということです。

 彼らが市場に提示したこれらの新興ビジネスモデルは、SNSによる認知度の向上と若年層を中心としたユーザーの支持を得て、今やアメリカ経済を牽引するまでに急成長しつつある。しかしその一方で、記事は、残念ながら日本の経済人の間では、このミレニアル世代が持つ影響力に対する認識が圧倒的に不足していると説明しています。

 彼らの世代は今後、世界経済の中核を占めることになるだろうと記事は予見しています。米国だけでなく、欧州やアジアでも大きな広がりとなるに違いない。なので、この変化への対応が後手に回れば(日本は)グローバル競争の中で取り残されることになるということです。

 賞味期限の過ぎた企業を創造的に破壊し、(彼らの世代が生み出す)革新的なビジネスモデルに切り替えていかないと日本の明日は無い。そしてそんな折、私たちの政府に求められているのは、新たな規制の導入は最小限にとどめ既存の規制が新たなビジネスの発展を阻害しないよう、十分な配慮をすることだと記事は述べています。

 情報技術の発達などによる経営環境と、何より人々の意識の変化により、企業は消費者の価値観を先取りして商品開発から販売、広告までのあらゆる側面で事業の刷新を進めなければ時代の求めるニーズに追いつけなくなる。また、(そのためにも)企業は仕事の充実感や大義を重視するミレニアル世代社員のやる気を引き出すべく、年齢にこだわらずに挑戦の機会を与えるなど、企業文化や人事制度を見直すことが必要だという指摘です。

 さて、ミレニアル世代は、日本で言えば 概ね1980年代後半から90年代に生まれた(いわゆる)「ゆとり世代」や「さとり世代」に当たります。

 これは、現代の20歳代が持つ若者気質から作られた言葉であり、この世代の若者が「ゆとり教育」の下で育てられたことから競争を好まず、現実を悟っているように見えることから生まれたとされています。

 日本におけるこの世代の特徴としては、「欲が無い」や「恋愛に興味が無い」、「旅行に行かない」などといった事柄がよく指摘されており、「休日は自宅で過ごす」「無駄遣いをしない」し「気の合わない人とは付き合わない」などといった傾向がみられるということです。

 この世代が物心ついた時分には既にバブルが崩壊しており、彼らには経済が好調だった経験がありません。また、子供のころからインターネットや携帯電話、スマートフォンなどが身近にあったことから現実への知識が豊富で、無駄な努力や衝突は避け、大きな夢や高望みが無く、合理性を重視する傾向が強いといった見方もあるようです。

 さて、社会におけるその存在感の大きさは別にして、モノの消費に執着せず、柔軟な価値観と情報力を特徴とする彼らの気質が、アメリカのミレニアル世代に通じることは確かです。

 彼らが生まれたのは、丁度、日本において出生率の低下が顕著になりつつあった時期に重なっており、確かに人口構成上のボリュームゾーンにはなりえません。しかし、環境の大きな変化を(ある意味「モロ」に)受けとめて育ってきた彼らの個性が、今後の社会や経済に大きな影響を与える(だろう)ことは想像に難くありません。

 そして、そうした彼らの信頼を得ることが(日本の)企業に新しい価値を創造する力を生み出すと、記事は期待を込めて指摘してしています。

 関係の中に価値を見出し、理想を現実との対立関係として捉えずに合理的な判断を行う彼らは、確かに本物のニュー・ジェネレーションとして国境を越えて繋がっていく存在なのかもしれません。

 で、あればこそ、これからの企業には社会や環境への貢献といった非財務的価値を重視する若い世代の信頼を得るべく、社会的課題の解決や環境への貢献といった社会性の追求が従来にも増して求められると結ぶこの論評の指摘を、私も大変興味深く読んだところです。



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