首都圏のマンション価格が高騰し、2021年上半期の平均価格は6702万円と上半期としては過去最高値となったと報じられています。さらに、立地を東京23区内に限れば新築マンションの売り出し価格は平均で8686万円と2020年の同じ時期よりも17%も上がっており、業界では(このままいけば)「億ションが平均」という状況が生まれるのも時間の問題と考えられているということです。
価格の高騰にはいくつかの要因があるようですが、その第一としては供給物件の減少を指摘する声が多いようです。ここに来て物件の数が減ったのは、都心の再開発が一巡し、土地の確保が難しくなったから。さらに建築コストが上がっていること、コロナ禍によって開発にブレーキがかかっていたことなどを挙げる向きもあるようです。
一方、首都圏で言えば、不動産の購入を急ぐのは経済的に余裕があって消費意欲が高い、いわゆる「パワーカップル」と呼ばれるような働き盛りの共働き夫婦だと言われています。実際、ともに年収が700万円以上のパワーカップルはこの7年間で1.6倍に増えているとされ、今の都心のマンション人気を支えているということです。
また、超低金利が続く住宅ローンも、そうした動きを後押ししていると考えられています。30年前の1991年の変動金利は概ね8.5%前後、これに対し現在の金利は0.475%ですから、これでは利子がつかないのとそう変わりません。こうした状況のもと、頭金なしの全額借入で住宅を購入する若い世代も多いと聞きます。
一方、このような状況は日本国内ばかりの話ではなく、海外においても不動産投資の拡大により不動産価格が大幅に上昇し、庶民の住宅購入が難しくなったことが(経済格差の問題とともに)社会問題化しているケースが増えているようです。不動産バブルの勢いに乗り、マンション開発を進めてきた中国の「恒大集団」の経営危機は、中国ばかりでなく全政界の経済危機の引き金になるのではないかと警戒されています。
また、韓国では、文在寅政権発足からの4年間で不動産価格が2倍近くに高騰しており、ソウル市内に物件を購入するのは至難の業と言われています。今後このバブルが崩壊すると韓国経済の再建は至難と業とされており、韓国人のみならず世界中がその動向を注目している状況です。さらに米国でも、米連邦住宅金融庁(FHFA)が公表した今年4月の住宅価格指数が前年同月比で15.7%上昇するなど統計のある1991年以降最高の伸び率を示しており、過熱する住宅市場への警戒感が高まっていると伝えられています。
さて、「一生借家暮らしの方が気楽でよい」「持ち家など持たない方が最終的にはメリットがある」という指摘も多く聞かれますが、(少なくとも日本の)若い世代にとって「家を建てる」というのはまだまだ人生の一大イベント。人生を前向きに生きる(大きな)目標として意味を持っていることでしょう。
将来への見通しを立て、そのために努力することが日々の暮らしを豊かにしていくことは想像に難くありません。結婚し、子供を育てるということばかりが人生の目的だとは思いませんが、少子化対策は政府にとっても喫緊の課題であるはずです。今後さらに人口構成の高齢化が進めば、空き家問題もさらに深刻な局面を迎えることでしょう。
子供1人当たり(広く薄く)10万円を配ることも大切かもしれませんが、政府が旗を振って民間による投資を喚起し(地方の拠点都市などに)安価の住宅を供給することが、結果として様々な課題解決に繋がる可能性も考えられます。
そうした視点でとらえれば、政策としての住宅の更新や持ち家支援というのは、多くの政治家が考えているよりも消費喚起や社会の活性化に大きな影響を与えるものではないかと感じるのですが、果たしていかがでしょうか。
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