MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2258 子どもたちの視覚・聴覚を守るには

2022年09月18日 | 教育

 新型コロナウイルス感染症拡大により子どもたちの生活環境が変化したことで、特に視力の低下(近視になる子供の増加)への懸念が報じられています。

 実際、1979年に統計を取り始めて以降、子どもの視力は40年余りにわたって低下傾向が続いているとされています。

 文部科学省が公表している2020年度の学校保健統計調査によれば、裸眼視力が1.0未満の小中学生の割合は小学生で37.52%、中学生で58.29%高校生が63.17%と過去最悪を更新しています。

 統計を取り始めた1979年度は小学生で17.91%、中学生で35.19%、高校生で53.02%。それが10年後の1989年度には、小学生で20.60%、中学生で40.90%、高校生で55.81%となり、20年後の1999年度には、小学生で25.77%、中学生で49.69%、高校生で63.31%となっています。

 さらに2009年度には、小学生で29.71%、中学生で52.54%、高校生で59.37%まで落ち込んでいましたが、今回の調査ではそこからさらに数ポイントの低下が見られています。

 こうした子供たちの視力低下に関し、その要因の1つとされるのが、テレビやスマートフォン、ゲームなどの視聴時間(スクリーンタイム)増加です。

 「スクリーンタイムが増えると、近視が進む」という指摘は、既に世界のさまざまな研究論文で行われてきました。そうした中、国立成育医療研究センターが全国の小・中・高校生を対象に実施した調査では、2020年1~6月の約半年間で、どの世代もスクリーンタイムが実に8割程度も増加していること、1日当たりのスクリーンタイムが4時間以上の子供の割合は、小学生で約3割、中学生・高校生では5割を超えていることなどが判ったということです。

 文部科学省が進めるGIGAスクール構想の下、オンライン授業の普及など、教育現場でもデジタル機器の活用が進む現在、子どもたちの視力低下を防ぎ健全な成長を促すために何ができるのか。

 7月18日の日本経済新聞に、「若者の視覚・聴覚、低下の恐れ 生活習慣改善し歯止めを」と題する記事が掲載されていたので、参考までに小欄で紹介しておきたいと思います。

 文部科学省の2021年度の学校保健統計調査によると、裸眼視力が1.0未満の割合は小学生で約37%。年齢が高くなるにつれて増加する傾向にあり、中学生と高校生では6割超を占めている。

 外遊びが減り、ゲーム機やスマートフォンなどを操作する時間が長くなった影響とされているが、不適切な生活習慣によって数十年後、目がよく見えない、耳が遠いといった人が高齢者の多くを占めるようになれば、社会的影響はあまりに大きいと記事は記しています。

 21年度からは小中学校で1人に1台、パソコンやタブレット端末を配って行うデジタル授業が本格的に始まった。今後さらに視力低下の傾向が進めば、緑内障や黄斑変性など眼病を発症する人が増えるリスクも大きくなると、専門家は懸念しているということです。

 一方、聴力の低下は、内耳にある有毛細胞が加齢や騒音などによって壊れることが原因となると記事はしています。難聴は60代後半から急増するが、毎日のようにヘッドホンやイヤホンで音楽を聴く人が若年層を中心に増えていることから、難聴になる年齢が早まるとみる専門家も多いというのが記事の指摘するところです。

 いったん難聴になると治す方法は限られている。WHO(世界保健機関)からは、「世界で10億人以上の若年成人が有害な聴音習慣により永続的で不可逆的な難聴となり、2050年までに25億人近くが難聴になる可能性がある」という報告もなされているということです。

 では、どう予防すればいいのか。東京医科歯科大学の大野京子教授によれば、子どもが近視にならないため(1)デジタル機器を操作する際は背筋を伸ばした正しい姿勢をとる(2)画面と目との距離を30センチ以上離す(3)20~30分に1回遠くを見る(4)できるだけ屋外に出る時間を確保する――などの対策を講じるよう勧めているいると記事はしています。

 一方、難聴の予防では、音量を上げ過ぎないこと、連続して長時間音楽を聴かないことなどを専門家は呼びかけている。いずれも子ども任せにせず、親ら周囲も目を配っていくべきことだというのが記事の見解です。

 年齢を重ねると、何十年にもわたって使い続けた感覚器が"経年劣化"するのは避け得ない。ただ、高齢者の多くが光や音を感じる大切な機能を失っていく事態を座視すべきではないと記事は話しています。

 確かに、朝夕の通勤・通学の電車の中でも、学生たちは一様に耳にワイヤレスのイヤホンを差し、スマホを繰りながらゲームやSNSに興じている風情です。6インチかそこらのスマホの画面を、一日何時間を集中して見つめているのが成長期の身体にいいはすがありません。

 現代の利器とはいえ、不適切に使用し続ければいずれ、生活の質を低下させてしまうことにもなりかねない。一方で対処法も明らかになっており、教育や啓発活動を通じて歯止めをかけていく必要があろうと結ばれたこの記事を、私も興味深く読んだところです。



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