各国の世論調査機関が加盟する「WIN―ギャラップ・インターナショナル」が行った国民意識に関する世論調査の結果が3月18日に発表され、いくつかのメディアに取り上げられています。
報道の多くでクローズアップされているのは、この調査において実施された「自国のために戦う意思」があるかとの質問に対し、日本では「ある」と答えた人の割合が10%と、調査国64カ国中で最も低い割合だったという部分です。
近隣諸国などからの「右傾化」の指摘を耳にすることの多い昨今のわが国ですが、こうした報道を見る限り、日本人の多くは(自ら銃をとり)自国を守ることに決して積極的とは言えなうようです。
さて、実際のところ、「国防」に関する日本人の意識は一体な辺にあるのか。
3月24日のYahooNews(Japan)では、軍事ブロガーとしてWeb上で活躍するdragoner氏が、今回の調査データが意味するところをもう少し掘り下げて読み解いています。
氏はこの論評において、(内容を分かりやすくするため)米英仏ロ中の5大国に日本とドイツ、韓国を加えた8カ国の調査結果を比較しています。
まず、「国のために戦う意思があるか」という設問に対し、「ある」と答えた人の割合ですが、先に記したように一番低いのは日本(10%)で、次いでドイツ(18%)、イギリス(27%)、フランス(28%)と続いています。
一方、元データをよく見ると、今回の調査では「戦う意思はない」、「わからない」という選択肢も設けられています。
そこで改めて、一般にはあまり報道されていない「国のために戦う意思はない」とする回答者の割合を見てみると、実は「戦う意思がない」と明確に答えた人の割合が最も多いのはドイツで、回答者の実に62%に及んでいるということです。次いでイギリスの51%、韓国の50%と(イメージ的には意外な)国々が名を連ねており、日本は43%と8カ国中の5位に過ぎないとdragoner氏は説明しています。
さらに、「わからない」と回答した人の割合について見れば、日本は47%で、27%の2位フランス、25%の3位アメリカを大きく引き離して断トツの1位。つまり、態度を決めかねている人が半分近くいるのが日本の最大の特徴だということになります。
この結果を、「平和ボケ」と評する声もあるでしょう。しかし、戦後70年にわたって争いのない時代を過ごした多くの日本人にとって、戦争が身近なものと感じられていないのは当然であり、それはそれで幸せなことなのかもしれません。
また、見方を変えれば、「わからない」と答えた人々が、国際社会の緊張感の高まりの中で、戦争を強く後押しする存在に変化していく可能性も十分に考えられるところです。
さて、この論評でdragoner氏は、むしろ今回の調査で深刻な状況が明らかになったのは、北朝鮮と対峙し準戦時下に置かれている中、「国のために戦う意思は無い」と明確に表明した人が半数を占める韓国ではないかとしています。
朝鮮戦争は国際法上いまだ休戦中であり、韓国は現在も徴兵制が存在する数少ない先進国の一つです。その国民の半数が、戦争になっても「戦わない」と宣言している現状は、日本以上に問題ではないかという指摘です。
その国が置かれた状況によって、この設問の意味(重さ)は大きく異なることでしょう。いずれにしても、「国のために戦う」という立場を明らかにしている人の割合ばかりに注目し、横並びで「よい」「悪い」の議論をしても、そこからは極めて一面的なものしか見えてこないのも事実です。
日本人は「自分の意見」を持たない、主張しないと、諸外国からしばしば指摘されています。しかし、この調査で態度を明らかにしなかった47%の日本人が、有事の際に「戦争」の「中身」を見て判断するとしているのであれば、この結果はある意味、日本人と日本の社会の成熟を物語っていると言うこともできるかもしれません。
戦争になったら(状況はともあれ)たぶん「国のために戦う」という人がいて、絶対に「戦わない」という人がいて、納得ができれば戦うかもしれないしそうでなければ戦わないという人がいる。
そうした多様な考えが社会の中に普通に混在できている日本の現状は、国際社会から指摘されているほどには危険な状況にないことを、この調査結果から改めて感じた次第です。
瓦礫の中にでも埋まってろ役立たず共w