MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2361 究極の少子化対策

2023年02月11日 | 科学技術

 人気のアニメ『ONE PIECE』の「ホールケーキアイランド」編には、北の海(ノースブルー)の海遊国家「ジェルマ王国」が科学力の粋を凝らして作った、兵士たちのクローン工場の様子が描かれています。

 ジェルマ王国の兵士は皆、遺伝子操作によって作り出されたクローンであり、工場内部の人工子宮内で育てられている。そのDNAは、5年間の成長期間を終えれば死をも恐れない20歳の優秀な兵士として機能するよう正確にプログラムされているということです。

 「どこかで聞いた話だな…」と感じた察しの良い人は、きっとジョージ・ルーカスが描いた映画『スター・ウォーズ』のシーンを思い出したことでしょう。

 この作品において、帝国軍の主戦力となっている白い戦闘服の集団「ストームトルーパー」は、とある賞金稼ぎ遺伝子を元に生産性向上のために成長を倍加させたクローン兵士。工場の人工子宮で生まれた彼らはお互いのことを「兄弟」と呼び、組織に忠誠を尽くすよう教育されているということです。

 さて、少子高齢化、人口減少が大きな社会問題として認識されている昨今ですが、とりわけ女性の出産年齢の高齢化などにともなう不妊治療が大きな技術的課題となっていることは広く知られています。

 そうした中、(クローン人間はともかくとして)安全な人工子宮の技術が確立されれば、冷凍保存された精子や卵子を利用して人工授精を行い、人工子宮内で一定の大きさの赤ちゃんにまで成長させることが可能になる。計画的な子育てができるようになるとともに、出産自体を不安に思う女性にとって「子どもを持つ」ことへのハードルが低くなることは言うまでもないでしょう。

 果たして、少子化に悩む先進各国に朗報は届くのか。1月6日の総合情報サイト『Pen Online』に、「未来の出産はこうなる?“人工子宮”施設構想のリアルな動画の衝撃」と題する記事が掲載されていたので、改めて内容を残しておきたいと思います。

 バイオテクノロジストのハシェム・アルガイリ氏(ドイツ・ベルリン在住)が人工子宮のコンセプト「エクトライフ(EctoLife)」の映像を公開し、各種メディアで話題になっていると記事は紹介しています。

 今回公開されたのは、アルガイリ氏が発案した人工子宮施設「エクトライフ」構想をビジュアル化したCG映像。プレスリリースでは、「理論的には感染症リスクのない環境の施設内で年間最大3万人の赤ちゃんを誕生させることが可能」と記述しているということです。

 成長ポッド(人工子宮)は2つの「バイオリアクター」と接続され胎児の命を育んでいく。ひとつは人工へその緒を経由して胎児に栄養素と酸素を供給し、もう1つは胎児が排出する老廃物を取り込むものだと記事はしています。

 胎児には心拍、体温、血圧、呼吸数、酸素飽和度などを計測するモニターが装着され、発育状況はリアルタイムでデータ表示される。このデータはスマホアプリに転送可能で親は胎児の発育を高解像度の映像で見ることができるということです。十分に胎児が成長した段階でボタンを押せば出産完了。管理された状態で、健康な赤ちゃんが元気に産声を上げるとされています。

 一方、このような「エクトライフ」構想は、生命倫理の観点から物議を醸している。中でも「エリートパッケージ」に対しては、異議を唱える声も上がっていると記事は指摘しています。

 例えば、(アルガイリ氏によれば)「CRISPR-Cas 9遺伝子編集ツール」を使用して人工子宮に移植する前段階の胚に遺伝子操作すれば、赤ちゃんの目の色、髪の色、肌の色、体力、身長、知能指数などをカスタマイズできるだけでなく、遺伝性疾患を修正することさえも可能とされる。このパッケージを利用すれば、健康で知能の高い人間を自在に生み出すことさえできるということです。

 記事によれば、アルガイリ氏は「エクトライフは、安全で痛みのない方法でストレスのない出産を提供するもの。実現すれば早産や帝王切開、分娩時の合併症は過去のものとなる。そして日本、ブルガリア、韓国など、深刻な人口減少に悩む国々にとっての解決策になる」と話しているということです。

 現在の感覚では、「こんなことが可能になって良いのだろうか?」という意見が多いだろうが、しかし理論というのは時代とニーズによって変化するもの。今後、他の医学者・科学者に様残に検証され、「実現可能」と判断される可能性もあると記事はしています。

 生殖医学は「神の領域」と言われていますが、技術の進歩が「時を待たない」ことも歴史が証明しています。社会や経済を維持していくために本当に必要となれば、どこぞの国家が威信をかけて技術開発を進めていくかもしれないなと、記事を読んで改めて感じたところです。

 



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