MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2107 ジェネレーションZのリアル

2022年03月08日 | 社会・経済


 「Z世代」(Generation Z)とは、米国やヨーロッパの先進国、日本などで概ね1990年代半ばから2010年代初頭までに生まれた世代を指す言葉です。

 子供の頃にIT革命を体験した「Y世代」(概ね1980年代初頭-1990年代半ば生まれ)に続く世代として「Z」と呼ばれているこの世代は、生まれながらにしてデジタルネイティブである人類初の世代。デジタル機器やインターネットが生まれた時から当たり前のように存在し、パソコンよりもスマートフォンを日常的に使いこなしてきた(いわゆる)スマホ世代としても認識されています。

 ネットの情報などを見る限り、中でもジェネレーションZは、ジェネレーションXやミレニアル世代などの他の世代グループとは違う、独特の価値観や行動様式を持つとされています。彼らは今後、世界で最も影響力ある購買層になるとみなされているため、世界のマーケットはその動向から目が離せない様子です。

 特に、米国のZ世代の動きに注目する市場関係者は多いようです。米国のZ世代はおおよそ6700万人。同国の全人口の2割以上を占め、これからのDXの担い手になる世代ともされています。人口構成では、他の世代よりも白人の占める割合が52%と低いのが最大の特徴で、ヒスパニックが25%を占めるなど、人種や生育環境、考え方の多様性が、彼らを理解する手掛かりとしてまず欠かせないようです。

 さて、そうした米国のZ世代に関連して、2月17日のForbes JAPANに「米国の若者死亡率、独仏など他の高所得国の2倍に」と題する記事は掲載されているのが目に留まりました。記事によれば、このZ世代を中心とした米国の若者は、25歳の誕生日を迎えられる確率が他の高所得国の若者よりも(かなり)低いことが、最新の研究報告書で明らかになったということです。

 コロラド大学ボールダー校の社会学教授リチャード・ロジャース氏らの研究によれば、米国の15歳から24歳の若者が死亡する確率は、ドイツやフランスなどの国々の同年齢層に比べて約2倍。乳児死亡率は、他の高所得の国々より約3倍高いと記事はしています。

 研究リポートはその原因に、高い貧困率や、社会に蔓延する暴力、社会的セーフティネットが相対的に不足していることを挙げています。報告書では、死亡した15歳から19歳までのティーンエイジャーのうち、4割の死因が自殺や殺人だったことが明らかにされている。その多くが銃器が絡んだケースで、残りの6割の半分(つまり全体の3分の1)は交通事故死や中毒死、溺死などの不慮の事故。こうした結果は、成人の死因1位が病気であることと対照的だと記事は指摘しています。

 また、こうした状況には、州によって大きな差があるのも米国の特徴だということです。(貧困層の多い)南部のアラバマ州、アーカンソー州、ミシシッピ州、サウスカロライナ州、ルイジアナ州、テネシー州などは、若者の死亡率が特にも高いとされています。

 加えて今回の研究報告書は、若くして死亡する確率がより高いのは黒人とヒスパニック系で、貧困生活者や、親が大卒でない人が早く命を落としていることを明らかにしたと記事は綴っています。報告書によれば、親たちが結婚しており、二人とも揃っている家庭で育った子どもは若いうちに死亡する確率が最も低いということ。そうした家庭はたいてい共働きで高所得であり、子どもの教育にも熱心だということです。

 一方、「他の先進国、とりわけ欧州では、所得格差が米国ほど深刻ではない。また、社会的セーフティネットもより充実しており、社会面や教育面で親たちを支援する仕組みや、家族向け医療制度も整っている」と報告書は指摘していると記事は言います。新自由主義的な政策の下で、格差を是認してきた米国政府。トランプ政権を生んだ経済環境による米国民の分断は、こうした形で社会に歪みを生み出しているということでしょう。

 さらに著者らは、新型コロナのパンデミックが、若者の死亡率にさらなる影響をもたらしている可能性を懸念していると記事は指摘しています。

 コロナ禍は、若者のあいだのメンタルヘルス問題や薬物乱用などに加え、対人サービス業種での失業やエッセンシャルワーカの離職、あるいは適切な保育施設を利用できずに困っている親たちといった数々の問題を生んだ。さらに、感染症のパンデミックで14万人以上の子どもたちが親を失っており、影響はさらに広がるだろうと筆者らは話しているということです。

 さて、この記事だけを読むと、「米国の若者は大変だ」「私たちは日本に生まれてよかった」とつくづく感じてしまうのですが、それで「よかった、よかった…」というものでもありません。

 日本に住む15~39歳の若者の死因の第1位が「自殺」であることは広く知られています。先進国の集まりであるG7(日本/フランス/米国/ドイツ/カナダ/英国/イタリア)でも、この世代の死因第1位が「自殺」なのは唯一日本だけ。例え銃器で撃たれて死ぬことはなくても、若者が自ら死を選ばなければならない国が暮らしやすいものであったり、そこに暮らす若者が幸せであったりするわけはないでしょう。

 10代の自殺の原因として最多は「学校問題」で4割を超えています。続いて「健康問題」と「家庭問題」がそれぞれ3割弱。すべてが日常生活の中での出来事に起因していると言っても過言ではありません。私たちもこうした現状をしっかり受け止め、孤独と不安の中で暮らす日本のZ世代に(もう少し)光を当ててみる必要があるのではないかと、記事を読んで改めて感じたところです。



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