
ランドセル用の合成皮革などを製造するクラレが毎年実施している「新小学1年生のなりたい職業」調査で、晴れて2020年のトップに輝いたのは、女の子では1999年の調査開始以来22年連続で「ケーキ屋さん・パン屋さん」(26.0%)でした。
男の子では(こちらも)22年連続で「スポーツ選手」(18.8%)でしたが、今年は9年連続で2位だった「警察官」が過去最高の15.1%と健闘し、1位との差が3.7ポイントまで縮まったということです。
一方、新小学1年生の親が子どもに就かせたい職業では、女の子は1位看護師(17.9%)、2位は公務員(11.9%)、3位薬剤師(7.9%)、4位医師(6.8%)、5位医療関係(6.0%)など医療系と公務員が人気です。
また、男の子では、公務員(19.8%)が(2009年の1回を除き)確固たる1位をキープしており、2位の医師(8.6%)を大きく引き離しているということです。
やはり子を持つ親としては、いつの時代にも可愛いわが子には(食いはぐれの無いように)手に職をつけてもらうか、「一生安泰とされる」公務員でもなってもらえれば安心と考えるのも郁子なるかなというところでしょう。
一方、人口構成の少子高齢化に伴い新卒者を中心に雇用環境の売り手市場化が進む中、民間企業における待遇改善を前にここ数年、公務員採用試験の競争倍率は低迷を続けてきたのも事実です。
しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大の影響による企業の業績見通しの悪化への懸念から、今年は公務員志望者が再び増加の気配を見せているようです。
4月22日の日本経済新聞(朝刊「企業の転職希望者 官公庁に興味8割」)は、人材サービス大手のエン・ジャパンが今年3月に実施した転職希望者を対象にした調査で、民間企業から官公庁への転職に興味があると答えた人が8割を超えたと報じています。
その理由としては、「社会貢献がしたい」との回答が6割を占めているということであり、民間企業経験者などの外部人材の募集が相次ぐ中、社会貢献ができる安定した転職先として官公庁の存在感が高まっていると記事はしています。
転職希望者に官公庁への転職に興味があるか聞いたところ81%が「ある」と答え、その理由は「仕事を通じて社会貢献がしたいから」が57%と最も多かった。次いで「培った能力・スキルを社会に還元したいから」(46%)、「安定した収入を得たいから」(43%)と続いたということです。
また、官公庁で働いた経験者にその魅力を聞いたところ、こちらも「仕事を通じて社会貢献ができる」(56%)と最も多く、以下「安定した収入が得られる」(49%)、「影響範囲の大きな仕事を手掛けられる」(37%)と続いたとされています。
一方、官公庁への転職に「興味はない」と答えた人(全体の18%)に理由を聞いたところでは、「官公庁の仕事に魅力を感じないから」が44%でトップ。「年齢的に難しいと思うから」(37%)が続いたと記事は伝えています。
さて、例年であれば新卒者向けの多くの企業説明会が開催され、着慣れないリクルートスーツに身を固めた学生たちが(いかにも「就活中です」という感じで)オフィス街を頼りなげに歩いている姿を見かけるようになるこの時期ですが、確かに今年はそうした状況は大きく影を潜めています。
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた政府の非常事態宣言を受け、大がかりな合同企業説明会は軒並み中止され、企業も面接を控えたり採用自体を見送ったりするケースも出てきていると聞きます。
そうした中で徐々に広がりを見せる公務員人気に関し、株式会社UZUZ専務取締役の川畑翔太郎氏が3月16日の東洋経済onlineに寄せた論考(「「公務員になれば一生安泰発想は改めるべきだ」)において、公務員になることのメリットとデメリットについて論じています。
新型コロナの影響で新卒を中心とした若者にとっては苦戦を強いられる就活環境となる中、「何となく公務員」を目指す人が増えるのではないかと、氏はこの論考に綴っています。
何となく仕事を選んでもいいし、公務員として働くこともいい選択だと思う。しかし、公務員を目指すことのメリットしか知らず、デメリットを考えずに目指してしまうことは避けたほうがいいというのが氏の考えるところです。
公務員の人気の理由は、ざっと挙げると次のようなものではないかと川畑氏は言います。
・安定した収入(サラリーマンの平均水準よりも高い)
・法律に守られた雇用(懲戒免職にはそうそうならない)
・(特に地方公務員では)地域に根ざした公共性の高い仕事ができる(仕事の成果を実感しやすい)
・ワークライフバランスが比較的取りやすい職場が多い
・地元で地方公務員になれば転勤がない などなどです。
しかしその一方で、公務員を選択すするにはデメリットも知っておかなければならないと氏はこの論考で説明しています。
例えば(具体的には)、
・人口が減ることで、公務員の仕事のニーズが減り、雇用も減る
・人口が減ると税収が減るため、生産性の向上が求められる(従来の事務的な仕事が減る)
・自治体の統廃合が進む(雇用が減る)
・高齢化が進み介護福祉のニーズがより一層高まる(職種転換ニーズの増大)
などなどがあるということです。
これら訪れる社会の変化をいくつか想定するだけで、現在、公務員に抱いている「安定」というイメージは盤石なものとは言えないというのが川畑氏の認識です。
「安定」を求めて公務員を目指すのもそれはそれでかまわないけれど、公共性が高い公務員という性質上、社会や地域の変化によって仕事の内容も変わっていくことを考慮しておかないと、「こんなはずではなかった」という事態も招きかねないということでしょう。
大きな目標がなくても「なんとなく」なれるのが公務員かもしれませんが、これからの社会を公務員として生き抜いていくためには、それなりの覚悟と根性が必要だということかもしれません。
公務というのはまさに「やりよう」で、公務員としての仕事や生活を充実したものにしていくのも、不本意なものにしていくのも本人次第といったことになるのでしょう。
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