気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 18

2021-12-26 00:45:00 | ストーリー
beautiful world  18





12月に入り予測通り私は多忙極まっていたけれど
ようやく落ち着いた今日は会社の忘年会

「仕事収めまであと2営業日!皆さん頑張りましょう!取りあえず今日はお疲れさまでした!では!カンパーイ!!」

皆で乾杯をした
やっと乗り越えた…

来週は残務処理と会社の大掃除でやっと年末年始の休みに入る

周りのみんなは談笑しながら実家の帰省話をしている
私は逆に陽太さんとの同棲のために家を出ることを両親に話さないといけないと考えていると

正面に座っている葉山さんが話しかけてきた

「お疲れ。」

「お疲れさまでした(笑) 葉山さんはご実家暮らしなんですか?」

「実家は鎌倉。」

「近いですね!ならいつでも帰れますね(笑)」

「…まぁ。正月の年イチしか帰らないけど。」

近いのにそんなに帰らないのは家庭に事情でもあるのかな

でもそこは触れないでおこう…

隣の席の先輩の関さんが
「田中ちゃんは?」と聞いてきた

「ウチは元々実家暮らしなので(笑)」

「違う違う(笑) 今日イブじゃん?この後デートでしょ?」

「え!?ど、どうしてですか!?」

「とぼけちゃってぇ(笑) 彼氏できてるんでしょ~?最近かなり綺麗になっちゃって(笑)」と私の頬を軽くつついた

あ…
チラッと葉山さんを横目で見た

葉山さんは聞こえていないように知らん顔で料理をお皿に取っていた

「あはは… まぁ、そうですね(苦笑)」

「ほらぁやっぱり!だと思ってたんだよねぇ!(笑)」

関さん、ちょっと声が大きすぎますっ
でも周囲の人達は騒がしく雑談していて聞こえていない様子だった

「ねぇねぇ、」
私に耳打ちしてきた

「(まさかだけど相手は葉山じゃないわよね?)」

「違いますっ!」
私も大きな声が出てしまった

「もしかしてそうかもってちょっと思ってた(笑)」
全力否定した私に関さんが笑った

「なんだぁ?なにが違うんだー??」と遠い席から少し酔った課長が聞いてきた

「なんでもないでーす(笑)」
関さんが応えてくれた

「で?で!?どんな彼氏なの?どこで出会ったの?そういう話聞くの私大好きなの♡」

「あ〜、えーっとぉ…」

「おい。田中さん困ってんだろ。もういいじゃん。」

向かいの葉山さんが話を切ろうとした

「何?ヤキモチ?ダッサ!(笑)」
関さんがニヤニヤ顔で返事をした

「はぁ!?ちげぇわっ。」
葉山さんがムッとした表情になった

「ほんっと、あんたってなんでいつもそんなに感じ悪い物言いするの?」
関さんもムッとしてビールを飲み干した

あぁぁっ… 
気まずい…!!

「あー… えっと、、関さんビールのお代わり頼みますね(苦笑)」

田中ちゃんありがと♡あんた(葉山)に田中ちゃんはもったいないからね。」

「は!?」
葉山さんが眉間にシワを寄せた

ちょっとちょっと、ほんとやめてくださいよぉ!
これじゃ本気の喧嘩になっちゃう!


「だってあんたやたら田中ちゃんに当たりキツイじゃん。」

「んなことねぇよっ!」
声を荒げた

ほんともうやめてー!!(泣)
「あっ、あの、ほんとそんなことないですからっ!(苦笑)」

周辺の先輩方が一斉にこっちを向いた
「またあの二人やり合ってんのかぁ?誰だぁ?あそこくっつけたのは!」

「まぁまぁ(笑)」
関さんの隣の先輩がなだめに入ってくれた

なに!?
こんな小競り合い、頻繁にあることなの!?

嘘でしょ…

そういや二人が会話してるとこ見たことない…



―――


忘年会も終わり
店を出ても二人は何やらブツブツと言い合っていた

あの二人があんなに仲が悪いなんて知らなかった…

まさかあんな言い合いになるなんて思いもしなかった

一人っ子だから喧嘩とかしたことない見慣れてないし

恐いよ、ほんと…

あぁ 疲れた…
「はぁ~」

他のみんなは気にする様子もなく駅まで談笑しながら歩いている



そろそろ陽太さんに忘年会が終わった報告の連絡をしなくちゃ

私はスマホを取り出した時

誰かが私の肩をポン触れた
振り返ると


「えっ!!陽… 」

「シッ!(笑)」


陽太さんだった
腕を引かれ細い横路に入っていった

他のみんなは私に気づかず
そのまま駅まで歩いていった


「え?えっ!?なんで...」

陽太さんは早足で歩きながら振り返り
突然消えた私を誰かが気づき探しに来ていないことを確認し足を止めた


「迎えに行くからって言っただろう?店の場所も聞いてたし(笑)」

「でも、ここは遠いから来なくていいって、、」

「今日は特別な日だからね(笑)」

今夜は二人で迎える初めてのクリスマスイブ

「ずっとこの寒い中待っててくれてたの?」

「寒かったけど今はこうして奈生がいるから温かい(笑)」
私の手を握った

そういう彼の手は凄く冷たく冷えきっていた

一体いつから待ってたの?


「もう、嘘つきですね!こんなに冷たくなってるじゃないですか(苦笑)」

「そんなことはないぞ?心はメチャクチャ温かいんだ(笑)」


満面の笑みで私に笑いかけた


ーー キュンとした…

背伸びして陽太さんにキスをしたら
眉尻を下げて彼は嬉しそうに微笑んだ

「わっ(笑) 早速奈生からクリスマスプレゼントをもらってしまった!(笑)」 

「違いますよぉ〜プレゼントはちゃんと別にありますからね?(笑)」

「ほんとに?今のがプレゼントだろう?」
と微笑んでまた手を繋いで歩きだした

「そんな訳ないですよ(笑)」

「じゃあまだ他にもあるの!?今年はのクリスマスはなんて贅沢なんだろう!(笑)」
大袈裟に言いながら嬉しそうに笑った

「こうして奈生とクリスマスを過ごせるだけでも贅沢なのに(笑)」

気づくと彼の手は本当に温かくなっていた…



ーーー


駅にはもう社員の姿は見えない

お泊まりの準備物が入ったバッグを駅のコインロッカーから出すと

陽太さんが当たり前のように自然に持ってくれた

そして一緒に電車に乗り彼の家に向かった




電車を降りといつものように手を離そうとしたら私の手を強く握った

「もう離さなくていいんだ。」

心がふと軽くなった…



ーーー


彼の部屋に到着して荷物を置いた

「ケーキ買ってるよ(笑) 寒いけどほんとに行く?」

「行く(笑)」


ケーキを持って展望所に登った

風が無くて良かったねと言いながら彼はロウソクに火をつけた
プリンを買ったら付けてくれるプラスチックの小さなスプーンを取り出した。

「ごめん、これしか持ってきてないんだ(苦笑)」
彼は困った顔をして苦笑いした

「あはは(笑) 良いですよ♡」

「んじゃあ、メリークリスマス(笑)」


お互い笑いながら一口分 ケーキをすくって口に入れた

恋人と過ごすクリスマスは初めて

むちゃくちゃ寒いけれど心は温かくて
とても幸せを感じる…


「あ!忘れる所だった(笑)」
彼はリュックからカメラを取り出した

「記念 記念(笑)」


彼は私にレンズを向け
幾つか写真を撮ってくれた

私もカメラを借りて陽太さんを写真に納めた


今夜は星が見えないねと言う私に
陽太さんは星は奈生の瞳の中にあると微笑んだ

時々ロマンチックなことを言うから照れる…


そしてまたリュックをゴソゴソを覗いて
中から赤いリボンがついた大きな袋を取り出した

「これ、クリスマスプレゼント(笑)」

「わ…ありがとうございます...見ても良いですか?」

「ん(笑)」


淡く優しいピンクベージュのストールが入っていた
柔らかい… これカシミアだ!

「嬉しい…ありがとうございます…」

「なんだか奈生みたいに優しくて柔らかくて温かいから…選んだ(笑)」

うっ…
恥ずかしくなる

あっ、私も…

「あの…私も陽太さんに…」

私はマフラーをプレゼントした
実は手編み
手編みだということは言わないつもり…

「もしかしてこれ編んでくれたの?」

「えっ!」

なんでわかっちゃったの!?
市販の物と遜色ないレベルで編めたと思ってたのに!


「以前、“準備してる”って言ってたからもしかしてそうかなって(笑)」

うわぁ~っ!
手編みなんてすっごく重い女だって思われる!

でも編み物は昔からそれなりに得意だったから
私が編んだ物を使って欲しいと思ってたけど…

「奈生?」

「私のは手編みで…すみません…」

「どうして?手編みを貰ったの初めてで凄く嬉しいよ(笑) ありがとう…」

「…手編みの物なんて重くない?」

「どうして?(笑)奈生が僕のために編んでくれたのが嬉しくないはずないだろう?ずっと大切にするから。」

陽太さんは柔らかい手触りが好きなのを知っていたから実は私もカシミヤの毛糸で編んだものだった

深みのあるエメラルドグリーンのマフラー
きっと陽太さんに似合うと思ってた


「早速着けてみる(笑)」
嬉しそうに首に巻いた

「柔らかいなぁ…(笑)」
嬉しそうに微笑んだ

やっぱり柔らかい肌触りの物、好きなんだ(笑)

「私も早速ストール使わせてもらいます(笑)ふふっ(笑)」

「似合ってる。良かった(笑)」

「陽太さんも(笑) ふふっ♡」

「ははっ(笑)」


なんて幸せなクリスマスイブなんだろう…





――――――――――


beautiful world 17

2021-12-04 20:42:00 | ストーリー
beautiful world  17





待ち合わせた駅で奈生の姿を探した

電話をかけると
『陽太さんはもう着いた?私は着いてるよ(笑)』
といつもの明るい奈生の声だった

「どこだ!?」

『あっ、見つけた!ここです!(笑)』

手を振っている奈生の姿を見つけた

――奈生!

「お疲れさまでした!平日に会えるなんてなんだか新鮮(笑)」

「そう、だね…」

いつもと変わらない奈生だった

今直ぐにでも聞きたい
でも…

「友人にオススメしてもらったお店なんですよ~楽しみ!ふふふっ(笑)」

隠している理由がきっとあるはずだ

「陽太さん?ここです。」

「あっ、あぁ、」


今どきの洒落た創作料理の店だった

なんだか疲れてる?と聞いてくる君はいつもと同じだ
僕もいつものようにそんなことないよと応えた

大人になれば人それぞれ人生経験の中で他人には言えない過去や事情のひとつやふたつあるもんだ

でも僕ら二人に関わることだから知りたい
できれば君から話して欲しい…


「何をすれば陽太さんの元気が出るでしょうか。一緒に写真撮りに行くにも今月はお互いに難しいですしね?」

「(クリスマス)イブの日は一緒に過ごせるだろう?」
 
奈生はイブの金曜は会社の忘年会があるからその後なら大丈夫と笑顔を見せた

料理が出されるたび奈生の瞳はキラキラと輝いた

今こうして僕に朗らかに笑いかけてくれているこの笑顔に嘘はない

僕は君が隠していることを知っていると打ち明ける必要はないのか?

でも…

「陽太さん、イブの夜はどこかに行きたいですか?(笑)」

「それは僕からの質問(笑) どこ行きたい?」

「私は… あの展望台が良いかな(笑)」

展望台?
あぁ、近所のあの小さい展望所のことか

「あんなとこ?」

「あんなとこって!」スネた表情になった

スネた顔をしてブツブツと独り言のように
「私にはファーストキスの大切な思い出の場所なのに…」と呟いた

あぁ そうだったな…(笑)

「じゃあ寒いけどあそこでケーキにロウソク立てようか(笑)」

「ふふっ(笑) きっとめちゃくちゃ寒いけど(笑) 陽太さんへのクリスマスプレゼント、今準備してるんですよ(笑)ふふっ」

…奈生

「奈生からのプレゼントならなんでも嬉しい(笑)」

「…うん(笑)」
頬が少しピンク色に染まった
君の笑顔はキラキラして綺麗だ…

君は自分は太ってるからとか
もっと目が大きかったらとか
そんなどうでもいい小さなことを気にしているけれど

僕にはそんなこと全然気にならなくて
ただ目の前にいる君が心から美しいと感じてる

君が僕のことを大好きだってことも感じているし
僕も君が大切な存在だということは揺るがない

今 君が何のためにごまかし隠していても
僕のこの気持ちは変わらない

だからこそ僕はもう知っていると伝えた方がいいのかもしれない

きっと君の心は今より軽くなる
楽にしてあげたい…



―――

店を出ると冷たい空気に包まれた
寒いねと微笑む彼女の手を握った

「陽太さんの手は大きくて温かくていつも安心します(笑)」

そう言う君の手も僕の心を温かくする

「なんだか雪が降りそう...ほら!こんなに空気が冷たい(笑)」
白くなる息を指さした

奈生は時々子供みたいに無邪気なことを言う
そんなところも全て愛おしい

だからこそ…

「今日ね、学校を出る時 同僚の先生に声をかけられたんだ。」

「ええ...?」

「鈴木先生って言う人なんだ。」

「はい。」

奈生の声が少し沈んだように聞こえた
僕は足を止め奈生に向き合った

「でね。その鈴木先生が僕と奈生が一緒にいる所を見かけたって言ったんだ。」

奈生の驚いた表情が次第に曇っていく

「奈生… 君はいつから僕のことを知っていた?」



奈生は次第に涙目になっていった
僕の胸はズキズキと痛くなる

「どうして黙ってた。」

「ごめんなさ…」
声が震えていた

「奈生。誤解しないで欲しい。僕は君を責めてる訳じゃない。ただ理由が知りたいだけなんだ。」

奈生の冷たい頬に手をあてた

「ごめんなさい…」
ポロポロと涙を流しだした

「なぜ謝る?泣かないでくれ…泣かせたい訳じゃないんだ。」

「……かった」

「え?」

「気持ちを…拒否… されるって…思って… 恐かった」

拒否?
僕が 君を?

「そんなことする訳ないだろう(笑)」

「…先生が転任してきたあの日からずっと、ずっと好きでした…」

―― そんな…

だったらもう9年近いじゃないか
そんなにも長く一途に想ってくれていたってことなのか?…

「そうか… 」
あの頃の僕は元彼女の舞とまだギリギリ付き合ってた頃だ

僕が今の学校に転任して少し経った頃
舞は僕に別れを告げ日本を発った…

奈生が顔を見上げた
「黙っていて… ごめんなさい…」

奈生…

「でも奈生からのアプローチ、全っ然無かったなぁ(笑)」

「え…?」顔を上げた

「ほら、バレンタインデーの日とか?僕なんか義理以外貰ったことなかったぞ(笑) まぁ、それは今でも同じだけどな(笑) 鈴木先生なんか今でもめちゃくちゃチョコ貰ってる(笑)」

「私は早見先生の方が格好良いって思っていたしずっとずっと…好きだった…」
そう言ってまたうつむいた

「ずっと好きだったなら なんでチョコくれなかった?(笑)」

「だって…」困ったように口ごもった

「“だって” なんだよっ!(笑)」
両手で頬を挟んで顔を覗き込んだ

「渡さなかったから…今があるんだよね?」

「えっ…」

…あぁ、そうか
そうだな…

「ん~~っ!じゃあ許す!(笑)次は欲しい!約束だよ(笑)」

「先生… 」またポロポロと泣き出した

「今の僕は君の先生じゃないだろう(笑)」

「あっ、あの、」
スマホを取り出し僕に画像を見せた

「これをずっと見てました…」

これは…
制服を着た奈生と僕が一緒に写った卒業式後の画像だった

今にも泣きだしそうな目で笑顔を作っている奈生と
そんな奈生の気持ちを微塵も知らない笑顔の僕の姿がだった


――奈生との接点は本当にあったんだ…

…胸がジンとなる


「御守りみたいにずっと持ってました...早見先生が私にくれた言葉と。」

「僕なんて言った?」

「“卒業おめでとう。幸多き人生になりますように” と。早見先生のその言葉通り 今とても幸せです。」

また奈生の目からポロポロと涙が落ちてきた

きっとこの時 奈生に告白されていたとしても
僕は生徒の奈生の気持ちを受け取ることはしなかっただろう

高原で出会った時その事を知らされたとしてもきっと同じだった

“気持ちを拒否されるって思って恐かった”

だからずっと隠してたんだな…

「…また君と出会えて 僕は本当に幸せだ…(笑)」

また手を繋ぎ歩きだした
時々 グズッと鼻をすする音が聞こえる

ほんと子供みたいだ(笑)


このまま
帰りたくないなぁ…

敢えて人通りの少ない遠回りの道を選んで歩く

ずっとこのまま君の傍にいたい
そして…

―― 君と夫婦になりたい

「話があるって僕言ってたよね。」

「ん…」

「僕ら付き合って三ヵ月だな。」

「はい。」

「まだ三ヶ月… 早いかもしれないけど。僕と一緒に暮らさない?」

「嬉しい...」

――え?
OKってこと?

「…じゃあ」

「私も一緒に暮らしたいです…(笑)」
奈生の潤んだ瞳はキラキラしていた

「ん、一緒に暮らそう(笑)」

奈生を強く抱きしめると
空から雪がふわふわと僕らの上に舞い落ちてきた


「やっぱり降ってきた(笑)」

「この冬の初雪だな(笑)」


そしてクリスマスイブに

プロポーズしよう…






―――――――――


beautiful world 16

2021-12-02 15:47:00 | ストーリー
beautiful world  16






奈生と付き合い始めて3ヶ月

明日から12月
今年 最後の月

街はクリスマス仕様の街灯や飾り付けに変わり
時々クリスマスの音楽も耳にするようになった

奈生との交際は変わらず順調だった――

毎日メールをし 時々電話をする

奈生と付き合うようになって
初めてビデオ通話というスマホ機能を使うようになっていた

やっぱり声だけより顔が見たいからな!

ビデオ通話って本当に近くにいると感じられる
でもその画面の奈生の頬には触れられない

それがもどかしくて
より一層 会いたくて恋しくなる時もある

最近は奈生の仕事が忙しくて直接会う機会が減っていた

今でも時々気になるのは奈生の職場の葉山だった

葉山は毎日会社で奈生と会っていると思うと
やっぱりモヤモヤする

あれ以来 お互い葉山の事には触れていない

でも僕の中ではずっとあいつが気になっていた…


「奈生。今日も仕事忙しかった?」

『うん、月末だから特に(苦笑)』

「職場で、その…忘年会とか、やっぱりあるよなぁ。」

『毎年同じ店でやっていますね(笑)』

もちろん葉山もそこに参加するだろう

「そっか。忘年会の夜、迎えに行こうか。」
酒に弱い君と葉山が一緒だと思うだけで気になる

『え?そんな、遠いし、』

「僕が行きたいんだ。」

『陽太さん、もしかして今 寂しいんですかぁ?(笑)』と奈生が冗談ぽく言った

「寂しいに決まってるだろう(苦笑)」

こんなにも僕は
素直に気持ちを言葉にするようになっていた

『私もです(笑) えへへ(笑)』
照れて笑う君は今も変わらず本当に可愛い

付き合い始めた頃よりずっと
君を好きになっていると実感する


一緒に暮らしたい――

日々少しずつその想いが積もっていた

「奈生… 大事な話があるんだ。」

『なんですか??』

「電話じゃなくて会ってから話すよ(笑)」


―――


部活が終わり生徒を全員学校から送り出した
今夜は平日だけど食事をする約束をした

それは大事な話をするためだ

待ち合わせた駅に行くには1時間近くかかるだろう
早く机の上を片付けて向かわないと約束した時間には間に合いそうもない 


「早見先生、ちょっといいですか?」

鈴木先生が声をかけてきた

「この後予定があるので、今度じゃダメですか?」

「じゃあ手短に。」

廊下は声が響くからと外に出た


鈴木先生はたまたま休日に僕を見かけたと話した
「早見先生はいつから田中と付き合ってたんですか?」

――えっ…
奈生のことを知っている…?

「どうして…鈴木先生が知ってるんですか…?」 

「二人が一緒に歩いてるところを見かけまして。田中は僕が担任していたクラスの生徒だったんですよ。」
 
――は?

「ここの卒業生だったんですか?」


――どういうことだ!?
そんなこと奈生から一言も聞いていない

「まさか知らなかったんですか?早見先生がここに来た時は田中は在校生でいましたよ。でも教科担任じゃなかったらわからない…か…」

「…ええ」
頭が混乱してきた

「本当に知らずに付き合ってたんですね…」

「…はい...全く」

――じゃあ僕のことを奈生は高校生の頃から知ってたことになる


「しまったな… 内緒だったのか。余計な事を言ってしまった。あっ、もう田中も成人してますし僕は二人の恋愛にどうこう口を挟むつもりは全くないですからね(苦笑)」


――奈生は何故それを隠してたんだ…


「早見先生…」


――いつも不自然に駅周辺を気にしてたのも隠していた事と関係していたのか?

「すみません…僕、もう、行かないと…」

どうしてずっと隠してた?
隠す必要なんか何もないだろう?


気付いたら僕は駅まで全力で走っていた

彼女の笑顔がフラッシュバックする

隠さなければいけないような事ってなんだ?

なぜ?
なぜ!?


奈生――





―――――――――――――

beautiful world 15

2021-11-24 22:22:00 | ストーリー
beautiful world 15




今日の予定は昼までは柔道の稽古
稽古が終わり飯を食ってから一旦風呂に入るために帰宅して
それから家電屋に行く予定を立てていた

なのに今…
 【奈生ちゃんが僕のウチでシャワーを浴びている】

まさか今日こんな急展開が起きるとは全く予想もしていなかった

この状況に
心の動揺が激しい

「あ…!」

“アレ”が無い!

もう何年も使う機会がなかったんだ
当然持ってるはずがない

まさか今日 突然必要になるとは

彼女がシャワーを浴びている間に買って帰らないと

僕は一番近いドラッグストアに急いで向かった



―― 奈生ちゃんの純粋で無邪気な笑顔が脳裏に浮かぶ


性急すぎた?
それとも君は不本意なのに
僕が強引に合意させてしまったとか?
もう一度 君の意思を確認するべきなのか?

あぁ 今日の僕はずっと走ってるな…


ーーー


部屋の鍵を開けると静かだった
もうシャワーの音はしていない…

もしかしてもう出てるのか...?


紙袋を取り出した
まずはこれを隠さないと…

「どこに行ってたんですか?」
彼女が写真の部屋から突然出てきて驚いた

大きくてダボついた僕のTシャツにジャージの裾を巻き上げている

着てるのは普段僕が着てる服だけど
奈生ちゃんが着るとなんかちょっと…

エロい…


直視できないまま然り気無く紙袋をジーンズの後ろポケットにねじこんだ
飲み物を買ってきたとスポーツドリンクが入った袋を見せた

「急いで買ってきたんですか?(笑) 汗、凄いですよ?(笑)」

「も、もう一回汗流す、よ、」

着替えを取りに寝室に入り
ポケットにねじこんだ紙袋から少しへこんだ箱を取り出して中を開けた

これを使う時が来たのか…

枕の下に入れた


ドクドクと心臓がうるさい!
これは大会の試合前なんかよりずっと緊張してる

なんでもない平常なフリをして着替えを持ち寝室を出た
「ほんと今日は暑いなぁ…(笑)」

脱衣所のドアを閉めた


落ちつけ心臓!

初めての体験になる彼女を
何年もご無沙汰のこの僕が…

不安もあるけれど
彼女を想う気持ちは

今日のあの男との出来事で
より強くなった



ーーー


ドキドキがずっと止まらない
また顔が熱くなってきた

長年憧れていた大好きな人にこんなみっともない身体を全部晒してしまうと思うと

羞恥心と恐怖と緊張で逃げ出したくなってきた

いいなんて返事するんじゃなかったかもしれない


先生がシャワーから出てきたら直ぐなの?
普通、なにか暗黙のルールとか合図みたいな事とかあるの?

私は何をすればいいの!?

全くわからない…
こんなこと25にもなって今更友達にも聞けないよっ!


「ぅん~~っっ!!」
スマホを握りしめた

「なんだ!? どうした!」
驚いた表情で先生が立っていた

「検索… 」する間がなかった…

「検索?」

こういう時なにしたらいいのかなって、何も検索できなかったことを話すと先生は愉快そうに笑った

笑ってくれて逆に緊張がほぐれた…(苦笑)


「いろいろ考えてくれたのか(笑) 実は僕も考えてたけど…もう考えないことにする。」


先生…

「だから今度は恐がらないで。」

「え?」

フッと抱き上げられた
でも今度は何故か恐くない…

「先生…?」

「“陽太”(笑)」

「陽…太さん」
初めて先生の名前を口にした…

「僕も奈生って呼んで良い?」



寝室のベッドに降ろされた
…ドクン ドクンと鼓動を感じる

「恐くてやめたいなら今しかない。本当に良い?」

大好きな人の優しい微笑みが
私の不安が消していく…

「うん… 」



ーーー


彼女は眠ってる

時計を見ると夜の7時
晩飯を作ってから起こしてあげよう

冷蔵庫から抵当な野菜と玉子を出した


奈生の全てが無性に可愛いくて…
「ふぅ…」

僕は元々淡白で性欲は強くない方だとずっと思っていた

でも…

腹は減ってないと思っていたのに一口食った瞬間
本当はめちゃくちゃ空腹だったことに気づいたような

そんな感じに似ている



――もっと抱きたい

でも初めて経験する彼女に無茶はできないと思っていたからな

このままずっと僕の腕の中にいて欲しいとか
僕だけを見て、求めて欲しいとか


彼女を抱いている内にそんな欲が湧いてきた

こんな独占欲は
舞の時には無かった感情だ



職場のあの葉山という男の顔がチラついた

あの男は間違いなく奈生のことが好きだ

そういう目をしていた――


―――


晩飯を作り終え寝室に入ると
君はまだ眠っていた

「そろそろ起きない?腹減ってない?」
声をかけると奈生はモソモソと布団の中で動いた

「もう7時半だ(笑) 晩飯食お?」

「う…ん」
身体を起こした彼女の
白く柔らかな胸の膨らみが見えた

さっきまで見ていたのに
つい目を逸らしTシャツを渡した

不完全燃焼だからかまた身体が反応しそうになる

「腹、減っただろう?適当に作ったよ。」

「ふふっ(笑) 先生の手料理が食べられるなんて…贅沢(笑)」

まだ寝起きでぼんやりした奈生の微笑みが色っぽい女に見えた

あぁ… 
やっぱりまだ足りない――

「僕は奈生の先生じゃない...」

彼女にキスをし
また抱いた――


―――


「ごめん!本当にごめんっ!!」

「そんな、大丈夫でしたから(笑)」

――時間はもう午後10時を回っていた

「叱られた…?」

「そんな(笑) 私子供じゃないんですよ?それに明日も休みだし大丈夫です。そんな心配そうな顔しないでください(笑)」

彼女は家に電話して
友達の家に泊まるとご両親に嘘をついた

いや、一緒にいたいと言う僕のわがままで嘘をつかせてしまったのだ


「嘘をつかせてごめん。本当に良かったのかな。」

「泊まっちゃ駄目なんですか?」

「違うよ、そうじゃなくて、凄く嬉しいんだ!」

彼女はクスクスと笑った
「うん。私も嬉しい…(笑)」

やっぱり可愛い…
抱きしめるとギュッと抱きしめ返してくる

「なぁ奈生。一緒に風呂入らない?」

「それは流石にちょっと…(苦笑)」
困った表情でうつむいた

「どうして?恥ずかしい?」

「うん。」

「もう全部見てるのに。」

「そういうこと言うのやめてくださいっ」
叩かれたのに全然痛くない(苦笑)

「あははははっ(笑)」

イチャイチャするって
こんな感じだったことを思い出した


――僕は今 最高に幸せだ

「ずっとこうしてくっついていたい。」
奈生を抱きしめた

「陽太さんはそういう人だったんですね(笑)」

「そういう人?」

「甘えん坊さん(笑)」

「あははは(笑) それは僕も知らなかった(笑) 幻滅した?」   

「可愛いです(笑)」

「可愛い?(苦笑)」

「ふふふっ(笑)」


ーー こういう時間がずっと続けば良いなと思っていた






ーーーーーーーーーーー

beautiful world 14

2021-11-18 14:55:00 | ストーリー
beautiful world  14





「これから何か予定入ってる?」

「特には… ボーリング7ゲームもしたしちょっと疲れましたし終わったら帰るだけでした(苦笑)」

でも帰りたくない…な

「え?7ゲームもしたの?」

ですよね(苦笑)
私もそこまですることになるとは思ってなかった

「ボーリングそんなに好きなんだ(笑)」

「それは私じゃなくて、」
あっ…

「彼がボーリングしたかったんだ(笑)」

私ってほんとデリカシー無さすぎだ

「この後時間あるならどっか行かない?疲れてるならゆっくりできるとこでも行く?」

ゆっくりできるとこ?

「僕 稽古終わりだし汗くさくない?」

「そんなことは…」

え?
ゆっくりできるとこ?
汗くさくないかって

まさかのラブ…
「カフェでもって思ったけど、汗くさいなら入りづらいかな(苦笑)」

私 何恥ずかしい勘違いしてんだろう!
先生がいきなりそんなとこ行こうなんて言う訳ないじゃん(苦笑)

「汗くさくないですよ?」

「一旦家に帰ってシャワー浴びてから出直していい?(苦笑)」

「私もついていっても構いませんか?というか…カフェじゃなくて先生んちでも良いですけど…」

「僕んちでいいの?(笑)」

「写真見たいですし…(笑)」
というか、先生と二人きりの方が嬉しい


電車に乗って二駅先
駅から徒歩10分ぐらいで先生の家だから近い

休日だけど最寄り駅が高校に近いから一応注意しておかなくちゃ

電車は少し混んでいて乗り込んだ反対側の扉の手すりに掴まった

フードを被りマスクを着けたら先生が不思議そうな顔で私の顔を覗き込んだ

「暑くない?」

「いえ、、」

だって誰に見られるかわかんないもん

電車を降りて改札を出ると
「あ!早センだ!」

女子高生の三人組が先生に声をかけてきて私は通りすがりの他人のふりをし駅を出た

「あれ?どうした。部活か?」

「そう練習~。今から遊びに行くんだぁ(笑)」

「試験も近いんだからちゃんと勉強しておけよ?」


教師の顔の先生、久しぶりだ(笑)

やっぱり教師の早見先生も素敵だなぁ…
私も高校生の時にあんな風に気安く先生に話しかけたかったな

でもそれじゃ今みたいな恋人関係にはなれてないよね…(苦笑)


「じゃあねぇ~早セン(笑)」

この駅ではこんな風に誰かと会う危険があるんだよね、ほんと要注意!


「お待たせ(笑)」

「ささっ!早く行きましょう!」

また誰かに会うかもしれませんからね!
足早で歩く私に先生はクスクスと笑いながら後から着いてくる

「そんなに急がなくても、、(笑)」

先生のアパートが見えてきた
ここまで来れば大丈夫

「笑いごとじゃないですよ。誰かに見られて噂を立てられたら先生のお仕事やりづらくなりますよ?」

「もし聞かれたら“彼女”だって言うから大丈夫(笑)」

「大丈夫ってそんな、ダメですよ~(苦笑)」

「どうして??教師だって恋愛や結婚も当然してるのに。」

先生はのんきだなぁ…

階段を登り一番奥の先生の部屋の前に着いて
先生は部屋の鍵を取り出しドアを開けた

「おじゃまします(笑)」

先生は熱気がこもってる部屋の窓を開き 冷蔵庫から冷たいお茶を出しグラスに注いでテーブルに置いた

「即行で入って来るから待っててね。」

「ゆっくりでいいですよ(笑)」


先生がいない先生の部屋
写真のある部屋で写真のアルバムを開いた

先生といろんな所に撮影旅行とか行けたらいいな… 

一緒にキャンプしたりとか?
先生ならソロキャンプとかやってそう(笑)

「ふふっ(笑)」

昼間撮影で回って夜は温泉旅館とかに泊まってまったりと...

胸板厚いし浴衣も似合いそう(笑)

紅葉で色づいた紅葉や銀杏の葉が鮮やかな写真

もう直ぐしたらこんな紅葉が見られるかな(笑)
写真撮りに行こっ!


“舞” のアルバムが目に入った

このアルバムだけはまだ開く勇気がない…

きっと今でも時々見てるからいつでも見られる所に置いてあるんだろうか...


リビングの隣の部屋の扉を少し開き覗いてみた

大きなベッドが置いてあった

ダブルベッド?
先生身体大きいもんねぇ(苦笑)

起きた時に乱れたままの掛け布団

目が覚めて眠そうに起き上がる先生の姿が想像つく(笑)

「ふふっ(笑)」

布団を綺麗に直してると…
「ごめん、ありがと。まさか今日田中さんに会えるとは思ってなかったから、、」

まだ髪が濡れたままタオルを被ってる先生が立っていた

早っ!もうお風呂出たんだ!
「ほんとに早かったですね!」

「君が来てるのにのんびり入ってられないよ(笑)」

「前髪降ろしてるの初めて見ました(笑) 良い感じです!(笑)」


先生はそう?と言って笑いながら髪をガシガシ拭いた

濡れた髪の先生
雰囲気が変わるんだ

なんだかドキドキする…

水を飲む先生が
「田中さんも風呂入る?」と普通に聞いてきた

それが凄く自然だったから戸惑った

普通は彼氏の部屋に来るとお風呂入るものなんだ!? 

顔がカーッと熱くなって汗が滲んできた

「あ、変な意味はなくて、電車の中で暑そうだったから、、ははっ(笑)入らないよね(苦笑) 」

ビックリしたぁ…
彼氏の家でお風呂に入るのが普通なのかと思った

初めての交際
初めての彼氏とお付き合い

25にもなってわかんないことが多くて恥ずかしい…

「あ、そういや7ゲームもボーリングして腕疲れたんじゃない?」

「はい、だるいです(苦笑)」

「よし、どれどれ。」
私の隣に座って腕に触れた

「い、いいです、ほんと、」

「明日辛いかもよ?(笑)」

私の太い腕を先生に触れられているのが恥ずかしくて顔から火が出そう

「少し熱持ってるから冷やそうか。」と立ち上がった

「私太いから…ほんと痩せなきゃ…」
マジでこのままじゃ…

「まだそんなこと気にしてるのかぁ。」と持ってきた湿布を私の腕に貼りながらチラッと私の顔を見た

「そりゃ…気にしますよ。」

「僕は初めて触れた時凄く良いなって思ったんだけど。」  

初めて触れた時…?
「あ、電車の中で立ったまま爆睡した時ですか!?」

「そうそう(笑)」

「もうイヤだ…思い出さないでください…」
ずっと寄りかかっててきっと重かったに違いない

「ほんと…迷惑かけてすみません…重かったですよね。」

「え??普段から体幹鍛えてるし全然大丈夫だったけど?」
確かに鍛えられてて凄いですけど…

「田中さんぐらいなら軽くお姫様抱っこぐらいできるよ。」

「ほんとですか!?」

「そんなに頼りないと思ってた?ならやってみようか(笑)」

「いやいや!いいです、いいです!!」

全力で拒否すると目を細め怪訝そうな顔をした
「信じてないな。そんなに弱っちい男だと?」

「そうじゃなくて、先生はウエイトリフティング選手じゃないんですよ!?」

その言葉に先生は爆笑した
「頭上まで、持ちあげる訳じゃ、ないし、、くくくっ(笑) 」

「そんなに笑わなくても...(苦笑)」

「あーなんか悔しいな。そのくらいできるのに。」
少し拗ねた顔をした

「そんなことしなくていいんですっ!先生だって稽古でお疲れでしょ?」

「疲れてたってそのくらいできるんだっ。」
やっぱり負けず嫌いみたいだ…(苦笑)

「君はお姫さま抱っこが嫌いなんだな。これも覚えておく(笑)」

「そういう訳では…」
ないんですけど…

「風呂上がりだから暑いなー。冷蔵庫からお茶持ってきてくれる?」

「あ、はい、」

立ち上がったら先生も立ち上がった

すると足がフワッと宙に浮いた
「えっ!?」

「ほら、できるだろう?(笑)」

人生初めてのお姫様抱っこをされた

それはめちゃくちゃ
「こっ、恐いっ!恐いー!」

先生の首にしがみついた

「あはははははっ(笑)」
余裕で笑ってる

「やっぱり初めてなんだなー!(笑)」
落ちそうで恐くて感動どころじゃない!

「仕方ないなぁ~(笑)」
危なくないようにベッドサイドに座るように降してくれた

片膝を立て目線を合わせるようにしゃがんだ先生は
「人生初のお姫様抱っこは恐かったかぁ(苦笑) 初めてが僕とは嬉しいね(笑)」と笑った


“人生初めて”
先生とは初めてのことばかりですよ…

「キスも…初めてですよ、、」

少し驚いた表情をした
「…そうか。君の人生初を僕は2つも貰ったのか(笑)」

眉尻を下げて優しい表情で微笑んだ

唇が重なる…
初めての甘い大人のキスだった

溶けていくような不思議な感覚がした
頭がふわふわする


「僕はこんなにも強欲な男なんだと君と出会って思い知ったよ。」

強…欲…?

「君の3つ目の“初めて”も欲しい。」

「3つ目…?」

「君の身体も… 欲しい。駄目、かな。」

そんなこと聞かないで欲しい

“いいよ”って
どう答えたらいいのかわからない…

「急がないよ。いつかで良いんだ(笑)」


先生――

「だからいつか僕に、」

「いつでもいい…ですよ 」

「それは…今でもっていいってこと?」


言ってしまった








ーーーーーーーー