Stay With Me 8
“凄く寒いから着いたら連絡をするからね。それから家を出て来るんだよ。” と彼は言った
どんな時でも彼は私を思いやり
いたわってくれていたことを思い出す
わかりにくい場所だから迷うかもしれない 、と連絡が来る前に公園に向かったけれど
ほんとは少しでも早く彼に会いたくて
はやる気持ちを抑えられなくて早く部屋を出た
まだ彼は着いてない
雪がチラホラ降ってきて
持ってきた傘をさした
こんな夜中だと5分でも外にいると身体が芯から冷えてくる
冷たい空気で耳も痛い
スマホの時計を見たらもう午前0時30分になっていた
いつもの彼ならとっくに寝ている時間帯
こんな時間なのにわざわざ私に会いに来てくれる…
“凄く寒いから着いたら連絡をするからね。それから家を出て来るんだよ。” と彼は言った
どんな時でも彼は私を思いやり
いたわってくれていたことを思い出す
わかりにくい場所だから迷うかもしれない 、と連絡が来る前に公園に向かったけれど
ほんとは少しでも早く彼に会いたくて
はやる気持ちを抑えられなくて早く部屋を出た
まだ彼は着いてない
雪がチラホラ降ってきて
持ってきた傘をさした
こんな夜中だと5分でも外にいると身体が芯から冷えてくる
冷たい空気で耳も痛い
スマホの時計を見たらもう午前0時30分になっていた
いつもの彼ならとっくに寝ている時間帯
こんな時間なのにわざわざ私に会いに来てくれる…
ベランダから恵美が心配げに私を見ていた
空からハラハラと落ちてくる雪を傘越しに見上げた
4ヵ月って
普通に暮らしていればあっという間に過ぎ去ってしまうのに
この4ヵ月間は一日が過ぎていくのを長く感じてた
もう一年は経ったような気がする
それから15分程 待っていると
見慣れた車が街頭の下にゆっくりと停車した
そして運転している人がスマホを開き画面の光が顔を照らした
ーー 寺崎さん
胸が高鳴る
『着いたよ。気をつけて出て来てね 。』
寺崎さんからLINE届いた
車の方に歩いて行くと彼は私に気がついて慌てて車を降り駆け寄ってきた
「外でずっと待ってたの!?」
目を潤ませて彼の大きな手で私の頬を包んだ
「 こんなに冷たくなってるじゃないか、、」
彼の手の温かさで
全身が温かくなっていくようだった
「ずっと 会いたかった…」
愛おしそうに目を潤ませて私を見つめる彼
ーー 私はまだ彼に恋してることを心臓の鼓動で実感する
背の高い彼が私を包みこむように抱き締め
私は傘を落とした
… 懐かしい 寺崎さんの匂いだ
「風邪をひいてしまう、車に入ろう」
彼は落ちた傘を拾い上げ私の肩を抱き
助手席のドアを開いた
後部座席のブランケットを私の膝にかける
彼のこの優しさに懐かしさを感じる
「こんなに寒いのにどうして外で待ってたんだ。」
冷えた私の手を温かくて大きな手が包んだ
「寺崎さん。私、寺崎さんがやっぱり好きです…」
素直に言えた
「僕もずっと君が恋しかったよ。」
痩せた頬…
無造作に伸びた前髪に眼鏡をかけた彼は
今にも泣き出しそうに目を潤ませ微笑んだ
「やっぱり僕は君のことを愛してるみたいだ。」
“愛してる” という言葉を
初めて言ってくれた
「今夜、僕たちの部屋に帰らない?」
気がつくと雪が車を隠しはじめていた
「久しぶりに… 一緒に帰ろう?」
微笑みながら少し顔を覗きこむ彼に
急に照れくさくなった
「そうだね… 」
はにかむ私の表情に彼は嬉しそうな笑顔になる
雪が積もりかけているフロントガラスにワイパーで雪をかき分け
ゆっくりと車が動き始めた
「積もりそうだね(笑)」
運転している彼の綺麗な横顔を見るのも久しぶり…
「積もりそうだね(笑)」
運転している彼の綺麗な横顔を見るのも久しぶり…
彼は時々チラッと私の顔を見てはまた直ぐに前を向く
嬉しい気持ちを隠し
口をぎゅっと硬く閉じているけれど
嬉しい時に出るシワは隠せていない
本当に寺崎さんは可愛い人 …
私も嬉しくて顔がほころぶ
ーーー
時計を見ると午前1時を過ぎている
4ヵ月ぶりに帰ってきた二人の部屋は
私が出て行った時と全く変わってはいなかった
私が帰ってくるのを信じてそのままにしていたんだと微笑みながらコーヒーを入れる彼
私と会える日をずっと待ち望んでくれていたんだ…
カーテンを開けると外はもう真っ白になっていた
彼は私のマグカップを差し出した
「ねぇ… もうすぐクリスマスだよ?」
肩を抱き寄せてきた
「そうだね… 」
私の頭に頬を寄せてきた
「理奈ちゃんと一緒に過ごしたいなぁ… 」
おねだりのように聞こえた
少し曇りかけた窓ガラスに映る彼はとても幸せそうで
偶然 街で見かけた寺崎さんと一緒にいたあの綺麗な女性とどんな関係なのかとか
そんなことは今はもうどうでもよくて
こうして愛されてることを今は実感していたい
彼を見上げたら
優しく唇を重ねてきた
ーーーー
翌日の夜
恵美の元に帰ると
「おかえりー!仲直りしたんでしょー? 」
ニヤニヤしながら迎えてくれた
「カレシ、理奈と会えて相当喜んだでしょ (笑)」
そうか
あの時 ずっと見てたんだ
「まぁ、うん… 」 かなり照れくさい
「背が高い人なのね~。顔は暗くてわかんなかったけど(笑) で?どうするの? 彼のとこに帰るんでしょ?」
「帰ろうかなと… 思う… 」
私はいつもあまり彼のことを語らないから
逆に興味が湧くのか今度こそ彼に会ってみたいと強く言ってきた
「彼、ずっと理奈のこと待ってたんだろうね。 理奈のこと大切そうに見えた。良いカレシじゃん?(笑)
顔がわからなかったのは残念だけど(笑)」
「うん… 優しい人だよ… 申し訳ないくらい 」
「なんで申し訳ないの?(笑)」
私は彼に優しくしてあげられてない
いつも優しさを与えてくれるばかりで
そして
いつもどこか彼に引け目を感じていた
ーーー
私が彼との部屋に帰る日
彼があの公園まで迎えに来てくれた
私が出て行く前と変わったことが少しあった
「来週のクリスマス。理奈ちゃんは行きたいところはある? 特にないなら僕が決めてもいいかな。」
私にハグをする彼
料理をしている時も後ろから覗きこんできたり接触してくる事が増えた
それは以前とは別人のように変わっていた
離れていたことの反動なのかもしれない
以前 愛情表現が苦手だった彼に不満を持っていたけれど
今は少し戸惑う ーー
優しくて頭が良く 格好良い彼と平凡な私
この人は私のどこがそんなに好きなんだろう …
ーーーー
12月24日 のクリスマスイブの夜
仕事を終えて彼と待ち合わせをしていたスタバに入った
寺崎さんは…
長い脚を組んでタブレットに視線を向けているスーツ姿の彼はとても素敵で人目を引いていた
「あの人、格好良くない?」
女性二人が私の前を通りすぎながら彼を見ていた
やっぱりそうだよね …
なんとなく彼に声をかけづらくなった
私に気づいた彼がコートを持って微笑みながら歩み寄ってきた
「仕事お疲れさま、 じゃあ行こうか(笑)」
コートを羽織る彼をさっきの二人がじっと見てる
なんとなく…
彼の隣に居ることに居心地が悪い
彼はエスコートをするように私の背中に手を当て出口の方向に歩きだした
「寺崎さん、今日とても素敵だね 、 、」
「ほんとに?嬉しいな(笑) 今日は君との特別なデートだから(洋服を)新調したんだ(笑)」
爽やかで優しい笑顔を私に向けた
彼女達の顔をチラッと見たら
私達の会話が聞こえたのか少し驚いた表情をしていた
なんかヤダな…
私は彼に不釣り合いだって自覚はしてるけど…
店を出ると冷たい空気に包まれた
「あぁ、かなり寒いなぁ!(笑)」
彼は私の肩を抱き寄せた
「店はそんな遠くないからね(笑)」
嬉しそうに私に笑顔を向けた彼
「う、うん 、 、 」
私はつまらないことを気にしてるってわかってる
でもこの引け目はなかなか拭いきれない
こんな時は開き直った方がいいんだろうけど
「寺崎さんがスーツを着ると本当に大人の男性なんだなって実感する(笑)」
「それは僕が老けて見えるってこと?」
「うぅん、そうじゃないよ(笑)」
「君は実年齢より若く見えるだろう?余計僕達の年齢が離れているように見えないかなって気になる。」
ん?
脚を止めて私の顔を見た
「あ…まさか… 僕達が親子に見えてたりしないよね?」
「あははっ(笑) それはないよ~ 」
実は寺崎さんとお母さんとは5つしか違わない
もしかしたら私のお母さんと寺崎さんが付き合ってもおかしくない年齢差
「 僕 、おやじだから君が僕の若い頃にできた娘みたいに見えやしないかって 、実は時々思ってた (笑) 」
「そんなこと誰も思わないよー(笑)」
私も “寺崎さんと釣り合ってないと思ってる”
なんて事を言ったら
きっと “そんなこと気にしてるのか?” と笑うだろう
ーーー
こんな高そうなお店に入ったのは初めてで緊張する
彼は慣れた感じでワインのリストを見てワインをオーダーをしている
私が知らなかった大人の男性の顔だった
「ここは昔から何度も来てるんだ。」
「そうなんだ(笑)」
確かに慣れてる
元カノと?
あの綺麗な女性とか…
いやいや、そういうのは今は考えない、考えない、、
「今日の理奈ちゃんとても綺麗だよ、素敵だ … 」
嬉しそうに私を見つめている
実は今日のために密かに買って用意した洋服だった
私なりに少し頑張ってデコルテが見える大胆めの大人のワンピース
凄く勇気を出して着てる!
だから
そんなにまじまじと見られたらかなり恥ずかしい…
「寺崎さん、そんなこと言うタイプじゃなかったよね(苦笑)」
「思ったことは言葉にしないと伝わらないってこんな歳になって今更ながら思うようになって。
今まで言葉が少なかったせいで君に誤解させて傷つけてしまったから。」
本当に変わったな…
彼はこんな風に言葉にすることはなかった
それに愛情表情も増えた
「それでも、綺麗って… 」苦笑いした
「綺麗だよ。 ほんとに 、、 」
それを “あばたもえくぼ” って言うんだよ
「そんなセクシーな服、初めてだね… 」
探るような視線で私を眺めてる 、、
寺崎さんの方が大人の色気ダダモレで
笑顔の時との印象のギャップを感じることが多くなった
「寺崎さんの方がずっと素敵でモテるよね (笑)」
「僕が? まさか、 ないない! (笑) 」
やっぱり自覚なし、か…
「前に綺麗な女性と 、、 」
「え?」
ワインが運ばれ
グラスにワインが注がれる
優しく微笑みながらグラスを合わせた
こういう落ち着いた高級なお店で
美しくワインを飲む姿は
本当に大人の男性だなと実感させられる
そして
私はまだまだ子供だ 、ということも実感する
「で? 女性が? なに? 」
あ 、 うーん …
「 1ヵ月ぐらい前に寺崎さんが綺麗な大人の女性と会ってたのを見かけて 。
なんだかお似合いだなぁなんて思って (笑) ははっ … 」
聞いちゃった …
「1ヵ月前? 綺麗な女性? 」
真剣に思い出そうとしている
「あっ、わかった。それってもしかして…」
彼がスマホの画像を私に見せた
「これだよね?」
少しムスッとした寺崎さんと笑顔のあの綺麗な女性の画像を差し出した
胸が痛んだ
「そう、この人…」
やっぱり綺麗な人 …
「女性と言えば こいつとしか会ってないからな(笑)」
その女性に対する彼の親しげな言い方に胸がズキッとした
彼が女性を指さした
「ほら、顔をよく見て? 誰かとなんとなく似てない? 」
え?
「これ、僕の妹(笑)」
えっ!?
「妹がこっちに帰って来てた時に飯ぐらい奢れってね。僕ら兄妹 顔が似てるから友達に見せたいとかで無理矢理 写真を撮られたんだよ (笑) 」
妹さん …
だったんだ
だからこんな不機嫌そうな表情なんだ?
「そういえば前に、妹は海外にいるって言ってたね。」
「そう。僕らを見かけたなら声をかけて欲しかった。僕はずっと君と会いたがってったのに。」
背も高くて綺麗な女性だったのは兄妹だったからか
よく見ると確かに目鼻立ちは似ている
切れ長の目とか …
でも
ホッとした
私の誤解だった
あんなに悲しくて泣いたのがバカみたい
「 顔立ちは似てても性格は全く違うからね (笑)
妹は君にとても会いたがってたんだよ?
もう日本にいないから次の機会になるね 。」
そういや …
「私も一緒に住んでた友達が寺崎さんと会ってみたいと言っていたの。実は随分前から 。」
彼も恵美に会ってみたいと言ったから三人で会おうという話になった
店を出ると並木道がクリスマスイルミネーションで輝いている
彼が向かったのはヴィーナスフォートイルミネーション
天井を見上げた
「…綺麗 」
「理奈ちゃん…」
「うん ?」彼の顔を見た
「あの… 僕と… 結婚してくれないかな 」
「えっ… 」
突然のプロポーズだった
「これ… 」
コートのポケットから箱を取り出し私に差し出した
「結婚… ? 」
彼は照れくさそうにはにかんで頷いた
箱を開けると指輪が入っていた
ーーーーーーーーーー