風 3
行野さんがあの合コンに参加していた色白男と付き合ってるって聞いた
あの色白男
合コンの時 “自分だけは違う”って空気出して俺らのことを見下してた
行野さん なんであんな奴と付き合ってんだ
そりゃ 誰が誰と付き合っても俺には関係ないけど
あの男はダメだろ!
… って
指摘する程 俺と行野さんは親しいわけじゃないからな
西田さんからLINEが来た
“颯真くん、まことちゃんと4人で遊びに行こうよ”
4人?
“4人って?”
“吉川くんだよ”
吉川… あっ!あの色白男か!
“気乗りしないな。”
“なんで?吉川くん嫌い?”
この人はストレートに聞いてくるな… (苦笑)
“向こうも嫌だろうし”
“吉川くんは颯真くんに会いたいみたいだよ?”
はぁ!? なんでよ!!
“だから行こうよ!ね!!”
西田さんはほんとに強引だ
結局俺が折れる流れがいつの間にかできてしまってる
その4人が会う当日
気乗りしないまま集合場所に到着した
行野さん一人が先に到着していた
会うのはあの合コン以来
二人だけなのは初めて
何となく気恥ずかしくて
早く西田さんが来ないかとソワソワした
行野さんは俺と西田さんはデートしてるのかと聞いてきた
デートらしいことなんてしていない
ただ、サーフィンをして飯食って、たまにLINEしてまた飯を食いに行った程度だ
だから2回だけだ
行野さんは少し驚いた表情をした
二人は付き合っていないのかと聞かれ 付き合ってないと答えると 困った顔をした
結局 何故行野さんが困った表情になったのかわからないまま西田さんが到着した
あのいけすかない吉川ってヤツだけが遅れて来やがった
遅刻したにも関わらず
悪びれる様子もなく仕切り始めた
やっぱ俺、コイツはアカンわ!
どこに行くのかと思いきや東京ディズニーランドだった
思いっきり千葉やん!!
てっきり遠出でもすんのかと思ったぞ!!
半ば呆れ気味で いけすかん吉川についていった
思いっきり地元のディズニーランド程度のことで偉そうに仕切りたがる吉川を俺は心の底から嫌いになれそうだわ
しかも やたらと行野さんと話してるし!
… そっか
付き合ってるなら 当然か…
なんか来るんじゃなかった
二人が良い仲なのを認めざるを得ないだろ
なんでこんな奴と付き合ってるんだ
ほんっと わかんねぇ!
「颯真くん?」
西田さんが俺の顔を覗きこんできた
「えっ、な、なに?」
「やっぱり無理に誘っちゃったから嫌だった?」
「いや、、」
その会話に行野さんが俺の顔を見た
「そう… だったの?」
申し訳なさそうな表情をして
俺はそんなことないと笑顔を作った
ディズニーランドで 行野さんと吉川は二人は乗り物に乗って 一緒にアイス食って 本当に仲良さそうに見える
ほとんど何も知らないのに
話もまともにしてないのに
行野さんが気になって目が追ってしまう
ふと あのアパートで出会った女の子と既婚者の男のことを思い出した
あの頃と同じ胸の痛み
こういうのって
切ないって言うんだろうな
俺 行野さんのこと
好きなのかな
ふいに西田さんから腕を引っ張られ驚いた
「私達はあっちに行こう♪」
「えっ、あ、あぁ、、」
行野さんが俺達に軽く手を振った
「私とだと つまんない?」
「いや、そんなことない、よ、」
「好きでも嫌いでもないんでしょ(笑)」
図星を突かれた
本当に嫌いじゃないけど好きでもない
好意的に想われることは嬉しいけど
本当にそれだけだった
「… ごめん」
「だよねぇ~ もっと興味持って知って欲しいんだけどなぁ(笑) ふふっ(笑)」
行野さんと吉川がふと浮かんだ
「付き合いだしてから好きなる事ってあるのかな… 」
「あるよ!相手のことをもっと知って好きになるって事だってあるよ!」
「… そうなんだ。」
「だから、だから、、私と付き合わない?」
え?
「西田さんなら俺みたいなのより格好良いやつと付き合えるよ。俺なんてほんとどこにでもいるような男だし。」
「そんなことないよ。颯真くん格好良いし優しいし男らしいよ? 短い期間でもいいの。もっと颯真くんに私のこと知って欲しい。」
訴えるような目で俺を見上げながら
腕を俺の腕に絡ませてきた
西田さんの胸の感触が腕に伝わって
男の本能がグラグラ揺れた
「あっ、いや、ほんと、それは、」
腕をほどこうとしたら西田さんは余計に力をこめた
「じゃあ1ヶ月だけでもいい。」
どうして俺…?
それにグラビアやってたぐらい綺麗でスタイルも良くて性格だって悪くない西田さんがこんな俺なんかにそんなプライドもないようなこと言うんだ
1ヶ月…
結局
西田さんに根負けして1ヶ月間付き合うことになった
やっぱり俺は最後は西田さんのペースに巻き込まれてるな…
東京ディズニーランドを出る頃
空はもう真っ暗になっていて俺以外の三人は満足そうに会話をしていた
「あのね、私、颯真くんと付き合うことになった♡」
えぇっ!!なんでここで言う!?
咄嗟に行野さんの顔を見た
行野さんは戸惑ったような複雑な表情をしていた
吉川が驚いた口調で
「あれ?二人まだ付き合ってなかったの!?てっきり付き合ってるのかと思ってたよ!(笑)」と大袈裟に驚いた
行野さんは吉川のその大袈裟な口調に苦笑いした
「じゃあここで解散ね(笑)」
舞浜駅から俺と西田さん 行野さんと吉川で別れて解散した
まさか行野さんの前で公表するなんて
でも…
短い間だけど付き合うって決めたことは本当だし仕方ない
西田さんがこれからどうする?と聞いてきた
4人で晩飯食いに行けば良かったんじゃないの?と言うと 二人きりがいいの!と嬉しそうに笑いかけてきた
「たったの1ヶ月しかないんだもの。時間がもったいから。ねえ?飲みに行こうよ(笑)」
俺の腕にまた腕を絡ませ俺は引っ張られるように電車に乗った
俺の自宅の方向とは真逆の方向に電車は走っていく
どこに行くのかと聞いたら西田さんの住んでいる町の駅前に沢山 飲食店があるからそこに行こうと言った
まぁ 西田さんが帰りやすい場所の方がいいもんな
女子が好きそうな洒落た居酒屋に入ったらタイミングよく小さな個室に空きが出てそこに座ることができた
4人以上は座れない程度の個室の広さ
この位の狭い空間 俺は案外落ち着く
西田さんはチューハイを頼んで俺はやっぱりビール
乾杯して料理が届く頃にはもうチューハイを空けるほど早いペースで飲んでいた
大丈夫かと聞くと全然大丈夫!と微笑んだ顔は明らかに赤い
結局 西田さんはチューハイを5杯も飲んだ
嬉しいからだよっ♡と酔って潤んだ瞳で見つめてきた
俺はビールを7杯飲んだ
けど元々酒には強い俺はそんなに酔ってなくて
彼女を部屋の前までタクシーで送り届けることにした
マンションの前に着いて一緒に降り
「じゃ、俺帰るから。」と
待たせておいたタクシーに乗り込もうとしたら西田さんに引き留められた
少し呂律の回らない状態でタクシーの運転手に西田さんは金を渡した
「これで足りますよね? もうここでいいですから、、」
そう言ってタクシーを帰してしまった
「なんで?」
駅まで遠くはないから歩いて行ける距離だけど
西田さんのやることは全てが強引でよくわからないところがあって戸惑う
「送ってくれるんでしょぉ?」
目の前のマンションを指差した
「部屋まで送れ、ってこと?」
支えるように彼女の肩を抱いて 彼女の指示通り部屋の前に送り届けた
部屋の鍵を出してドアを開くと上がって行くでしょと言う西田さんに いきなり女の子の部屋になんか入れるわけないよ、と言う俺
付き合ってるのに?と甘えるように見上げてきた
こういう表情も彼女の作戦かもしんない
でも 男の俺はこういうのに弱い
私にはたったの1ヶ月しか時間がないんだもん
毎日会える訳でもないからちょっとでも傍にいたいと言う西田さんを無下に断ることもできず
結局 俺は彼女の作戦に乗ることになってしまった
俺 ずっと西田さんのペースに流されてる
そんな反省と言い訳じみた思いで西田さんと部屋に入った
西田さんの部屋は意外と可愛くて 女の子の部屋だなぁとドキドキした
おぼつかない足取りでチューハイとビールを持って俺の隣に座った
まだ飲むの!?と聞くと飲むと笑った
俺の腕にもたれかかった西田さんにドキドキして間がもたずテレビを点けるとWOWOWの映画が流れた
しばらくビールを飲みながら見てると西田さんはうとうとし始めた
抱き上げてベッドに寝かして布団をかけると本格的に眠ったようだった
帰ろうと時計を見るともう終電はとっくに出た時間になっていて
仕方なく俺は映画の続きを見ながらその場で寝てしまっていた
目が覚めると西田さんは起きていてシャワーから上がったところのようだった
目線の高さに大きなTシャツの下から長く綺麗な脚が出ていて思わず目を反らした
「ごめっ、俺 寝てて、、」
「おはよう…♡ ふふっ(笑) 朝ご飯作るからその間にシャワー使っていいよ。」
「いや、もう帰る、、」
立ち上がった俺にまだ帰らないでと抱きついてきた
シャンプーの匂いがした
女の子の匂い…
「どうして帰っちゃうの? そんなに私のこと嫌い?」
嫌いとかじゃなくて俺がここに居ちゃいけない気がするから
「嫌い?」とまた甘えるように見上げてきた
「そうじゃなくて、、」
「じゃあ朝ご飯食べてね♡ お腹空いたでしょ?」
シャワーを借りることになった
西田さんのあの感じ、嫌いじゃないから困るんだ!
俺、ほんと単純な男だよな
新品で予備に買っておいたという歯ブラシを貰って歯を磨きながら
もしかして…
西田さんとキスとかしちゃうのか? 俺!
なんてことを ふと思った
髪を乾かしてドアを開くと
さっきの大きなTシャツだけの姿のままの西田さんが料理を運んでいた
なんで着替えてないの!?
パンツが見えそうでつい見ちゃうじゃん!!
テーブルの上はめちゃめちゃカラフルだった
色とりどりなサラダにオムレツにオニオンスープとか
男の一人暮らしのテーブルには並ばないようなものばかりだ!
なんか 感動…
「いただきます!!!」
張り切ってる俺に西田さんは楽しそうに笑った
料理も上手くて綺麗でスタイルも良くて
あざとい可愛さで甘えてくるなんて俺って幸せ者なんじゃ?
朝飯はほんと旨くて全部平らげた
腹いっぱいで満足してると西田さんがコーヒーを入れて隣に座った
脚っ!脚ーっ!!
「い、いつも、そんな格好、なの?」
「うん(笑) 楽だもん(笑)」
まぁ自分ちだもんな、うん
体育座りのように膝を立てた
パンツ見えそうだぞ!ヤバいんじゃないッスか!?
「コ、コーヒー飲んだら、俺、帰る、、」
「どうしてそんなに帰ろう帰ろうとするの?そんなにここ居心地悪いかな… それとも私のせい?」
あなたのその格好のせいですよ!!
「あ、脚が… ちょっと… 」
「えっ?脚!? どこか痛いの!?」
西田さんは心配そうに俺の太ももを撫でた
さっ、触らないでっ!俺のが反応しちゃう!
「ち、違うから!俺、帰るよ!」
慌てて立ち上がったら西田さんも立ち上がり腕を掴ませた
「颯真くんともっと一緒にいたいのに… 」と悲しそうな顔で見上げてきた
そんな顔しないでくれよぉ…
「… わかった」
「脚… 本当に痛いんじゃない?」心配そうに見上げる
「脚が痛いとかじゃなくて、西田さんの脚が… 」
キョトンとしてクスクス笑いだした
「良かったぁ!颯真くんの脚がどこか悪いのかと思っちゃった(笑)」
「なんか下に履いてくれない?目のやり場に困るから… 」
「見慣れればいいんだよ(笑)」
Tシャツを少し持ち上げた
「み、見慣れないからっ!」
顔がカーッと熱くなってきた
「颯真くんには私の全部を見て欲しいなぁ… 」
えっ、、
俺の首に腕を回して前のめりになった俺に西田さんはキスをしてきた
ずっと瀬戸際で必死にもがいてきた俺の理性は
そのキスの心地良さに いとも簡単に負けてしまった
俺 やっぱ西田さんに勝てそうもない…
ーーーーーーーーーーーーーーー
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます