シニアお一人様の家計実態
生涯未婚率が徐々に上昇してきている。これにより年齢の高い層でのお一人様が一貫して増加しつつある。今後、65歳以上のお一人様も増えていくことが想像される。こうした人たちの家計実態はどのようなものであろうか。家計調査の2021年実績から迫っていくことにする。
前提条件として
前提条件としていくつかパターンを想定する必要がある。家計調査で65歳以上区分の平均年齢は76.7歳となっており、多くの人が職業に付いていない。また、持ち家率が平均で75%を越えており、女性の方が有意に持ち家率の高いことが実態である。この違いは、住居費に大きな違いとして現れる。おひとり様で民間住居を賃貸している人の住居費は5万円程度であるが、持ち家(それも多くは一軒家)の人のそれは、1.2万円程度で大きな違いとして現れる。つまり、おひとり様は、元からお一人様の人と、死別・離別等でお一人様になった人の2パターンの存在を示しており、この家計調査結果では後者のパターンが大勢を示していると考えられる。
また、統計上は男女別の人数以外の数値が出ていないので確認できないが、死別した女性のお一人様の場合、住民税非課税になっている割合が高く(遺族年金は非課税)、直接税の平均が年間7.2万円余りと低めに出ていることも考慮すべきである。また、住民税非課税であると介護保険料も半額以下に抑えられ、後期高齢者医療保険料も減額されるので、年間社会保険料も抑えられる。このため平均年間約7.4万円は低く抑えられている金額である。この年代の女性は専業主婦や非正規労働者として就業していた人が多く、年金受給額が少ないことによる影響である。
今後正規労働者として就業していた男性・女性が65歳を迎える段階での年金受給額と非消費支出とは異なるので、注意が必要だ。
家計の収支は
さて、65歳以上の単身無職世帯の実収入は、13.5万円(年間162万円)となり、既に勤めによる収入はなく、年金収入がほとんどである(一部自営業で収入を得ている人もいる)。また仕送りを受け取っている人も存在する。
これに対して、非消費支出(税金・社会保険料)は、月1.2万円(年間14.7万円)は低く抑えられている。ちなみに夫婦のみの無職世帯は年間36.8万円であり高くなっている。
これにより、可処分所得は12.3万円となる。一方、消費支出は13.2万円であり、収支は9400円(年間11.2万円)の赤字である。大幅赤字ではないので、ある程度の金融資産があれば、計画的に取り取り崩していくことで問題なく生活を送れるという判断もあり得る。
消費支出の主な項目は、次の通り。
食費 3.6万円 外食含む。夫婦二人では、6.5万円
人数が減っても半分にはならない
住居費 1.3万円 持ち家の割合が高いため
水光熱費 1.2万円 夫婦二人では、1.9万円
人数が減っても半分にはならない
交通通信 1.2万円 ガソリン代やバス電車代、そして電話・携帯代金
保険医療 0.8万円 通院(1割負担が大半)と介護(一般的なサービス)
ならこの程度
交際費 1.5万円
諸雑費 1.3万円
現在の自身の支出額と照らして見てみると、特別高かったり、低かったりしないのではないだろうか。年齢なりに質素でありつつも堅実な生活を送っていることがうかがわれる。
住宅と介護の費用
住居費は、先に述べたように持ち家でない場合やマンション住まいの場合は、これより多い金額を考える必要がある。
一般的に不安要素として挙げられる介護費用は、介護認定の度合いにもよるが、一般的な在宅・施設介護サービスを受ける範囲であれば、それほど多額の費用は必要としない。介護保険の上限までサービス提供受けたとしても、介護度5で月額3.6万円(1割負担)を越えるサービス利用するケースはまれだ。要介護4~5で特別養護老人ホームに入所すると、全部で月額12~15万円程度必要になるが、その分食費が不要になるなど実際的に必要になる金額は変わってくる。また一般的な入所期間は概ね2年程度であるので、必要な金額もある程度計算できる。仮に4~5年になっても、打つ手は様々にあるので、あまり心配してもしょうがない。
おわりに
お一人様の場合、不安要素も多いと思われるが、こうした実例をもとに、自分なりのシミュレーションを立てておくと、無駄な心配をしなくて済むであろう。世の中、不安を煽るような言説もあり、冷静に考えることが大切だ。特に不安に乗じてサービス(民間の「介護保険」など)の契約をするのは、冷静に考え、専門家に相談したりして判断していくようにしよう。
<参考資料>
家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)、総務省、2022年8月
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