さくらの丘

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定年後の働き方と生活

2022年07月10日 | ライフプラン

定年後の働き方と生活

 

 定年後の働き方を皆さん、どう考えていますか?

 定年後の就業に関して、国の政策は高年齢者雇用安定法に基づき実施されている。高年齢者雇用安定法は、2012年改正によって、60歳未満の定年禁止と65歳までの雇用確保を義務とした。さらに2021年4月からの改正により、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、70歳までの就業機会の確保を事業主の努力義務とした。これにより次のいずれかの措置が求められることになった。ただし、対象は、当該労働者を60歳まで雇用していた事業主となるので、少し注意が必要だ。今のところ③を採用する事業者が多いようで、①②を採用する企業は少ないと見られる。

① 70歳までの定年引き上げ

② 定年制の廃止

③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)

④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 

 これらの施策により、現在は、多くの企業において、定年自体は60歳としながらも、継続雇用制度を設けて、65歳までの雇用を確保しつつ、さらに70歳まで働ける様にしていく制度が整えられつつある段階であろう。一旦60歳定年を契機にして退職して、再就職すると70歳までの雇用は一義的には確保されなくなるので、再雇用を目指す人は増えることになる。そして今後も多くの人は60歳を区切りとして、再雇用による雇用の継続をする選択をしていくことになると考えられる。

 現在公的年金の支給は、ほぼ65歳からとなり(特別支給の老齢厚生年金支給対象者を除く)、60歳以降も生活を維持するために、仕事を続け、収入を得なければならない事情も働く側にある。また65歳になって公的年金を受給することになっても、生活水準を維持して、老後の安定的な生活を考えると、70歳まで働くことを選択せざるを得ないと考える人も多くなっていくことが想像される。

 こうなると60歳で一旦定年した後も、70歳まで働き続けることを自分の中でしっかり考えていくことが必要になってくる。定年後の10年間の働き方は、どのように考えたら良いのだろうか。

 このことは、働く人だけの問題ではなく、雇用者側もしっかり考えて、これからの超少子高齢化社会の中での仕組みを作っていく必要がある。

 

雇用の選択肢

 リクルートワークス研究所の調査(2019年時点)によると、55歳までの就業スタイルは、正規職員(56%)が最も多く、次いでパート・アルバイト、そして契約・派遣職員となっている。

 55歳以降正規職員の割合が大きく減少し始め、60歳時点では正規職員(38%)が一番多いものの、パート・アルバイト、契約・派遣職員の構成比が上昇し、嘱託職員の割合も増えてくる。これが65歳になると、最も多いのはパート・アルバイトとなり、正規職員(20%)は大幅減少し、契約・派遣職員とほぼ同じ水準になってしまう。ちなみに70歳では正規職員は10%である。単純に正規職員を良いものとする訳ではないが、いずれにしても非正規労働者の割合が年齢上昇と共にどんどん進んでいくことになる。

 これまでのところ、65歳までは定年まで勤めていた雇用者での継続雇用(ただし非正規労働者となる場合が多い)となり、仕事の内容含め全く新しい業務に従事する可能性は相対的に低いと思われる。むしろ今までと同じ仕事をしていて、給料だけが下がった、という人も存在する。それでも少なくとも5年間は雇用が維持される可能性が高く、非正規であっても雇用が維持されるケースが多い。

 今後70歳までの雇用維持が社会的課題となっていくが、年金受給額との関係で、働きたいという意欲は強くなっていくと考えられる。既に65歳まで仕事を続ける人が主流になりつつある中、今後は70歳まで働きたいと考える人が増えていくのは間違いない。

 

65歳以上の働き場所と働き方

 一般的に言って70歳代前半までの高齢者は元気な人が多く、とても活発でもある。アクティブシニアという言葉があり、概ね65〜75歳程度の人たちを指している。介護が必要になるのは、多くの人が75歳以上であり、女性の場合はさらに80歳以降の話である。

 そういう意味で、65歳以上であっても働くことについての身体的問題は、全体としては小さいと見られる(もちろん個人差はある)。問題は、65歳以上の仕事内容と働き方である。

 

 60歳定年を迎え、再雇用となった人の多くは、1年単位の契約職員となっている場合が多い。この人が65歳となると多くの場合は、それまでの契約と異なる雇用形態になることが増えていくことが見込まれる。これは同じ契約で6年になると、事実上期限の定めのない雇用契約となってしまうことが背景にある。まだ70歳までの継続雇用の仕組みを整備していない事業者も多いが、70歳までの雇用契約は、それまでよりも賃金水準が下がっていくことも増えると考えられる。年金受給との関係では、年金受給と合わせて月額47万円以下であれば、年金受給が減額されることはない。

 それまでの仕事を離れて、自分で仕事を探す場合はやや難易度が高くなる。それは従事できる職種が限定されていると言うことである。残念ながら、一般的な事務職の募集は少なく、特定のスキルがないと、清掃・警備・福祉・運輸・建設・サービスなど一定の職種に限定されがちになってくる。これらの職種は、総じて労働集約型の業務で収入レベルも高くない傾向にある。今後65歳以上で働く人が増えていく中で、従事できる仕事の幅を広げて、様々なジャンルで活躍できる様にしていくことが社会的にも求められている。

 

 もう一つは働き方の問題である。元気とは言え65歳を過ぎると、若い頃の様な働き方はだんだん出来なくなってくる。要は、無理が効かなくなってくるのである。フルタイムで週40時間働き続けることはできるものの、少し体を休めながら仕事をしたいと考える人は、事実多い。それまで仕事人間だった人も、趣味に時間を割くなど、精神的にゆとりの得られる仕事の仕方を望んでいる人は統計上でも多くなっている。

 これも働き方改革で、自分のライフプランに合わせて、自由に働き方を選択できる様になっていくことが望ましい。

 

 



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