さくらの丘

福祉に強い FP(ファイナンシャルプランナー)がつづるノートです。

シニアの心配事と日常生活で知りたい情報

2022年09月22日 | ライフプラン

シニアの心配事と日常生活で知りたい情報

 

 シニアの日常生活や社会活動の参加に関する総合的な調査は、日本では多くない。このほど、7年ぶりに実施された「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」(内閣府)の結果が発表された。前回が2014年実施であり、今回2021年の結果となり、コロナ禍影響を含め、シニアの日常生活はどのようになったであろうか。この場合の「シニア」とは注記しない限り60歳以上の男女を指す。

 

 シニアの心配事

 シニアが抱く、「将来の日常生活全般についての不安」のベスト4は、下記の通りである。

自分や配偶者の健康や病気のこと                  70%

自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること60%

生活のための収入のこと                      32%

子どもや孫などの将来                       30%

この割合と順位は、前回調査でも概ね同様である。

 

 シニアの心配事の特徴

 自分や配偶者の健康や病気、介護についての不安は、特に現に配偶者・パートナーのいる人で際立って高い不安となっている。一方、未婚・離婚・死別でおひとり様になっている人(多くは女性である)の不安は自らのことだけとなり、不安割合は半減する。全体としてシニアが最も心配しているのは、やはり「健康」である。それも相手があってこそ、その心配が大きくなるのが特色である。

 収入に関わることは、健康に関わることの半分程度の不安である。収入については、年齢が低いほど不安割合が高く、年齢が上がるほど不安割合は下がっていく。例えば男性の場合、60代前半では49%であるが、80歳以上になると19%と半減以下になる。こうした傾向は他の調査でも明らかになっており、60歳台未満ではさらに不安度合いが高くなっていく。このことは、生活のための収入については、実際に年金中軸の収入となる生活に入るまでの間は、不安度が高いものの、実際にこの生活に慣れるにしたがって相応の生活スタイルをそれぞれが実現することを通して、不安度が下がっていくことを示していると考えられる。

 また、家計のゆとりが多少不安・非常に不安とする人の不安度合いは、健康不安度並みに、特に高くなっている。さらに無職者よりも就業している人の不安度が高く、持ち家よりも賃貸住宅に住んでいる人の不安度が高い。つまりシニアでも格差が広がっており、年金受給額や蓄えの少ない人は、収入を得ることを続けない限り生活の不安を解消できない、という層が一定存在するということである。

 子や孫の将来については、特別な差が生まれずにまんべんなく存在する不安となっているが、やはり生活のやりくりに苦慮している人での不安度が高くなっている。

 この他、主に60歳代では相続に関わることや親・兄弟などの世話が心配事の上位になっている。丁度親世代が80~90歳代となる頃で、この年代特有の心配事ではある。

 

 日常生活を行ううえでほしい情報

 さて、シニアは心配事を抱えながら、日常生活ではどのような情報を求めているのであろうか。

シニアが「日常生活を行ううえでもっと欲しい内容」のベスト4は下記の通りである。

  健康づくり             30%

  年金                27%

  医療                23%

  趣味、スポーツ活動、旅行、レジャー   21%

前回調査と比較すると順位は変わらないものの、欲しい割合がいずれも減少している。一方特にないとする回答が大きく増加した。

 

健康づくりの情報は、自分事としての情報であり、様々なセグメントでも違いが生じず、まんべんなく求められている情報である。その意味で60歳代でも80歳代でも求められている情報は「健康づくり」である。長生きの秘訣は、よく食べ、良く動き、良く寝ることであり、十分不十分は別として、健康に関わる情報が常に求められている。一方で既に巷には「健康づくり」に関係する情報が溢れており、情報を受け止める側の情報リテラシーが重要である。情報の見極め方をシニア世代で共有していくことも重要である。

 年金と医療に関する情報は、女性よりも有意に男性が多くの情報を求めている。先の不安度では差がないものの、男性の方が情報を求めていることは、男性の情報リテラシーが低く、やみくもに情報を求めているという懸念がある。また、年代的には60歳代前半に情報を求める割合が高い。この世代は、まだ就業中で年金受給もしていない段階なので、今後への不安を抱えてのことと推測される。

年金については、未婚者と離婚者での情報関心が強く、自らまたは配偶者の親と同居している場合に情報関心が高い。いずれも年金額が十分でない、もしくは親の年金が生活給化しているなどの場合が考えられる。

医療は、概ね65歳以上で多くの人が順次国民健康保険に移行し、75歳以降は後期高齢者医療制度に移行する。制度の枠組みが変わっていくこともあり、男性は75歳以上で情報関心が高くなる。また、未婚者・子どもがいない人での関心が高い。もし医療を必要とするときに、相談や頼る相手のことを考えてのことと推測される。

 最後は、趣味・スポーツ・レジャーである。興味関心で言えば明確に女性よりも男性が多くの関心を持っている。一方年齢的に言えば、男女ともに75歳までは旺盛に情報を求めているが、75歳以降は一気に下がっていく。アクティブシニアという言葉もあるが、一般的に行動的なのは70歳代前半までとなり、75歳以降要介護認定も増加し始め、徐々に活動的でなくなる傾向になる。実際、現在の健康状態が良くない、あまり良くない人は情報を求める割合が大分少ない。

「できるうちに」という言葉もあるが、75歳ぐらいまで精一杯遊ぶことも大切だ。

 

 

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿