静かに密かに変化するけん

　かつて異世界だった南大沢の奥地なんじゃが……。

その近所にまた新しいコンビニができたけん。

大手としては最寄りってコトになるけん。

そもそも、これだけコンビニがないちうのは都内でもなかなかないじゃろう。

イナカじゃといわれればそれまでじゃが、それが魅力でもあるけん。

これでもかなり開発されたちうコトじゃ。

わしが３にんのネコを連れて流れ着いたころは、この辺りはただの野っ原だったけん。



駅前にはちょうどアウトレットができたころでのう、まだシネコンはなかったけん。

森の中にレンガの建物が生えとるような、美しい街だったのじゃ。

この時代はトレンディなんてコトバがあったけん。

まさしく、トレンディの最先端だったワケで、ようドラマのロケも見かけたのじゃ。

それがちょっと歩くとまるで山の中の草原じゃけん……。



いつからなのか、はっきりとは思い出せんのじゃ。

ありきたりの、つまらない街に変わってきたんは。

コンビニもスーパーも増えて、生活はベンリになったけん。

んでも、それで失うたものも多いのう。

じゃが生活の中でソレは徐々に変わっていくからじゃろう。

大きう変化しとるコトになかなか気づかんでいたんじゃな。



近々駅前のアウトレットがなくなる予定らしいけん。

その敷地に、なにか別の施設ができたとして……。

それがいつの間にかあたりまえの景色に溶けこんでいくんじゃろう。

そーして、ムカシのできごとを懐かしむのじゃな。