【今週の注目記事】韓国を上回る人気…中国・金持ちインテリ層の心ワシづかみ、観光大国・ニッポンの実力 2016.4.10 11:00
家族連れで来日し、高額商品を買って帰る中国からの爆買い客。団体旅行が大半だが、最近では個人旅行が頻繁にできるリピーター客の存在感が高まっている。所得が高く、高付加価値商品やサービスを求める「上客」にあたるためだ。爆買いリピーターになり得る「人物像」はどんなものか。旅行大手の調査では、年齢が35歳未満と若く、大学卒以上の高学歴者が浮かぶ。外交問題では摩擦の絶えない日中関係だが、お金持ちインテリ中国人層のハートを日本はがっちりとつかんでいる。訪問先では韓国を上回る人気だ。
日本でも爆買い期待が膨らんだ今年2月の春節(旧正月)。大型連休中にあわせて多くの中国人が海外に飛び出した。
海外旅行をした中国人は600万人で、現地での消費額は約900億元(1兆5500億円)にのぼり、過去最高だったことが、中国の調査会社の分析で分かった。
中国メディアによると、渡航先トップ5の1位は、プーケットなどのリゾート地が人気のタイで、日本は2位にランクイン。3位以下は韓国、台湾、シンガポールの順で、アジアの中では物価の高い日本だが、そのデメリットをものともせず、日本は選ばれている。
かつては、成田空港に降り立ち、バスで富士山などの名所をめぐり、大阪の家電量販店での爆買いで締めくくる弾丸ツアーが象徴した中国人の訪日旅行。しかし今、そんなイメージも大きく変わろうとしている。
日本は昨年1月からビザの発給条件を緩和。一定の経済力(年収50万元程度)を持つ者には、有効期間5年のマルチビザを発給されるようになった。
また3年のマルチビザは、過去3年以内に日本への短期の渡航歴があり、年収が10万元以上ある中国人とその家族。3年以内に渡航経験がなくても、年収が20万元以上あれば申請できる。
つまり中間所得層以上の金持ち中国人リピーターを優遇する措置をとっているわけだ。
こうしたビザ緩和で、日本に来る中国人の人物像はどんなものなのか。
旅行大手のJTBは3月、「1年以内に日本への観光旅行を希望する中国人」を対象にした調査を公表した。
ビザ緩和条件にほぼ当てはまる中国本土に住む年収12万元以上の男女1000人からインターネットを通じて回答を得た。
それによると、1年以内に日本への観光旅行を希望しているのは20~35歳未満の若年層が53%を占め、回答者の過半が年収24万元以上だった。
調査対象者の93・1%に配偶者がおり、最終学歴は総合大学や海外の大学、大学院などを含めて、81・4%が、いわゆる「大卒以上」のインテリ層。職業は中国企業で働くサラリーマンが45・1%、外資系企業が19・2%で64・3%が安定した給与所得を得ていた。
過去3年で行った旅行先(複数回答)は、日本を56・7%があげ、韓国(46・3%)、「アメリカ・カナダ」(26・1%)「オセアニア」(13・3%)を上回る人気。
初めての日本旅行は団体参加が4割以上だったが、直近では24%に低下。個人旅行が6割を占めた。
宿泊先も「農家・宿坊」が2割あったほか、日本旅館は33%、伝統的建造物を生かした宿泊施設も24・5%とあり、一般的なホテルだけでなく、日本の風情を好む傾向が出ていた。
日本に最初に行きたいと思ったきっかけ(複数回答)は「アジアの先進国を見たかった」(37・4%)がトップで、「日本料理を食べてみたかった」(34・8%)、「日本製の商品を買ってみたかった」(30・4%)が続き、リポートでは、「日本の技術や食への関心」が動機になっていると指摘した。
「訪日経験のある家族や友人からの話を聞いて」との回答も30・2%あり、口コミ効果の大きさが伺える。
日中関係をめぐっては、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海外側にある接続水域に中国当局の船舶が頻繁に航行。緊張が緩まない状況にある。
昨年夏に公表された中国と韓国メディアによる共同調査では、「日本に嫌悪感を持っているか?」との質問に「はい」と回答したのは中国人が約56%にのぼる。中国国内では、反日感情がなお強く植え付けられているが、勢いを増す訪日客の増加からは日本好きのホンネが見える?(4月6日掲載)
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