シャープ、1000人削減検討 不振の太陽電池など
- 2016/4/28 2:00
- 日本経済新聞 電子版
シャープは従業員を1000人規模で削減する検討に入った。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業はシャープ買収に際して国内の人員を原則として維持する方針を示していた。ただ足元の業績が想定以上に悪化しており、シャープは一段の固定費圧縮が避けられないとみている。不振の太陽電池事業の従業員らが対象になるもよう。鴻海の傘下入りに先立って合理化を進め、早期の業績回復を目指す。
シャープは液晶事業への投資の失敗で経営危機に陥った2012年に希望退職を実施し、約3000人が退社した。15年にも液晶事業の不振などで経営危機が再燃したため約3200人を追加削減した。今年3月末の段階で連結ベースの国内従業員は4年前に比べて3分の2となる2万人弱まで減り、単体では1万5千人を割り込んでいる。
具体的な削減数や希望退職にするかなど詳細について詰めている。これまでの希望退職では45歳以上など年齢を募集条件にしていたが、不振の事業や工場を中心として従業員を減らす可能性もある。太陽電池や蓄電池などの事業部門が候補に挙がっているとみられる。
鴻海の郭台銘董事長は若手を中心にシャープの雇用を原則として維持する意向を強調していた。ただシャープの16年3月期の連結営業損益は昨年10月時点の100億円の黒字予想から、今年3月末に1700億円の赤字予想に下振れしている。鴻海も短期間でシャープの経営を立て直すためには早期のリストラ実施が避けられないとみているもようだ。
主力の液晶事業は米アップル「iPhone」の減産などで需給が緩み、苦戦が続いている。市況が改善しない限り、鴻海傘下に入っても短期間での大幅な収益改善は難しい。人員削減などによる固定費の圧縮に加え、不採算事業の縮小にも取り組む可能性がある。鴻海の郭董事長は2月、赤字が続くシャープの太陽電池事業を切り離す可能性も示唆している。
シャープと鴻海は4月2日に鴻海が3888億円を出資する内容の買収契約を交わした。既に鴻海は1000億円を保証金として前払いしている。10月5日を払込期限とする出資後には鴻海がグループでシャープの議決権のある株式の66%を握る予定だ。
シャープは数次にわたるリストラでコスト削減を急ぐ半面、自発的にやめる優秀な社員をどうつなぎとめるかという課題が浮上している。液晶部門からも競合企業に技術者が移り始めており、鴻海の傘下に入れば人材流出が止まるのかは読めない。